すみだ北斎美術館にて、特別展「北斎をめぐる美人画の系譜~名手たちとの競演~」が2025年11月24日まで開催されています。
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フォトスポット

北斎といえば《冨嶽三十六景》に代表される風景画の巨匠として知られますが、彼が生きた時代には美人画の名手としても名を馳せていました。

本展は、風景画の巨匠というイメージが強い北斎の、知られざる「美人画の名手」としての一面に光を当てる展覧会です。
初期の楚々とした女性像から、壮年期の肉感的で艶やかな美人像まで、北斎がいかに時代の流行を取り入れ、自身のスタイルを確立していったのかを貴重な名品を通してたどります。
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第1展示室入口

1章「北斎の源流」
北斎が浮世絵師として歩み始めた頃、江戸では鈴木春信による可憐な美人画が大流行していました。その後、礒田湖龍斎の成熟した女性像や、鳥居清長が描く八頭身の健康的な美人が人気を集めるなど、美人画の流行は次々と移り変わります。
こうした時代に北斎が師事したのが、繊細で優美な肉筆美人画で知られる勝川春章でした。
1章では、宮川長春から春章、そして北斎へと続く、「美人画の正統」の流れを貴重な作品群でたどります。
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(左)鳥居清長《隅田川桜の景》寛政(1789-1801)中期 個人 前期展示

重要文化財である宮川長春の《風俗図巻》(東京国立博物館蔵、9/16~10/13)は、精緻な着物の描写に、後の春章へと受け継がれた美意識の源流が感じられる長春の代表作です。
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【重要文化財】宮川長春《風俗図巻》 正徳~享保年間(1711-36)東京国立博物館 展示期間:9/16~10/13

本章では、美術館では初公開となる勝川春章の《散策美人図》(個人蔵、通期展示)や、若き日の北斎が描いた初公開の《初夢美人図》(すみだ北斎美術館蔵、前期展示)など、貴重な名品にも出会えます。
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勝川春章《散策美人図》天明3~7年(1783-87)頃 個人 通期展示

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(左から)葛飾北斎《風流四季の月 はる》天明5(1785)~寛政(1789-1801)初期頃、《初夢美人図》天明4、5年(1784、85)頃 いずれもすみだ北斎美術館 前期展示

2章「美人画の名手へ」
師・春章の没後、勝川派を離れた北斎は俵屋宗理を名乗り、独自の画風を確立していきます。
北斎の柳腰に富士額、うりざね顔の楚々とした雰囲気の女性像は大変な人気を博し、寛政12年(1800)の洒落本『大通契語』では、美人画の名手として取り上げられるほど世に認められていました。
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北斎が手がけた狂歌絵本の展示

当時の江戸では、蔦屋重三郎に見出され、美人大首絵の創始者となった喜多川歌麿や、清麗な美人画で人気を博した鳥文斎栄之など、多くの美人画の名手が活躍していました。

歌麿の美人大首絵の流行を受け、蔦屋重三郎から刊行された北斎唯一の大判錦絵美人大首絵シリーズ《風流無くてなゝくせ ほおずき》(個人蔵、前期展示)も並んでいます。
両者の表現の違いを見比べながら鑑賞できるのは、本章の大きな見どころです。
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喜多川歌麿の作品 いずれも前期展示

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葛飾北斎《風流無くてなゝくせ ほおずき》享和年間(1801-04)  個人 前期展示

そして、この章の目玉は、すみだ北斎美術館の開館展以来の全巻一挙公開となる《隅田川両岸景色図巻》(すみだ北斎美術館蔵、前期展示)です。
100年以上行方不明となっていた時期を経て同館に収蔵されたもので、北斎46歳頃の壮年期の傑作とされています。
全長7メートルを超えるこの絵巻は、北斎の肉筆画としては最長のもの。舟で吉原へ向かう道中から妓楼での遊興まで、まるで絵巻の中を旅するように楽しめます。
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葛飾北斎《隅田川両岸景色図巻》文化2年(1805) すみだ北斎美術館 前期展示

後期には歌麿の《当世踊子揃 石橋》(個人蔵)や北斎の《風流無くてなゝくせ 遠眼鏡》(神戸市立博物館蔵)も登場予定で、引き続き名手たちの華やかな競演が楽しめます。

3章「浮世絵の爛熟とともに」
宗理期を経て、北斎の作風は徐々に漢画的で力強いものへと変化し、壮年期には肉感的で艶やかな美人画を手掛けるようになります。
この時期の北斎の傑作として名高いのが、重要文化財に指定されている《潮干狩図》(大阪市立美術館蔵、前期展示)です 。漢画風の土坡の表現と洋風の遠景の表現を用いた、北斎ならではの魅力的な風景表現の中に、優美な仕草の女性たちがいきいきと描かれています 。
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(右)葛飾北斎《潮干狩図》【重要文化財】 文化(1804-18)中期 絹本著色一幅 大阪市立美術館 前期展示

本作は、「たつ」を題材に描いた8枚揃いの摺物。シリーズが揃った形で残るのは他に例のない稀少な作品です。
金銀摺や空摺を施した豪華な作りで、描かれる 女性は、目がつり上がりやや下唇がつき出している ほか、体格もがっしりしており、 宗理型美人を脱し、 葛飾北斎期の女性像の特徴が見られます。
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葛飾北斎《八はん続 たつかしら》文化5年(1808) すみだ北斎美術館 前期展示

海外からの里帰りした《桜下美人図》(個人蔵、通期展示)は、振袖の娘の初々しさが感じられる、円熟期の確かな画技が光る一枚です。
同時期に制作された《夏粧美人図》(東京藝術大学蔵、前期展示)と比較してみるのも一興です。
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(左から)葛飾北斎《夏粧美人図》文化7、8年(1810、11)頃 東京藝術大学 前期展示、葛飾北斎《桜下美人図》文化7、8年(1810、11)頃 個人 通期展示

本作は、北斎が手がけた錦絵のうち、唯一の五枚続として知られる作品。開店前の妓楼1階を舞台に、客の前とは異なる、遊女たちのくつろいだ姿が描かれています。
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葛飾北斎《吉原妓楼の新年》文化8年(1811)頃 すみだ北斎美術館 前期展示

この章では、北斎と同時代に活躍し、時にライバルとして、時に影響を与え合った絵師たちの美人画も数多く展示されています。
役者の似顔を美人画に投影するスタイルで一世を風靡した歌川豊国、歌麿亡き後の美人画界をリードした菊川英山、そして稀代の売れっ子絵師・歌川国貞や歌川国芳など、まさに百花繚乱です。
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歌川国貞《両国夕すゞみの光景》文政年間(1818-30)頃 個人 前期展示

風景画で北斎と並び称される歌川広重も、キャリアの初期には美人画を多く手がけていました。
月見を楽しむ3人の女性を描いた《江戸名所四季の眺 高輪月の景》は、広重が得意とする叙情豊かな風景描写と、優美な女性の姿が見事に融合した作品です。
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歌川広重《江戸名所四季の眺 高輪月の景》弘化4、嘉永元年(1847、48)個人 前期展示

4章「北斎の系譜に連なる者」
北斎には孫弟子まで含めると約200人もの弟子がいたとされ、その中には美人画を得意とする絵師も多くいました。
近年特に注目を集めるのが、娘の葛飾応為です。北斎が「私の美人画は、阿栄(応為)には及ばない」と語ったと伝えられるほどの腕前でした。
本展では、昭和38年の画集への掲載を最後に、長く所在不明だった応為の幻の名品《蝶々二美人図》(個人蔵、通期展示)が公開されています 。
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(右から)葛飾応為《蝶々二美人図》文化(1804-18)中期頃  個人、葛飾応為『女重宝記』二之巻 弘化4年(1847)  すみだ北斎美術館 いずれも通期展示

ほかにも、北斎門下の双璧と称された蹄斎北馬と、元魚屋という異色の経歴を持つ魚屋北溪など、弟子たちの優品も並びます。
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(左)蹄斎北馬《蛍狩り二美人図》文政年間(1818-30)頃  個人 前期展示

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(右)魚屋北溪《立美人図》文政(1818-30)前期頃 すみだ北斎美術館 通期展示

謎の絵師・天淵道人と個性派の弟子たち
4章では、異彩を放つ絵師たちにも注目です。
その一人が、正体が謎に包まれた美人画の名手・天淵道人です。残された唯一の作例とされる《三美人図》(すみだ北斎美術館蔵、前期展示)は、ボリュームがあり濃密な女性像、シャープな目、大きめの鼻、肉厚の唇といった特徴的な描写から、北斎の文化後期から文政年間の画風を反映していることがわかります。
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天淵道人《三美人図》文化(1804-18)後期~文政年間(1818-30)頃 すみだ北斎美術館 前期展示

また、痩身で目のつり上がった独特の肉筆美人画を多く残した抱亭五清の《衝立美人図》も強烈な個性を放ちます。
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抱亭五清《衝立美人図》文政(1818-30)末~天保(1830-44)前期頃 すみだ北斎美術館

展覧会をさらに楽しむ
関連イベントとして、北斎の《椿と美人》の図様を組み合わせてオリジナルの手拭いを作るワークショップなども予定されています。また、会場内ではQRコードを読み込むとARが楽しめるサービスや、作品の人気投票なども行われており、様々な角度から展覧会を楽しむことができます。
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鑑賞後には、ミュージアムショップへ立ち寄ってみましょう。公式図録は、展示作品すべての美しい図版はもちろん、詳細な作品解説も収録されており、美人画の名品を自宅でもじっくりと楽しむことができます。
また、美人画をモチーフにしたオリジナルのポストカードや、前期展示の《隅田川両岸景色図巻》の縮小絵巻物といった新商品も登場しています。
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師から受け継いだ伝統を踏まえつつ、ライバルたちと競い合い、時代の流行を敏感に捉えて自らの画風を変化させ続けた北斎。本展では、その変遷を選りすぐりの作品からたどることができます。
この秋はすみだ北斎美術館で、江戸の華やかな美人画の世界に浸ってみませんか。

【開催概要】
展覧会名:特別展「北斎をめぐる美人画の系譜~名手たちとの競演~」
会期:2025年9月16日(火)~11月24日(月・振休)/前期:9月16日~10月19日、後期:10月22日~11月24日
会場:すみだ北斎美術館 3階・4階 企画展示室(東京都墨田区)
開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜日(10/13、11/3、11/24は開館)、10/14、11/4
※10/21は展示替えのため特別展は休室
入館(観覧)料:一般1,500円、高校生・大学生1,000円、65歳以上1,000円、中学生500円、障がい者500円、小学生以下無料