お寺や神社の奥深くで静かに鎮座するだけでなく、私たちの暮らしの中に溶け込み、様々な願いに応えてきた神や仏。そんな身近な存在の姿を描いた「道釈人物画(どうしゃくじんぶつが)」の世界を紹介する企画展「人々を援たすけ寄り添う神と仏-道釈人物画の世界-」が、2026年1月18日(日)まで大倉集古館にて開催されています。
福を呼ぶ、おなじみの神様たち
展覧会は、4つの章で構成されています。最初の「第1章 七福神」では、私たちにとって最も身近な福の神たちが登場します。
七福神は、室町時代の京都で、町衆の文化の中から生まれたとされています。恵比寿や大黒天をはじめ、宝船に乗ったその姿は今なお多くの人に親しまれています。本章では、こうした七福神に加え、中国由来で幸福・財産・長寿を象徴する三星も取り上げ、人々が日々の暮らしの中で願った「福」の形を探ります。

毘沙門天や弁財天のルーツの展示も
狩野常信の《寿老人・鶴図》で描かれる寿老人は、実は南の空に輝く星カノープスの化身。見ることができれば幸運が訪れるとされた星の神が、長寿の象徴である鹿や鶴を従え、威厳ある姿で現れます。

一方、重要文化財である尾形光琳・乾山兄弟の合作《銹絵寿老図六角皿》は、歪みを加えた六角皿に洒脱な筆致で寿老人が描かれ、琳派らしい洗練された意匠感覚が光ります。

また、鮮やかな色彩の明治時代の正月用引札(広告チラシ)である《恵比寿大黒と美人図》などからは、商売繁盛を願う人々の熱気が伝わってくるようです。

一方、重要文化財である尾形光琳・乾山兄弟の合作《銹絵寿老図六角皿》は、歪みを加えた六角皿に洒脱な筆致で寿老人が描かれ、琳派らしい洗練された意匠感覚が光ります。

また、鮮やかな色彩の明治時代の正月用引札(広告チラシ)である《恵比寿大黒と美人図》などからは、商売繁盛を願う人々の熱気が伝わってくるようです。
頼もしき江戸のヒーローたち
続く「第2章 江戸のヒーロー」で紹介されるのは、特に男子の健やかな成長を願う象徴として飾られてきた、関羽と鍾馗です。
関羽は、中国の小説『三国志演義』を通じて日本でも広く知られる武将。その武勇や義理を重んじる姿は、中国では儒教の祖である孔子と肩を並べる地位にまで高められるほど、深く尊ばれました。
一方、鍾馗は、悪夢にうなされる唐の皇帝を救ったという伝説で名高い魔除けの神です。
彼らはまさに、人々の生活に寄り添い、守り導いてくれるヒーローだったのです。
一方、鍾馗は、悪夢にうなされる唐の皇帝を救ったという伝説で名高い魔除けの神です。
彼らはまさに、人々の生活に寄り添い、守り導いてくれるヒーローだったのです。
円山応挙筆の重要美術品《関羽図》は、神々しいまでの迫力に満ちており、ひときわ目を引くその大きさもさることながら、江戸時代の貴重な紙幟です。

禅画の名手、白隠慧鶴や仙厓義梵が描いた《鐘馗図》は、ユーモラスで親しみやすく、禅の教えを伝える軽妙洒脱な表現に引き込まれます。

武将と鬼神、出自の異なる二人が、なぜ江戸のヒーローとなったのか。その背景にも思いを馳せながら鑑賞してみましょう。
もっと身近に!神仏たちのイメージの変化
「第3章 仏教の神と仏」では、神仏のイメージが時代と共に変化していく様子をたどります。この時代、遠い存在だった神仏が、人間味あふれる表情で描かれるようになります。
かつては荘厳な姿で描かれた普賢菩薩や文殊菩薩も、江戸時代以降になると、若者や遊女の姿を借りて表現されるようになりました。また、かつては威厳ある存在であった、達磨や伝説の禅僧である布袋、インド僧の羅漢といった人物たちも、どこか人間味あふれる親しみやすい姿で描かれるようになります。
彼らが、遠い浄土にいる神々しい存在ではなく、私たちの生活にとけこみ、寄り添いながら、人々を援ける存在でもあったことが、数々の作品から生き生きと伝わってきます。
彼らが、遠い浄土にいる神々しい存在ではなく、私たちの生活にとけこみ、寄り添いながら、人々を援ける存在でもあったことが、数々の作品から生き生きと伝わってきます。
狩野探幽による《観音菩薩図》では、観音菩薩が波打つ岩場でくつろぐ姿が印象的です。
英一蝶の《寒山拾得図》は、悟りを開いた風狂の僧、寒山と拾得を無邪気な子供のように描いています。
さらに、李龍眠様(りりゅうみんよう・中国宋代の画家李公麟による仏画の様式)の図像をもとにした《阿羅漢像》は、まるで絵画から抜け出してきたかのようなリアルな存在感に圧倒されます。
屋根の上で、今も見守る魔除けの鍾馗さん
最後の「第4章 洛中洛外の瓦鍾馗」では、写真家の服部正実氏が撮りためた「瓦鍾馗」の写真が展示されています。
京都では、魔除けとして鍾馗像を家の小屋根に飾る風習があります。その由来は、江戸時代の書物『街談文々集要』に記された逸話にさかのぼります。鬼瓦の祟りで病に倒れた人が、鬼より強い鍾馗を屋根に据えたところ、病が癒えたというのです。
力強くもどこか愛嬌のある表情の瓦鍾馗からは、神仏を頼り、共に生きようとした人々の切なる願いが伝わってきます。


本展は、私たち人間のそばに寄り添い、災厄を払い、願いを叶え、時に生きる姿勢を示してきた神や仏の存在を、身近に感じられる貴重な機会です。
新年は、美術館で、今だけの特別な初詣を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【開催概要】
展覧会名:人々を援け寄り添う神と仏-道釈人物画の世界-
会期:2025年11月22日(土)~2026年1月18日(日)
[前期:11月22日~12月21日/後期:12月23日~1月18日]
会場:大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜(1月12日は開館)、1月13日
入館料:一般1,000円、大学生・高校生800円、中学生以下無料(各種割引あり)
公式ホームページ:https://www.shukokan.org/





