江戸時代の大奥に暮らした女性たちのリアルな姿に迫る特別展「江戸☆大奥」が、東京国立博物館 平成館で2025年7月19日(土)から9月21日(日)まで開催されます。
将軍の妻や側室、女中たちが過ごした大奥は、華やかさの裏に厳格な制度としきたりがありました。
本展では、実際に大奥で使われた衣装や道具、歴史資料、大奥の女性たちの生活を描いた錦絵などの貴重な品々を通して、大奥の実像に迫ります。

あこがれの大奥
江戸時代の庶民にとって、大奥はあこがれの場所であり、江戸城の奥深くに隠された世界でした。
第1章では、江戸時代から現代にいたるまで、大奥がどのようにイメージされてきたかを探ります。
江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した絵師・楊洲周延が、大奥の女性たちの生活や行事を懐古的に描いた豪華な錦絵《千代田の大奥》は、本展の大きな見どころです。 知られざる大奥の様子を描いた全40場面が、会期中展示替えを行いながら紹介されます。
02★『千代田の大奥』より「千代田大奥 御花見」
《『千代田の大奥』より「千代田大奥 御花見」》楊洲周延筆 明治27年(1894) 東京国立博物館蔵 通期展示 ※会期中、展示替えがあります。

《奥奉公出世双六》は、大奥での出世を題材にした江戸時代の絵双六です。
07★奥奉公出世双六
《奥奉公出世双六》万亭応賀作、歌川国貞(三代豊国)筆 江戸時代 19世紀 東京都江戸東京博物館蔵 前期展示:7月19日(土)~8月17日(日)

大奥の誕生と構造
第2章では、大奥がどのように成立し、機能していたのかを解き明かします。
将軍の正室である御台所や側室、そこに仕える女中たちの序列が整い、「大奥」と称されるようになったのは、4代将軍・徳川家綱の時代です。しかし、その礎を築いたのは、3代将軍・徳川家光の乳母として強い影響力を持った春日局(斎藤福)でした。

この章では、春日局と家光との関係や、草創期の大奥を支えた天樹院(千姫)の活躍にも光を当て、大奥創設期を支えた女性たちの姿を浮かび上がらせます。

また、大奥で大きな影響力を持った女中たちの生涯にも焦点を当てます。「絵島生島事件」で有名な絵島や、将軍付きの御年寄として政治的にも影響力を持った瀧山などを、ゆかりの品や日記を通して紹介します。

ゆかりの品は語る
第3章では、歴代の御台や側室、姫君の遺品や愛用品を通して、大奥のヒロインたちの実像に迫ります。

3代将軍家光の長女・千代姫が用いた金無垢の硯箱や沈箱は、その格の高さを物語ります。
5代将軍徳川綱吉が側室である瑞春院(お伝の方)に贈ったと伝えられる《刺繍掛袱紗》は、元禄期における最高の刺繍技術を用いて制作されたもの。全31枚が会期中に展示替えをしながら公開されます。
14★刺繡掛袱紗 浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字模様
《重要文化財刺繡掛袱紗 浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字模様》瑞春院(お伝の方)所用 江戸時代 17~18世紀 奈良・興福院(奈良市)蔵 前期展示:7月19日(土)~8月17日(日)

13代将軍家定の正室・天璋院と、14代将軍家茂の正室・静寛院宮の間には確執があったとされますが、幕末から明治維新の動乱の中で、次第に協力し合う関係へと変化していきました。2人の遺品を比べると、武家と公家という文化や生活の違い見られます。
17★小袿 萌黄葵唐草筥牡丹紋二陪織物
《小袿 萌黄葵唐草筥牡丹紋二陪織物》天璋院(篤姫)所用 江戸時代 19世紀 東京・公益財団法人 德川記念財団蔵 9月2日(火)~9月21日(日)

大奥のくらし
第4章「大奥のくらし」では、壮麗な婚礼調度や四季折々の衣装、遊び道具などを通して、大奥の女性たちの日常を紹介します。
将軍の息女や正室たちは、贅を尽くした婚礼調度とともに輿入れしました。
紀州徳川家10代藩主、徳川徳川治宝(はるとみ)の娘、鶴樹院(豊姫)の婚礼調度は、同じ模様の蒔絵を重厚に施した豪勢な一具です。
22★竹菱葵紋散蒔絵婚礼調度
《竹菱葵紋散蒔絵婚礼調度》鶴樹院(豊姫)所用 文化13年(1816) 東京国立博物館蔵 通期展示

大奥の女性たちの装いは、身分や四季の変化に合わせて細かく定められていました。
10代将軍徳川家治の養女として大奥で過ごした、種姫所用の《掻取 紅綸子地流水花折枝模様》は、細やかな刺繍と絞りで、花々や流水模様を表わした華やかな搔取です。 
24★掻取 紅綸子地流水花折枝模様
《搔取 紅綸子地流水花折枝模様》貞恭院(種姫)所用 江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵 通気展示  

今回初めて一挙公開されるのが、大奥で演じられた歌舞伎の衣装です。
江戸時代、歌舞伎は庶民の娯楽として親しまれていましたが、大奥では女性の歌舞伎役者が出入りし、女性たちを楽しませました。
11代将軍家斉の時代に活躍した女性歌舞伎役者・坂東三津江が大奥で演じた際に用いた衣装の数々は、当時の豪華絢爛な舞台の様子を今に伝えます。
26★羽織・着付 萌黄繻子地的矢模様
《羽織・着付 萌黄繻子地的矢模様》坂東三津江所用 高木キヨウ氏寄贈 江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵 通期展示

NHKドラマ10「大奥」の世界も体感
会場には、NHKドラマ10「大奥」で実際に使用された衣装や、ドラマでおなじみの「御鈴廊下」のセットが一部再現され、華やかな大奥の空間を体感できます。ドラマなどで描かれる大奥の世界と、史実との違いを比較できるのは、この展覧会ならではの見どころです。

音声ガイドは、NHKドラマ10「大奥」で徳川吉宗役、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で大奥総取締 高岳役を演じる冨永愛さんがナビゲーターを務めます。

特別展「江戸☆大奥」は、華やかさと厳しさが交錯する大奥の実像を、貴重な資料や美しい衣装を通して体感できる展覧会です。ドラマや小説で描かれるイメージと照らし合わせながら、大奥という特別な空間で生きた女性たちの姿に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

【開催概要】
展覧会名:特別展「江戸☆大奥」
会期:2025年7月19日(土)~9月21日(日) ※会期中、一部作品の展示替えあり
会場:東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
開館時間:9:30~17:00(金・土曜日、7月20日、8月10日、9月14日は20:00まで。入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日、7月22日(火)※ただし7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、9月15日(月・祝)は開館
観覧料:一般2,100円、大学生1,300円、高校生900円(前売・団体割引あり)
公式ホームページ:https://ooku2025.jp