奈良国立博物館にて、令和8年(2026)2月7日から3月15日まで、特別陳列「お水取り」が開催されます。
東大寺二月堂の「お水取り」は、正しくは「修二会」といいます。これは二月堂の本尊である十一面観音菩薩に対して過去の過ちを懺悔し、国家の安泰や五穀豊穣などを祈る法要です。
天平勝宝4年(752)に始まって以来、一度も絶えることなく「不退の行法」として1250年以上も続いています。
本展は、この行法が行われる期間に合わせて開催され、関連する彫刻や絵画、歴史資料などを通じて、その歴史と魅力を紹介します。

観音の霊験と神秘的な伝承
二月堂の本尊は絶対秘仏ですが、絵画などを通してその姿をうかがうことができます。
その一つである重要文化財《十一面観音像》は、雲に乗り、海上を飛来する十一面観音を描いた画像です。後方には観音の浄土である補陀落山が描かれ、観音の衣の緻密な文様や、繊細な截金による描写が見どころです。
①十一面観音像
重要文化財《十一面観音像》鎌倉時代(13世紀) 奈良・東大寺

《二月堂縁起》は、修二会の創始や二月堂観音の霊験にかかわる説話を集めた絵巻です。
②二月堂縁起上巻第二段
《二月堂縁起室町時代 天文14年(1545) 奈良・東大寺

儀式を支える道具
「お水取り」という呼び名は、3月12日の深夜に行われる水取りの儀式に由来します。水は仏教で仏を供養するうえで重要視され、この儀式もまた、その供養の有様を今に伝えるものです。
重要文化財《香水杓》は、二月堂の本尊に香水を供えたのち、堂内の参詣者へ分け与えるために用いられました。
③香水杓
重要文化財《香水杓》上:鎌倉時代 建長5年(1253)下:鎌倉時代 建長7年(1255) 奈良・東大寺

炎をくぐり抜けた経典の輝き
長い歴史の中には、困難な時期もありました。《華厳経(二月堂焼経)》は江戸時代に二月堂が全焼した際、焼け跡から発見された経典です。一部は焼け焦げていますが、紺色の料紙に浮かび上がる銀色の文字は独特の美しさを醸し出しています。
④華厳経
《華厳経(二月堂焼経)》奈良時代(8世紀) 奈良国立博物館

考古学から見た二月堂
現在の二月堂や法華堂(三月堂)が建つ上院地区は、東大寺創建以前に遡る堂宇があったと伝わる場所です。
二月堂の前身建物は謎ですが、西側下段の仏餉屋地下からは、奈良時代の掘立柱建物跡が確認されています。
この鬼瓦は、平城宮の瓦とは異なり、東大寺の建設を機に寺院用にデザインされたものです。鬼瓦のなかでも大型で、その規模に見合った建物に葺かれていたと考えられます。
⑤鬼瓦
《鬼面文鬼瓦》奈良時代(8世紀) 奈良・東大寺

練行衆の厳しい生活と祈り
会場では、行法中の作法や生活の様子も紹介されます。独特の節回しで唱えられる声明や、疫病除けの護符である牛玉札、さらに行法に参加する練行衆が寝起きする参籠宿所や食事の作法など、行法を支える厳しい日常を垣間見ることができます。

学僧たちの修学の場としての修二会
本展の会期中、東大寺ミュージアムでは特集展示「学僧たちの修二会」が開催されます。
修二会は五体投地などの実践的な行が注目されがちですが、経典の内容を確認し合う講問論義なども含まれ、法要の成就には僧侶の学識的な裏付けも必要でした。ここでは、普段はあまり注目されない“学僧たちの修学の場”として修二会が紹介されます。
両会場を巡ると、特製の散華がプレゼントされます。《華厳経(二月堂焼経)》をあしらった新作と、二月堂の本尊である観音菩薩の光背をモチーフにした2種類が用意されています。

修二会の悠久の歴史と、行法を支えてきた人々の想いに触れられる貴重な機会です。春の訪れを感じる奈良で、祈りの世界に浸るひとときを過ごしてみてはどうでしょうか。

【開催概要】
展覧会名:特別陳列「お水取り」
会期:令和8年(2026)2月7日(土)~3月15日(日)
会場:奈良国立博物館 西新館
開館時間:午前9時30分~午後5時
※なら瑠璃絵期間(2月8日~14日)・東大寺二月堂お水取り期間(3月1日~14日)中は午後6時まで。
※3月12日(籠松明の日)は午後7時まで。
※入館は閉館の30分前まで。
休館日:2月16日(月)・24日(火)
※2月9日・23日、3月2日・9日の月曜日は開館。
観覧料金:一般 700円、大学生 350円
※高校生以下および18歳未満、70歳以上などは無料(要証明書)。
奈良国立博物館ウェブサイト 特別陳列「お水取り」URL :https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/202602_omizutori/