東京・上野の国立科学博物館で、特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」が開催中です。(2025年11月1日(土)~2026年2月23日(月・祝))。
生命が誕生してから40億年、地球上では幾度も生命の危機が訪れました。その中でも特に規模の大きかった5回の「大量絶滅」事変は、通称「ビッグファイブ」と呼ばれます。
生命が誕生してから40億年、地球上では幾度も生命の危機が訪れました。その中でも特に規模の大きかった5回の「大量絶滅」事変は、通称「ビッグファイブ」と呼ばれます。
プロローグ
会場に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは巨大な球形の映像装置「大絶滅スフィア」です。
40億年にわたる生命の歴史と、地球を揺るがした5回の大量絶滅が、ダイナミックな映像で紹介されます。

「大絶滅スフィア」
40億年にわたる生命の歴史と、地球を揺るがした5回の大量絶滅が、ダイナミックな映像で紹介されます。

「大絶滅スフィア」
地球では、火山の噴火や天体の衝突など、さまざまな要因で環境が激変し、多くの生物が姿を消しました。しかし、その危機を乗り越えたわずかな種が、次の時代の主役となり、新たな生態系を築いていったのです。
「プロローグ」は、そんな絶滅と繁栄の繰り返しが、生命の多様性を育んできたという視点から始まります。
第1章 O-S境界(海の環境の多様化)
最初の大量絶滅「O-S境界」(約4億4400万年前)では、急激な寒冷化が海の生物を襲いました。
この章では、モロッコでの最新の発掘調査の成果が世界で初めて公開されています。フェゾウアタ化石群と呼ばれる貴重な化石の数々は、絶滅前の豊かな海の世界を今に伝えます。
しかし、急激な環境変化によって、彼らをはじめとする海洋生物の多くが絶滅の道をたどりました。
しかし、急激な環境変化によって、彼らをはじめとする海洋生物の多くが絶滅の道をたどりました。
カンブリア紀からオルドビス紀の海の生物の化石
カンブリア紀の王者、アノマロカリスは、最大で2メートルを超える巨体を持つ捕食者でした。

(中央)《アノマロカリス》(レプリカ)カンブリア紀 国立科学博物館
三葉虫は、古生代カンブリア紀に出現し、ペルム紀に絶滅した節足動物の一群です。5回の大量絶滅のうち、古生代に起こった3回すべてで大きな打撃を受けており、大絶滅を語るうえで欠かせない存在です。

絶滅した三葉虫の化石
カンブリア紀の王者、アノマロカリスは、最大で2メートルを超える巨体を持つ捕食者でした。

(中央)《アノマロカリス》(レプリカ)カンブリア紀 国立科学博物館
三葉虫は、古生代カンブリア紀に出現し、ペルム紀に絶滅した節足動物の一群です。5回の大量絶滅のうち、古生代に起こった3回すべてで大きな打撃を受けており、大絶滅を語るうえで欠かせない存在です。

絶滅した三葉虫の化石
この絶滅の後、シルル紀の海ではアクティラムスのような体長2メートルを超える大型の捕食者が新たに繁栄しました。
続く「F-F境界」(約3億7200万年前)は、火山活動による寒冷化が原因とされています。
この絶滅で、海の生態系は激変しました。当時の海で最強の捕食者とされたダンクルオステウスは、強力な顎で他の生物を圧倒しましたが、この時代に姿を消します。
この絶滅で、海の生態系は激変しました。当時の海で最強の捕食者とされたダンクルオステウスは、強力な顎で他の生物を圧倒しましたが、この時代に姿を消します。
《ダンクルオステウス》(レプリカ)デボン紀 国立科学博物館
陸上では植物が大型化しました。日本初公開となる高さ8メートルにもなる最古の高木植物の化石は、地球上に初めて森が誕生したことを示しています。

《ワッティエザ(幹と葉)》(レプリカ)デボン紀 ニューヨーク州立博物館

《ワッティエザ(幹と葉)》(レプリカ)デボン紀 ニューヨーク州立博物館
絶滅後の石炭紀には、高い酸素濃度のもとでアースロプレウラのような巨大な節足動物が森を闊歩しました。
第3章 P-T境界(史上最大の絶滅)
「P-T境界」(約2億5200万年前)は、古生代の終わりを告げる地球史上最大規模の絶滅です。
この絶滅の前、ペルム紀にはコティロリンクスのような単弓類が陸上の大型捕食者として君臨していました。
そして、この危機を乗り越えたわずかな生物から、中生代の世界が再構築されます。
生き残った爬虫類の一部は海へと進出しました。
世界最古級の魚竜ウタツサウルスは、陸から再び海へと生活の場を移した爬虫類の初期の姿を示しており、絶滅後に新たな進化の道筋が生まれたことを物語っています。
生き残った爬虫類の一部は海へと進出しました。
世界最古級の魚竜ウタツサウルスは、陸から再び海へと生活の場を移した爬虫類の初期の姿を示しており、絶滅後に新たな進化の道筋が生まれたことを物語っています。

《ウタツサウルス》(上)全身骨格(レプリカ)、(下)部分骨格(実物) 三畳紀 国立科学博物館
史上最大規模の絶滅は植物にも大きな影響を及ぼしました。ここではその後の森林の回復の過程も見ることができます。
第4章 T-J境界(恐竜の時代への大変革)
4番目の「T-J境界」(約2億年前)は、超大陸パンゲアの分裂と大規模な火山活動が引き金となりました。
それまで陸上を支配していた、大型の爬虫類や両生類が大きな打撃を受け、全長5~6メートルもあったポストスクスも姿を消します。海でもカンブリア紀から三畳紀の海に生息したコノドントが消滅し、サンゴ類も大打撃を受けました。

(左)《ポストスクス(頭骨)》(レプリカ)三畳紀後期 国立科学博物館
この絶滅は、恐竜類が陸上の支配者として躍り出るきっかけとなります。
初期の恐竜は、エオラプトルのようにまだ小型でした。
初期の恐竜は、エオラプトルのようにまだ小型でした。

(中央)《エオラプトル》(レプリカ)三畳紀後期 国立科学博物館
絶滅を乗り越えたジュラ紀には、大型の肉食恐竜が登場します。
会場では、絶滅前の陸上を支配した大型爬虫類レドンダサウルスと、恐竜時代の幕開けを告げる、初期の大型肉食恐竜クリオロフォサウルスが並んで展示されています。
絶滅をきっかけに陸上の頂点が交代した様子を、迫力ある展示で体感できます。
絶滅をきっかけに陸上の頂点が交代した様子を、迫力ある展示で体感できます。

(左から)《レドンダサウルス》(レプリカ)三畳紀 福井県立恐竜博物館、《クリオロフォサウルス》(レプリカ)ジュラ紀 国立科学博物館
第5章「白亜紀末(K-Pg境界)」
最も有名ともいえる「K-Pg境界」(約6600万年前)は、直径10kmの小惑星衝突が引き金となった、インドの火山活動が原因でした。
寒冷化や酸性雨の発生が断続的に100万年も続き、鳥類以外の恐竜やアンモナイトなど中生代型の生物が絶滅しました。
最強の肉食恐竜ティラノサウルスや、角竜の代表格トリケラトプスも、この絶滅から逃れることはできませんでした。
哺乳類は、この白亜紀末の大量絶滅を生き延びました。
本展の大きな見どころのひとつは、アメリカ・デンバー自然科学博物館から来日した、日本初公開の標本です。これにより恐竜絶滅後の世界で哺乳類がどのように多様化し、進化していったのかをたどることができます。マメ科の一種などの化石は、新たな植物相が哺乳類の進化を支えたことを物語っています。
本展の大きな見どころのひとつは、アメリカ・デンバー自然科学博物館から来日した、日本初公開の標本です。これにより恐竜絶滅後の世界で哺乳類がどのように多様化し、進化していったのかをたどることができます。マメ科の一種などの化石は、新たな植物相が哺乳類の進化を支えたことを物語っています。
第6章 新生代に起きた生物の多様化(ビッグファイブ後の世界)
最後の章では、ビッグファイブ後の世界の生物が紹介されます。
この時期、寒冷化などの気候変動に適応しながら、哺乳類が爆発的に進化しました。その一例がウマの進化です。
この時期、寒冷化などの気候変動に適応しながら、哺乳類が爆発的に進化しました。その一例がウマの進化です。
森にすんでいた小さなシフルヒップスから、初期のウマへと続く全身骨格が並び、環境の変化と共に体が大きく、そして四肢が変化していく様子がわかりやすく紹介されています。
さらに、全長約6メートルに達するステラーダイカイギュウの全身実物化石が世界初公開されています。これは北太平洋に生息した大型哺乳類で、展示されている化石は多摩川で発見された世界最古のものです。
エピローグ
現在、人類の活動によって多くの生物種が絶滅の危機に瀕しており、「第6の大量絶滅」とも呼ばれています。過去の大量絶滅の原因と結果を詳しく調べることは、私たちが直面している問題の将来を予測し、対応を考える上で重要な手がかりとなります。
最後の「エピローグ」では、すでに絶滅した動物の剥製が展示され、今何ができるのかを来場者に問いかけます。
最後の「エピローグ」では、すでに絶滅した動物の剥製が展示され、今何ができるのかを来場者に問いかけます。
福山雅治さんと巡る、絶滅と進化の旅
本展では、福山雅治さんがスペシャルナビゲーターを務めています。福山さんは音声ガイドのナビゲーターも担当。収録は5時間以上にも及んだといい、「ラジオドラマのような感覚で楽しんでいただけるのではないか」と福山さん自身が語るように、臨場感あふれるガイドで生命の進化の軌跡を案内してくれます。

記者発表会に登場した福山雅治さん
第2会場では、福山さんがNHK『ホットスポット最後の楽園』の取材で、15年かけて世界各地を巡り撮影した、絶滅の危機にある野生生物の写真が展示されています。
ここでしか手に入らない!魅力あふれる展覧会グッズにも注目
展覧会を楽しんだ後は、特設ショップにも立ち寄ってみましょう。
本展で紹介される古生物たちが、愛らしいぬいぐるみになって復活しました。
本展で紹介される古生物たちが、愛らしいぬいぐるみになって復活しました。
特設ショップ
さらに、大人気キャラクター「すみっコぐらし」とのコラボグッズも登場。
さらに、大人気キャラクター「すみっコぐらし」とのコラボグッズも登場。
古生物の着ぐるみをかぶった「すみっコ」たちのキーホルダーなど、多彩なアイテムが揃っています。
絶滅の危機を乗り越えてきた生命の、圧倒的な力強さが感じられる展覧会です。
過去の出来事を知ることは、今の地球と生命の未来を考えるきっかけにもなります。
より豊かに、多様に進化してきた生命の壮大なドラマを、ぜひ会場で体感してみてください。
【開催概要】
展覧会名:特別展「大絶滅展—生命史のビッグファイブ」
会期:2025年11月1日(土)~2026年2月23日(月・休)
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
開館時間:9時~17時(入場は16時30分まで)
休館日:月曜日、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)~2026年1月1日(木)、1月13日(火)
ただし、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月16日(月)、2月23日(月・祝)は開館
入場料:一般・大学生 2,300円、小・中・高校生 600円














