2026年10月24日から2027年2月21日まで、東京・上野公園にある国立西洋美術館にて「テート美術館 ターナー展――崇高の絵画、現代美術との対話」が開催されます。

本展は、ロンドンのテート美術館が所蔵する世界最大級のターナー・コレクションから、油彩画や水彩画など80点以上を紹介する大回顧展です。
ターナーの作品をテーマごとに再編し、ゆるやかな時系列で展示するとともに、現代美術を併置することで、彼の問題意識が後世のアーティストたちのものとも共鳴することを浮き彫りにします。

本展は、ロンドンのテート美術館が所蔵する世界最大級のターナー・コレクションから、油彩画や水彩画など80点以上を紹介する大回顧展です。
ターナーの作品をテーマごとに再編し、ゆるやかな時系列で展示するとともに、現代美術を併置することで、彼の問題意識が後世のアーティストたちのものとも共鳴することを浮き彫りにします。

《ターナーの肖像》(J.M.W. ターナーの原画にもとづくウィリアム・ホールの版画) 1859-61年 テート美術館 Photo: Tate
序章 暗い部屋
ターナーは自身の画廊を訪れた客を、まず「暗い部屋」で待たせたといわれています。暗闇によって視覚を研ぎ澄まし、その後に目にする絵画の光をより鋭敏に感じさせようとしたのです。序章ではこのエピソードを追体験するように、暗い空間で月光を描いた作品が紹介されます。
また、日食を記録したスケッチから、彼の自然科学への深い関心にも光をあてます。
あわせて展示される現代作家ケイティ・パターソンのインスタレーションは、人類が記録してきた日食のイメージに光をあてたもので、ターナーの月光への関心と時空を超えて響き合います。
また、日食を記録したスケッチから、彼の自然科学への深い関心にも光をあてます。
あわせて展示される現代作家ケイティ・パターソンのインスタレーションは、人類が記録してきた日食のイメージに光をあてたもので、ターナーの月光への関心と時空を超えて響き合います。

J.M.W. ターナー《月光、ミルバンクでの習作》 1797年展示 テート美術館 Photo: Tate
第1章 はじまりの歩み、英国の風景から
第1章は、英国の多様な風景を歩き、丹念に観察したターナーの初期作品に焦点を当てます。
《カンバーランド、コニストン山脈の朝》などの作品からは、自然の形や色、光と大気を綿密に観察する姿勢と、自然の崇高への関心がすでに表れています。
《カンバーランド、コニストン山脈の朝》などの作品からは、自然の形や色、光と大気を綿密に観察する姿勢と、自然の崇高への関心がすでに表れています。
ターナーにとって戸外でのスケッチは芸術実践の中核であり、徒歩での旅そのものが作品形成に不可欠でした。
自然の中で得た経験を重視する姿勢は、歩行そのものを芸術の一形態とした現代作家リチャード・ロングの実践とも重なります。
本章では、2人がダートムーアを歩くことで生んだ作品を併置します。経験を絵画に変換したターナーと、最小限の介入で提示するロング。アプローチは違うものの、身体的かつ感覚的な関係を重視するという点ではつうじあいます。
本章では、2人がダートムーアを歩くことで生んだ作品を併置します。経験を絵画に変換したターナーと、最小限の介入で提示するロング。アプローチは違うものの、身体的かつ感覚的な関係を重視するという点ではつうじあいます。

J.M.W. ターナー《カンバーランド、コニストン山脈の朝》 1798年展示 テート美術館 Photo: Tate
第2章 山々の内部へ
20代後半で初めて英国を離れ、フランスやスイスを旅したターナーは、アルプスの壮大な山々に魅了され、生涯で6度も同地を訪れました。第2章では、1802年から1840年代にかけてターナーが描いた、アルプスを中心とする国外風景が紹介されます。
初期の重要作《グリゾン州の雪崩》は、人間の姿を描かず雪崩の力動そのものを抽出しており、自然の圧倒的な力を前にしたときの「崇高」を鑑賞者にじかに経験させます。
ターナーによるメール・ド・グラス氷河の素描と並ぶのは、現代作家オラファー・エリアソンが同じ氷河を20年の間隔を空けて撮影した写真シリーズです 。この間、氷河が大きく後退した事実は、自然が人間活動によって変化しうることを示しています。
自然を巨大で制御不能なものと見なしたターナーと、現代の視点から環境の脆さを提示するエリアソンの対話は、産業革命期から人間の活動による世界のありようの変質に敏感であったターナーの先見性を改めて浮き彫りにします。

J.M.W. ターナー《グリゾン州の雪崩》 1810年展示 テート美術館 Photo: Tate
自然を巨大で制御不能なものと見なしたターナーと、現代の視点から環境の脆さを提示するエリアソンの対話は、産業革命期から人間の活動による世界のありようの変質に敏感であったターナーの先見性を改めて浮き彫りにします。

J.M.W. ターナー《グリゾン州の雪崩》 1810年展示 テート美術館 Photo: Tate
第3章 歴史的崇高
当時最も権威あるジャンルだった歴史画において、ターナーは先行する巨匠たちの記憶を継承しつつも、古典的主題を実験的な手法で再解釈し、鑑賞者の感覚により強く訴える作品を生み出しました。
第3章では彼の歴史画の傍らに、現代作家コーネリア・パーカーによる、ターナーの絵画から取り外された裏打ち布やカンヴァスの余白などを用いたインスタレーションが展示されます。
歴史的主題をドラマチックに描いたターナーと、本来捨てられる断片ををあえて作品化したパーカーとの対比は、何が歴史的に価値あるものとして保存されるのかという問いを鑑賞者に投げかけます。

J.M.W. ターナー《バッカスとアリアドネ》 1840年展示 テート美術館 Photo: Tate
歴史的主題をドラマチックに描いたターナーと、本来捨てられる断片ををあえて作品化したパーカーとの対比は、何が歴史的に価値あるものとして保存されるのかという問いを鑑賞者に投げかけます。

J.M.W. ターナー《バッカスとアリアドネ》 1840年展示 テート美術館 Photo: Tate
第4章 崇高の都市、ヴェネツィア
陸と水が交わり、広大な空と壮麗な建築をもつヴェネツィアに魅せられたターナーは、生涯に3度この地を訪れ、多様な視角から変幻する都市の表情を捉えました。
第4章では、現代作家ハワード・ホジキンの版画や、ターナーの影響を受けた日本の近代画家・栗原忠二の作品も登場します。
夏目漱石が小説『坊つちやん』でターナーに言及したエピソードなど、日本におけるターナー受容の歴史も検証します。

J.M.W. ターナー《ヴェネツィア――サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》 1844年展示 テート美術館 Photo: Tate
夏目漱石が小説『坊つちやん』でターナーに言及したエピソードなど、日本におけるターナー受容の歴史も検証します。

J.M.W. ターナー《ヴェネツィア――サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂》 1844年展示 テート美術館 Photo: Tate

J.M.W. ターナー《カナル・グランデ、サン・シメオン・ピッコロ教会、夕暮れ》 1840年 テート美術館 Photo: Tate
第5章 荒れた海
ターナーの画業の半数以上を占める海景画において、海は人間の営みと自然のちからが出会い、しばしば衝突する場として描かれています。第5章では、海の危険と、その圧倒的な力を前にした人間の姿に注目します。
《捕鯨船エレバス号に万歳! もう一頭獲ったぞ!》では、光に満ちた画面の中で海と空の境界が溶け合い、船や人の形が曖昧に描かれています。巨大な鯨は、ターナーが追究した崇高とも関係していたかもしれません 。
また、奴隷貿易を扱ったターナーの絵は、現代のアート・コレクティヴであるオトリス・グループが映像作品《Hydra Decapita(ヒュドラの斬首)》を生む契機ともなりました。
両者の対話は、海に刻まれた可視/不可視の歴史や、権力、移動、人間の搾取をめぐる現代的な問題を問いかけます。
両者の対話は、海に刻まれた可視/不可視の歴史や、権力、移動、人間の搾取をめぐる現代的な問題を問いかけます。
第6章 黙想、海と空を見つめつつ
ターナーは、海の激しさだけでなく、その詩的で見る者を惹きこむような性格も探求しました。雲や波頭などの細部を捉えた多数のスケッチからは、彼が海面や光の移ろいに強い関心を向けていたことがわかります。
《浮標のある海景》では、伝統的な絵画技法から離脱し、限られた色彩と無数の筆触によって画面に不穏なざわめきを与え、鑑賞者を深く没入させます 。
雲がかった空の下に広がる無人の海を、細部まで鮮明に捉えた現代写真家ヴォルフガング・ティルマンスの作品は、海を移ろい変化し続けるものとして捉えるターナーのまなざしと響き合い、グローバルな世界を「つなぐ」と同時に「隔てる」存在である海の意味を再考させます。

J.M.W. ターナー《新月――あるいは「ボートを失った、きみにフープはやらない」》 1840年展示 テート美術館 Photo: Tate

J.M.W. ターナー《新月――あるいは「ボートを失った、きみにフープはやらない」》 1840年展示 テート美術館 Photo: Tate
第7章 根源的崇高―後期ターナーという問題
晩年のターナーは、ほとんど光と大気にのみ焦点を絞った絵画や習作を数多く制作しました。彼は伝統的な絵画の約束事から離れ、色彩と光を一体化させることで、絵画を自由な表現へと解放したともいえます。
本展では最後に、アメリカの抽象表現主義の画家の作品とターナーとの関係を探ります。
美術史家ローゼンブラムは、マーク・ロスコやバーネット・ニューマンらの絵画を「抽象的崇高」という概念とともに論じ、その源にターナーをはじめとするロマン主義の画家たちを位置づけました。
美術史家ローゼンブラムは、マーク・ロスコやバーネット・ニューマンらの絵画を「抽象的崇高」という概念とともに論じ、その源にターナーをはじめとするロマン主義の画家たちを位置づけました。
本展は単なる過去の巨匠の回顧展にとどまりません。ターナーと現代アーティストの作品が並ぶことで、ターナーの先見性や多面的な問題意識という一面が鮮やかに浮かび上がります。
過去と現在がダイナミックに響きあう空間で、風景画の概念を覆した変革者・ターナーの新たな魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
過去と現在がダイナミックに響きあう空間で、風景画の概念を覆した変革者・ターナーの新たな魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
【開催概要】
展覧会名:テート美術館 ターナー展――崇高の絵画、現代美術との対話
会期:2026年10月24日(土)~2027年2月21日(日)
会場:国立西洋美術館
開館時間:9:30-17:30 金曜・土曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日、11月24日、12月28日~2027年1月1日、1月12日(ただし11月23日、2027年1月11日は開館)
観覧料:一般:当日 2,400円 / 前売 2,200円、 大学生:当日 1,500円 / 前売 1,300円、高校生:当日 1,100円 / 前売 900円
公式ホームページ:https://turner2026-27.exhibit.jp/
〈巡回情報〉大阪中之島美術館 2027年3月13日(土)~ 2027年6月27日(日)
公式ホームページ:https://turner2026-27.exhibit.jp/
〈巡回情報〉大阪中之島美術館 2027年3月13日(土)~ 2027年6月27日(日)




