大分県立美術館(OPAM)開館10周年を記念する「きらめく日本美術 1300年の至宝展」が、2026年1月14日まで開催中です(会期中一部作品の展示替えあり)。
本展は、宇佐神宮の八幡神御鎮座1300年という節目に合わせて企画されたものです。
宇佐神宮の神仏習合から大友氏の栄華、江戸時代の豊後南画、浮世絵に至るまで、大分が育んできた1300年の美の系譜を、国宝1件、重要文化財26件を含む約190件の名宝でたどります。
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第1章「八幡信仰の至宝」
第1章では、全国4万社ある八幡宮の総本社・宇佐神宮に端を発する、神と仏が融合した祈りの造形が並びます。
展示の冒頭を飾るのは、奈多宮に御鎮座されている重要文化財《木造僧形八幡神坐像》と2躯の女神像です。
平安時代後期、12世紀に制作された八幡神坐像は、剃髪し袈裟をまとった僧侶の姿をしており、日本古来の神が仏教に帰依するという神仏習合の思想を示しています。
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(左)【重要文化財】《木造僧形八幡神坐像》 平安時代後期 12世紀 奈多宮

神仏習合の歴史は絵画にも表れています。
重要文化財《法華経絵(旧宇佐神宮神輿障子絵)徳治本》は、宇佐神宮で行われた放生会に使用された神輿の内側の障子絵です。神様が乗る御輿は、八幡神が奈良の大仏造営を助けるため、宇佐から都へ上った際に初めて用いられとされています。
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【重要文化財】《法華経絵(旧宇佐神宮神輿障子絵)徳治本》 鎌倉時代 徳治2年(1307) 大分県立歴史博物館 左右隻入れ替え

最古の八幡縁起絵巻や、八幡神の由来と霊験を説いた《八幡宇佐宮御託宣集》などが並び、八幡信仰の広がりを比較しながら鑑賞できるのも、本展の見どころです。
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土佐光茂《由原八幡宮縁起絵巻》 室町時代 16世紀 大分市・柞原八幡宮 随時場面替え

武家の信仰を物語る刀剣も展示されています。
豊後国守護・大友氏が柞原八幡宮に奉納した重要文化財《太刀 銘 国宗》は、備前国長船派の分派・直宗派を代表する刀工の作。
一方、重要文化財《太刀 銘 源国□》は、大友氏3代・頼泰が元寇の時代に奉納したものです。相模から豊後へ下向した頼泰は、元寇を防いだ活躍によって九州の有力守護大名としての地位を確立しました。
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(左から)【重要文化財】《太刀 銘 源国□》、【重要文化財】《太刀 銘 国宗》 いずれも鎌倉時代 13世紀 柞原八幡宮

第2章「守護大名大友氏の台頭と禅宗文化」
第2章では、九州で勢力を確立した大友氏が、中央の禅宗文化を積極的に取り入れていく過程が紹介されます。
大友氏は鎌倉・室町両幕府から厚い信頼を得て支配力を高め、なかでも足利尊氏とは、政権確立を支えた功績から深い関係を築きました。
安国寺に伝わる重要文化財《足利尊氏坐像》は、尊氏の存命期に近い頃に制作されたと考えられ、生前の姿を伝える貴重な作例といえます。
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(右)【重要文化財】《足利尊氏坐像》 南北朝~室町時代 14世紀 国東市・安国寺

大友氏は中国(元・明)との交流にも熱心で、多くの禅僧を招聘しました。国宝《無隠元晦法語》(東京国立博物館、前期)は、大友貞宗が派遣した留学僧・無隠元晦に、元の著名な文人・馮子振が書き与えた書です。大友氏が財力を投じて僧侶を留学させ、最新の文化を取り入れようとした熱意を伝えています。

《厩図屏風》は、中央の絵師による制作と考えられ、大友氏が築いた広範な文化的ネットワークを示す作品です。馬屋には畳が敷かれ、そこが単なる飼育の場ではなく、武士たちが馬を眺めながら交流するサロンのような場所であったことがうかがえます。
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《厩図屏風》 室町時代後期~江戸時代初期 大分市・円寿寺 前期展示

水墨画の巨匠・雪舟は大友氏の庇護のもと、府内に「天開図画楼」というアトリエを構えていました。
本展では、雪舟が弟子に与えた絵手本である重要文化財《山水図巻》や、雪舟の絵を狩野派が模写した《鎮田瀑図》(江戸時代 17世紀、京都国立博物館、前期展示)が展示されています。
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【重要文化財】雪舟等楊《山水図巻》 室町時代 文明6年(1474年) 山口県立美術館 随時場面替え

江戸時代に入ると、大分は白隠禅の九州における拠点となりました。萬壽寺の《達磨像》は、高さ3メートルにも及ぶ巨大な掛軸で、豪快な筆致で描かれた達磨が圧倒的な存在感を放っています。ユーモラスな禅画で知られる仙厓義梵の作品も紹介されています。
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右)白隠慧鶴《達磨像》 江戸時代 18世紀 大分市・萬壽寺 前期展示

そして特筆すべきは彼らよりも1世代前に活躍した、臼杵の禅僧・賢巌禅悦の存在です。優美で優しい顔立ちの《白衣観音図》は、この地で独自の禅画の世界が花開いていたことを教えてくれます。
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賢巌禅悦《白衣観音図》 江戸時代 17世紀 臼杵市・見星寺 

第3章「大友宗麟の栄華」
第3章は、キリシタン大名として知られる大友宗麟の時代に焦点を当てます。
僧形の重要文化財《大友宗麟像》が見守る空間には、足利義昭の御内書や織田信長の書状、そして日本の位置に「BVNGO(豊後)」と記された16世紀のアジアの地図などが並び、宗麟が中央政権や海外と深く結びついていたことが示されます。
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第3章「大友宗麟の栄華」展示風景

本展の最大のハイライトといえるのが、宗麟が所持した茶道具の再会です。
宗麟は千利休から「なかなかの数寄者」と評されるほど茶の湯に傾倒していましたが、現存する宗麟所持の茶道具はわずか3点のみ。本展では、そのすべてが一堂に会する史上初の展示が実現しました。

重要美術品《唐物肩衝茶  銘 新田肩衝》(徳川ミュージアム)、大名物《唐物瓢箪茶入 銘 上杉瓢箪》、そして重要文化財《山市晴嵐図》(出光美術館、展示期間11/22~12/7)は、どれも将軍家や名だたる武将の手を経て今に伝来した宝物ばかりです。
3つの名品が揃うのは、12月7日まで。この機会に宗麟が愛した奥深い茶道具の魅力をじっくりと味わってみてください。
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大名物《唐物瓢箪茶入 銘 上杉瓢箪》 中国・南宋時代12~13世紀 野村美術館 通期展示

宗麟は桃山時代を代表する絵師・狩野永徳に臼杵城の襖絵を描かせた記録が残っています。これは帝王の鑑となるべき行いを描いた「帝鑑図」という画題で、伝狩野永徳《帝鑑図屏風》(個人蔵 、前期展示)は、臼杵城を飾っていた襖絵の壮麗さを想像させます。
また、武家の儀式を描いた《犬追物図屏風》からは、中央の武家文化を積極的に取り入れようとした大友氏の姿勢がうかがえます。
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《犬追物図屏風》 江戸時代 17世紀 福井県立美術館 前期展示

こうした栄華を支えたのが、南蛮貿易による莫大な富でした。重要文化財《唐船・南蛮船図屏風》に描かれたような国際的な交易が、当時の府内の浜でも行われていたと考えられます。
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【重要文化財】狩野孝信《唐船・南蛮船図屏風》 江戸時代 17世紀 九州国立博物館 前期展示

会場では、ヨーロッパを魅了した輸出漆器や、大友氏遺跡から出土した重要文化財の陶片などが紹介され、国際都市・府内のにぎわいと熱気が伝わってきます。
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《華南三彩貼花文五耳壺》 中国・明時代 16世紀 竹中・勝光寺

第4章「豊後南画と中国絵画」
第4章では、江戸時代に天領として栄え、九州の金融・商業の中心地となった日田に花開いた文化と、豊後南画を大成した田能村竹田の名品が集います。

長崎を通じて中国の文物がもたらされた日田では、独特の文人文化がそ醸成されました。
その源流となったのが、江戸時代の日本の絵師に大きな影響を与えた、中国・清時代の画家・沈南蘋です。長崎の熊斐がその画風を受け継ぎ、さらにその弟子の真村蘆江が、日田の豪商に招かれて南蘋風の画法を豊後に伝えました。
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(左)真村蘆江《黄蜀葵小禽図》 天明7年(1787) 長崎歴史文化博物館 前期展示

こうした土壌の上に、豊後南画を大成した田能村竹田が登場します。本展では、重要文化財《稲川舟遊図》をはじめ、竹田作品として最大級の画面である《高客聼琴屏風》などが展示されています。
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田能村竹田《高客聼琴屏風》 文政5年(1822) 大分県立美術館

竹田の画に日田の儒者・広瀬淡窓が賛を寄せた《山水図》からは、詩書画を愛する文人たちの交流が読み取れます。
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左から)田能村竹田 広瀬淡窓賛《山水図》 文政12年(1829)、田能村竹田《稲川舟遊図》 天保元年(1830)頃 【重要文化財】いずれも大分県立美術館

日田の豪商・千原家がかつて所蔵していた中国絵画も里帰りしています。
《山水図》など、江戸時代の豪商が収集し、南画家たちが受容した様々な中国絵画は、当時の日田における文化レベルの高さを物語っています。
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戴明説《山水図》 中国・清時代 17世紀 静嘉堂文庫美術館 前期展示

小藩が生んだ多様な個性と肉筆浮世絵
第5章では、8つの小藩分立という大分特有の状況から生まれた多様な絵画世界を見ていきます。
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第5章「近世豊前・豊後の藩絵師たち」展示風景より、岡藩の絵師の作品

杵築藩の足立秋英は、文人画に加えて江戸で狩野派や琳派の画風を学び、繊細で装飾性の高い作品を残しています。
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足立秋英《四季花卉図屏風》 幕末-明治初期頃 大分県立美術館

中津藩の大西圭斎は宋紫山や谷文晁に学び、同じく中津の片山九畹は円山応挙に師事するなど、各藩の絵師たちは参勤交代などで江戸や京都へ赴き、多様な画風を持ち帰りました。
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(左から)片山九畹《一品當朝図》 前期展示、大西圭斎《虎図》 いずれも江戸時代後期 19世紀 大分県立美術館

展覧会の最後を締めくくるのは、豊後ゆかりの浮世絵師たちです。歌川派の祖として知られる歌川豊春は、豊後臼杵藩の出身という説が有力です。
臼杵藩主・稲葉家に伝来した《観梅図》は、豊春と豊後を直接的に結びつける貴重な作品です。
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(左から)歌川豊春《観梅図》 前期展示、《朝妻船》 いずれも江戸時代中期 18世紀 大分県立美術館

吉原真龍の《常盤雪行図》は、肉筆美人画を得意とした真龍の晩年の筆致をよく伝える、近年の新出作品です。
会場では、その師・三畠上龍が同じ「常盤御前」を題材にした作品も併せて展示されています。
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(左から)吉原真龍《常盤雪行図》 江戸時代後期 19世紀 個人蔵、三畠上龍《常盤御前》 江戸時代後期 19世紀 京都府蔵(京都文化博物館管理) 前期展示

国宝や重要文化財を含む名品が全国から集う本展は、大分の文化の豊かな広がりと魅力を鮮やかに伝えてくれます。
この機会に、1300年の歴史のなかで、この地がどのように多様な美を受け入れ、独自の文化を育んできたのかを、あらためて振り返ってみてはいかがでしょうか。
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大分県立美術館外観

※文中、展示期間注記の記載のない作品は、全期間展示

【開催概要】
展覧会名:OPAM開館10周年記念 きらめく日本美術 1300年の至宝展
会期:2025年11月22日(土)~2026年1月14日(水)※会期中、一部作品の展示替えあり
前期:11月22日~12月21日 後期:12月23日~1月14日
会場:大分県立美術館(OPAM)
開館時間:10:00~19:00 ※金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:2025年12月22日(月)
観覧料:一般1,400円、大学・高校生1,200円
大分県立美術館公式ホームページ:https://www.opam.jp