大阪市立東洋陶磁美術館にて、2025年12月13日から2026年3月22日まで、特別展「MOCOコレクション オムニバス ―初公開・久々の公開― PART1」が開催されます。
同館は世界屈指の中国・韓国陶磁のコレクションである「安宅コレクション」と韓国陶磁を中心とする李秉昌コレクションを核としつつ、開館以来40年以上にわたり、多くの篤志家から作品の寄贈を受けてきました。
本展では、その中から特徴ある5つのコレクションをオムニバス形式で紹介します。収集家の美意識が宿る名品を一度に見ることができる、またとない機会です。

第1部「明器游境―海野信義コレクション」
第1部では、中国の墓室を飾った漢代から唐代の俑(よう)と明器(めいき)20件が紹介されます。明器とは、墓に副葬するための器物や模型のことです。《緑釉水榭》(後漢時代、大阪市立東洋陶磁美術館(海野信義氏寄贈))は池の中に立つ二階建ての見張り台をかたどった明器で、当時の豪族の邸宅にあった高楼を模しており、富と権力の象徴でした。
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《緑釉水榭》 後漢時代(1-2世紀) 大阪市立東洋陶磁美術館(海野信義氏寄贈)

また、《加彩天王俑》(唐時代、大阪市立東洋陶磁美術館(海野信義氏寄贈))は、甲冑をまとって邪鬼を踏む姿をしています。墓の入口に置かれ、墓を守る役割を担ったとされ、力強いフォルムは、墓の守護者にふさわしい威厳を備えています。
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《加彩天王俑》 唐時代(8世紀) 大阪市立東洋陶磁美術館(海野信義氏寄贈)

第2部「千秋精粋―白檮廬コレクション」
第2部は、卯里欣侍(うさときんじ)氏が収集した中国陶磁の通史的なコレクションから、代表的な37件が並びます。
《緑褐釉貼花連珠文碗》(北斉~隋時代、大阪市立東洋陶磁美術館(卯里欣侍氏寄贈/白檮廬コレクション))は、白い素地に緑と褐色の釉薬が美しく映え、外側には粘土を絞り出して盛り上げた連珠文が立体的に表現されています。
器形や装飾は西アジアのガラス碗を写したものと考えられ、シルクロードを通じた東西交流を物語る貴重な作品です。
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《緑褐釉貼花連珠文碗》 北斉~隋時代(6世紀後半) 大阪市立東洋陶磁美術館(卯里欣侍氏寄贈/白檮廬コレクション) 写真:六田知弘

一方、《木葉天目茶碗》(南宋時代、大阪市立東洋陶磁美術館(卯里欣侍氏寄贈/白檮廬コレクション)) は、実物の木の葉を用いて表された文様と黒釉との対比が際立つ逸品です。中国・吉州窯で焼かれ、日本にもたらされて茶の湯の道具として珍重されました。
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《木葉天目茶碗》 南宋時代(12-13世紀)/吉州窯 大阪市立東洋陶磁美術館(卯里欣侍氏寄贈/白檮廬コレクション)

第3部「尚用成器―入江正信コレクションⅠ」「尚用酒趣―入江正信コレクションⅡ」
第3部では、入江正信氏から寄贈された、酒器を中心に時代や窯を網羅的に収集した中国陶磁コレクションから62件が紹介されます。

《青磁刻花花文盤》(金時代、大阪市立東洋陶磁美術館(入江正信氏寄贈)) は、耀州窯(ようしゅうよう)特有のオリーブグリーンの釉色が特徴です。盤の内側には「片切彫(かたきりぼり)」という技法で二輪の花と枝葉が力強く刻まれ、釉薬がくぼみにたまることで文様に豊かな陰影が生まれています。
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《青磁刻花花文盤》 金時代(12世紀)/耀州窯 大阪市立東洋陶磁美術館(入江正信氏寄贈)

《青白磁輪花杯・托》(北宋時代、大阪市立東洋陶磁美術館(入江正信氏寄贈))は、青みを帯びた白磁「青白磁」の杯と托のセットです。薄づくりで端正な形をした杯と托は、酒器や茶器として用いられたと考えられます。
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《青白磁輪花杯・托》 北宋時代(11-12世紀)/景徳鎮窯 大阪市立東洋陶磁美術館(入江正信氏寄贈)

第4部「以陶即妙―松惠コレクション」
第4部「以陶即妙―松惠(しょうけい)コレクション」は、本展の大きな見どころの一つです。中国・韓国・ベトナム・日本の陶磁器を中心とした茶道具のコレクション31件が紹介されますが、そのほとんどが今回初公開となります 。
《黒織部波文茶碗》は、茶人でもあった武将・古田織部の美意識を反映した、歪みを伴う力強い茶道具です。躍動感のあるデフォルメされた波の文様が印象的です 。
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《黒織部波文茶碗》桃山時代(17世紀)/美濃窯 大阪市立東洋陶磁美術館(松惠コレクション) 写真:加藤成文

《白濁釉輪花口水指》は、京焼の名工・野々村仁清(にんせい)による作品で、洗練された造形が見事です。
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《白濁釉輪花口水指》 江戸時代(17世紀)/野々村仁清(御室窯) 大阪市立東洋陶磁美術館(松惠コレクション) 写真:加藤成文

さらに茶席の掛物として用いられた重要美術品 《石山切(伊勢集)》(天永3年頃、大阪市立東洋陶磁美術館(松惠コレクション))も展示されます。
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重要美術品《石山切(伊勢集)》 天永3年(1112)頃/伝藤原公任 大阪市立東洋陶磁美術館(松惠コレクション) 写真:加藤成文

第5部「慧眼探美―鈴木正男コレクション」
第5部「慧眼探美―鈴木正男コレクション」では、韓国陶磁の魅力を日本に紹介した陶磁研究者・浅川伯教(あさかわのりたか)が旧蔵した韓国陶磁や関連資料22件が紹介されます。
その一つ、《白磁壺》(朝鮮時代、大阪市立東洋陶磁美術館(鈴木正男氏寄贈))は、韓国では「満月壺(タルハンアリ)」とも呼ばれ、ゆがみを伴いながらも均整が取れた造形をしています。
浅川伯教は、この白磁壺に古代ギリシアの大理石彫刻と重なる造形美を感じ取っていたといいます。
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《白磁壺》 朝鮮時代(18世紀前半) 大阪市立東洋陶磁美術館(鈴木正男氏寄贈)

また、《鉄砂龍文壺》(朝鮮時代、大阪市立東洋陶磁美術館(鈴木正男氏寄贈))は、宮中の儀式や宴会で用いられたと考えられる壺。軽快な筆致でおどけたような表情の龍と雲が描かれています。
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《鉄砂龍文壺》 朝鮮時代(17世紀後半) 大阪市立東洋陶磁美術館(鈴木正男氏寄贈)

5つの異なるコレクションを一度に楽しめる本展は、作品そのものの美しさはもちろん、それぞれの収集家が何に魅せられ、何を集めようとしたのか、その「眼」と「情熱」に触れる機会でもあります。
収集家の審美眼によって選び抜かれた名品を通して、東洋陶磁の奥深い魅力を再発見してみてはどうでしょうか。

【開催概要】
[名称]特別展「MOCOコレクション オムニバス ―初公開・久々の公開― PART1」
[会期]2025(令和7)年12月13日(土)~2026(令和8)年3月22日(日)
[会場]大阪市立東洋陶磁美術館
    〒530-0005 大阪市北区中之島1-1-26(大阪市中央公会堂東側)
[休館日]月曜日、2025年12/28(日)~2026年1/5(月)、1/13(火)、2/24(火)
※但し、祝日の1/12(月)、2/23(月)は開館
[開館時間]午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※12/19(金)は〈OSAKA光のルネサンス2025〉にあわせて午後7時まで開館(入館は午後6時30分まで)
[入館料]一般1,600円、高校生・大学生800円
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方(要証明)は無料
※上記の料金で館内の展示すべて鑑賞可
[公式ホームページ]https://www.moco.or.jp/