岡山県倉敷市の美観地区にある大原美術館にて、2026年4月25日から6月7日まで特別展「倉敷大原家と中国絵画」が開催されています。

大原美術館は日本初の私立西洋美術館として知られていますが、実は創設者の大原孫三郎は東洋の古美術も深く愛していました。本展は、大原家6代目から8代目までの3世代が収集した中国絵画を中心にひも解く特別な企画です。
国宝2件、重要文化財2件を含む豪華なラインナップに加え、これまで一般に公開される機会が少なかった初公開作品も登場します。元時代の古典から近代のアートまで、日本人が中国絵画へ注いできたまなざしの変化を、一つの家族の歩みとともにたどることができます。

名品からたどる美の歴史
展示のプロローグでは、収集の土台となった古画コレクションの名品が迎えてくれます。室町時代の画僧・雪舟等楊による国宝《山水図》など、国内で大切に受け継がれてきた歴史的な作品は必見です。

続く第1章では、日本に渡来した時期による「古渡」「中渡」「新渡」という分類に沿って作品を展示しています。室町将軍家の旧蔵品「東山御物」として名高い国宝《宮女図》も、5月9日から6月7日までの期間限定で公開されます。
さらに初公開となる清時代の胡鉄梅《謙受堂雅集図》には、大原家での宴席の様子が描かれています。1885年制作の紙本墨画淡彩である本作には、主人の孝四郎や地元の医師たちが登場。開国間もない日本において、大原家が清人画家とどのような交流を持っていたかを活き活きと伝える貴重な資料です。

洋画家・児島虎次郎と中国最後の文人の交流
第2章では、大原孫三郎の支援を受けてヨーロッパで名画を収集した洋画家・児島虎次郎の視点に迫ります。
日中航路が整備された大正時代、虎次郎は4回にわたり中国を旅しました。そこで「中国最後の文人」と称された呉昌碩と交流し、直接多くの作品を買い付けています。
ヨーロッパで油彩を学んだ彼ですが、「ヨーロッパを理解するためには、まず中国を理解し尊重すべきである」と考え、中国芸術の中に西洋と通じる造形的な美しさを見出していました。彼が選び抜いた呉昌碩コレクションから、当時の日中文化交流の熱気が伝わってきます。

科学が解き明した《五牛図巻》の秘密
第3章でひときわ注目したいのは、近年センセーショナルな発見があった《五牛図巻》です。
本作は長らく、北京故宮博物院に収蔵されている唐代の著名な「五牛図」の宋代の模本、あるいは精巧な別本とみなされてきました。ところが2023年の修復時、チタンホワイトという20世紀の顔料が検出されます。さらに絵が描かれた絹本を科学的に分析した結果、近代の生産環境で作られたことが判明しました。
これほど精巧な「古画」を近代に生み出した人物として、近代中国美術界の巨匠であり、希代の贋作者としても知られる 張大千の名が有力視されています。彼は原本や過去の模本を深く研究し、それらを再構成することで、新たな作品としてよみがえらせました。詳細は図録に記載されているので、ぜひあわせてご覧ください。

児島虎次郎記念館で画家の足跡をたどる
本館の特別展にあわせて、別会場の児島虎次郎記念館でもテーマ展示「児島虎次郎と中国」が開催されています。
虎次郎が中国へ赴き、現地の人々や風景を独自の色彩で描いた油彩画や、日本へ持ち帰った関連資料を公開。西洋と東洋の美を橋渡ししようと奮闘した、一人の画家の情熱的な足跡をうかがい知ることができます。

2,500年以上の歴史を持つ中国・蘇州は、「東洋のヴェネツィア」と称される水の都です。運河が網の目のように巡り、白壁と黒瓦の町並みや世界遺産の庭園が広がる風景は、江南地方を代表する美しさとして知られています。虎次郎が描いた蘇州の風景画には、日本の倉敷を思わせる景観も見られ、実際に倉敷で鑑賞すると、館外の町並みとよく似ていることに驚かされます。



2,500年以上の歴史を持つ中国・蘇州は、「東洋のヴェネツィア」と称される水の都です。運河が網の目のように巡り、白壁と黒瓦の町並みや世界遺産の庭園が広がる風景は、江南地方を代表する美しさとして知られています。虎次郎が描いた蘇州の風景画には、日本の倉敷を思わせる景観も見られ、実際に倉敷で鑑賞すると、館外の町並みとよく似ていることに驚かされます。


鮮やかによみがえった奇跡の名画
本館では、約60年ぶりの大規模な修復を終えたエル・グレコ《受胎告知》が、色鮮やかな姿を見せています。スペインのプラド美術館から招かれた専門修復士の手により、長年の汚れが取り除かれ、作者が描いた当初の色彩が復活しました。

工芸・東洋館で民藝の美を楽しむ
工芸・東洋館へ足を運ぶと、濱田庄司やバーナード・リーチ、河井寛次郎といった民藝運動を牽引した作家たちの陶芸作品が待ち受けています。作家ごとに趣向を凝らした展示室で、日常の美に触れてみましょう。
白壁の蔵屋敷が並ぶ美観地区を散策
鑑賞の後は、隣接する「新渓園」でのひと休みがおすすめです。明治26年に大原家の別荘として建てられた和風建築で、現在は庭園が無料開放されています。美しい緑を眺めながら、静かな時間を過ごすのにぴったりの場所です。※建物内は見学できない場合があります。


美術館を出た後は、白壁の蔵屋敷が並ぶ倉敷美観地区をゆっくりと散策してみましょう。
外歩きが楽しい季節になりました。珠玉のアートを堪能した後は、倉敷川沿いの情緒豊かな風景を楽しみながら、美の世界の余韻に浸る。そんな贅沢な一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。

【開催概要】
展覧会名:特別展「倉敷大原家と中国絵画」
会期:2026年4月25日(土)~6月7日(日)
会場:大原美術館 本館 5~7室(児島虎次郎記念館にて関連展示あり)
開館時間:9:00~17:00(児島虎次郎記念館は16:00まで)※最終入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日
入館料:一般 2,000円、高校・中学・小学生 500円(本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館共通)
公式ホームページ:https://www.ohara.or.jp

