大倉集古館にて企画展「祈りと救いの美―国宝 普賢菩薩騎象像との出会い」が2026年7月28日から9月27日まで開催されます。
本展では、同館所蔵の作品から仏教美術の流れをたどります。都内では2点しかない国宝の仏像の一つ《普賢菩薩騎象像》も展示され、平安時代後期を代表する繊細優美な姿や、華麗な彩色と緻密な截金を見ることができます。
①普賢菩薩騎象像 大倉集古館 国宝 全体
《普賢菩薩騎象像》平安時代 12世紀  国宝

 1章 経典と仏教伝来
紀元前にインドで誕生した仏教は、地域や時代を超えて広まり、日本へは6世紀半ばに伝来しました。
1章では、日本で仏教を広めた聖徳太子の姿を描く《聖徳太子勝鬘経講讃図》や、中国・南宋時代の《大唐三蔵取経詩話》などを通して、古代仏教の様相をたどります。
②大唐三蔵取経詩話 下巻 重文
《大唐三蔵取経詩話》 3冊 中国・南宋時代  13世紀 重要文化財【頁替え有】 

③聖徳太子勝鬘経講讃図 大倉集古館 重美 
《聖徳太子勝鬘経講讃図》 鎌倉時代 14世紀 重要美術品 

2章 釈迦如来とその弟子
釈迦の生涯は、修行中の「菩薩」と悟りを開いた後の「仏陀(如来)」に分けられます。
時代が下ると信者の間では釈迦以外にも仏が存在する、あるいは未来に現れるという信仰が芽生え、阿弥陀如来など多様な如来や菩薩が考案されました。また、釈迦の没後に仏法を守り、人々を救済するように遺言を託された「十六羅漢」などの弟子たちも、信仰の対象となりました。
④仏涅槃図 重美
《仏涅槃図》 鎌倉時代 14世紀 重要美術品 

⑤十六羅漢像 第12尊者
《十六羅漢像》 16幅の内 第12尊者 鎌倉時代 14世紀 重要美術品【後期展示】 

3章 極楽浄土と地獄
浄土は仏が住む世界をいいます。平安時代以降の日本人にとって、浄土といえば阿弥陀如来の西方極楽浄土でした。
往生の際に阿弥陀如来が飛来する場面を描く来迎図がある一方で、悪行によって死後に厳しい責め苦を受ける地獄の世界も描かれます。これは地獄の恐怖を自覚することで、救いの場である浄土への憧れや希求をいっそう強めるという、対照的な関係にありました。
⑥山越阿弥陀図
《山越阿弥陀図(部分)》 冷泉為恭 文久3年(1863)  重要美術品 

⑦探幽縮図 地獄十王図巻 閻魔王 【後期】
《探幽縮図 地獄十王図巻(部分、閻魔王)》 2巻の内 狩野探幽 江戸時代 17世紀 重要美術品【後期展示】 

4章 法華経信仰と普賢菩薩
文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍として表されることが多い普賢菩薩は、平安時代中後期にかけての『法華経』の隆盛に伴い、単独像としても信仰されるようになります。『法華経』では女性の成仏を説く場面に登場するため、当時の貴族女性に篤く信仰され、優れた仏像や仏画が制作されました。
本章では《普賢菩薩騎象像》を中心に、装飾経の優品の模本などを通じて、法華経信仰の美に迫ります。
①普賢菩薩騎象像 大倉集古館 国宝 全体
《普賢菩薩騎象像》 平安時代 12世紀 国宝 

⑧平家納経 観普賢経(模本) 田中親美
《平家納経 観普賢経(模本)》 
(部分) 33巻の内 田中親美 大正~昭和初期 20世紀 

⑨普賢十羅刹女 
《普賢十羅刹女》 鎌倉時代 14世紀 

5章 密教
密教は4世紀頃からインドの民間で行われていたまじないの作法を仏教に取り入れて成立しました。密教の仏像は明王と称される忿怒の像や、複数の顔や腕を持つ異形像が多いのが特徴です。
5章では、大日如来を頂点とした仏の世界を視覚化した曼荼羅や、その前に方形の護摩壇を置いて修法を行う様子を描く図面など、密教独自の世界に触れることができます。
⑩一字金輪像 大倉集古館 重文 【後期】
《一字金輪像》 鎌倉時代 13世紀 重要文化財【後期展示】 

⑪護摩壇図
《護摩壇図》 鎌倉時代 14世紀 【巻替え有】 

6章 神仏習合
日本に伝わった仏教は、やがて在来の神道と結びつきます。
平安時代後期には、神々は仏や菩薩が人々を救うために姿を変えて現れたとする本地垂迹説が生まれます。これにより、春日大社をはじめとする主な神社の祭神には本地仏が当てられるようになりました。
6章では阿弥陀如来を本地仏とする石清水八幡宮の景観を描いた宮曼荼羅が、修理後初公開されます。
⑫春日鹿曼荼羅 【前期】
《春日鹿曼荼羅図》 室町時代 15世紀【前期展示】 

⑬石清水八幡曼荼羅図 重文 【後期】
《石清水八幡曼荼羅図》 鎌倉時代 13世紀 重要文化財【後期展示】 

人々の切なる「祈り」と「救い」への願いが生み出した、多様で美しい仏教美術の世界。日本の信仰の歴史をたどるひとときを、この夏、大倉集古館で過ごしてみてはいかがでしょうか。

※文中で紹介した作品はすべて大倉集古館蔵

【開催概要】
展覧会名:企画展「祈りと救いの美―国宝 普賢菩薩騎象像との出会い」
会期:2026年7月28日(火)~9月27日(日)
会場:公益財団法人 大倉文化財団 大倉集古館
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌平日)
入館料:一般1,000円、大学生・高校生800円、中学生以下無料
公式ホームページ:https://www.shukokan.org/