兵庫県立美術館では、20世紀を代表する画家パウル・クレー(1879-1940)の展覧会「パウル・クレー展――創造をめぐる星座」が、2025年5月25日まで開催されています。
4月29日からは、約30点の作品が入れ替わり、後期展示がスタートしました。
本展は、クレーの初期から晩年までの作品を中心に、同時代の芸術家たちとの関わりや、スイスのパウル・クレー・センターとの学術協力による貴重な資料を通して、彼の創造の軌跡をたどります。
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神戸会場風景 ※後期展示

展覧会の概要や見どころはこちらをご覧ください。

初期の探求
展覧会は全6章で構成され、クレーの芸術の変遷を追います。第1章「詩と絵画」では、若いクレーが詩的な感性を絵画でどのように表現しようとしたかを探ります。後期展示では、この章に《若い婦人(光のフォルム)》(1910年、宮城県美術館)が登場します。

続く第2章「色彩の発見」では、1914年のチュニジア旅行をきっかけに、クレーが鮮やかな色彩表現に目覚めていく過程を紹介します。後期展示では、《競馬Ⅰ》(1911年、宮城県美術館)、《無題(反射する窓)》(1915年、宮城県美術館)、《三人のアラビア人》(1915年、宇都宮美術館)が加わり、クレーが色彩の世界を探求し始めた頃のようすをたどることができます。

戦争、そして新たな表現
第3章「破壊と希望」は、第一次世界大戦で友人たちを失ったクレーが、戦争への批判的な眼差しを深め、自身の作品を切断し再構成するといった試みを行った時期に焦点を当てます。

第4章「シュルレアリスム」では、合理性だけでは捉えきれない無意識の世界や夢、偶然性を取り入れた芸術運動との関わりを探ります。後期展示では《舞台稽古》(1925年、宇都宮美術館)が加わります。この時期の作品には、自由な線と形、そして不思議な物語性が感じられ、観る者を幻想的な世界へと誘います。

バウハウスでの活動と晩年のクレー
第5章「バウハウス」では、1921年からクレーが教鞭をとった造形学校バウハウスでの活動を紹介します。ここで彼は色彩や線に関する独自の理論を発展させました。
後期展示の目玉の一つである《橋の傍らの三軒の家》(1922年、宮城県美術館)は、バウハウスで教え始めた翌年の作品です。リズミカルに繰り返される三角屋根とアーチ橋のモチーフは、同僚リオネル・ファイニンガーの影響も感じさせますが、橙、黄、青、灰色を用いた色彩構成には、後のクレーの色彩理論の萌芽が見られます。
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パウル・クレー《橋の傍らの三軒の家》1922年 宮城県美術館 ※4月29日から展示

また、《バウハウス展のための絵葉書「愉快な面」》(1923年、宇都宮美術館)も後期から展示され、バウハウス時代のデザイン的な感覚を伝えます。
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神戸会場風景 ※後期展示

最終章の第6章「新たな始まり」では、ナチスの台頭によりドイツを追われ、故国スイスに戻った晩年の創作活動に光を当てます。
この章では、後期展示から多くの重要作が加わりました。
ヒトラー政権樹立の年に描かれた《腰かける子ども》(1933年、宇都宮美術館)は、一筆書きのような線で描かれた子供の姿と淡い色彩が幸福感を漂わせる一方で、時代状況を反映したはかなさも暗示しています。
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パウル・クレー《腰かける子ども》1933年 宇都宮美術館 ※4月29日から展示

同じく1933年作の《パレッシオ・ヌア》(宮城県美術館)は、古代ローマの女神とラテン語の「新しい」を組み合わせた造語が題名になっています。。強烈な赤と青の対比で彩られたこの作品は、ナチズムから人々を守る「新たな女神」を描いた可能性も考えられます。
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パウル・クレー《パレッシオ・ヌア》1933年 宮城県美術館 ※4月29日から展示

1939年作の《ラトミー》(宮城県美術館)は、シチリアの石切場の風景に着想を得ており、交差しても閉じる面を持たず、自律的かつ能動的な線が特徴です。起伏ある支持体は、薄茶色や薄緑色で彩色されており、長年の風雨で削られた岩肌や、岩場に生える植物を表しているかのようです。
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パウル・クレー《ラトミー》1939年 宮城県美術館 ※4月29日から展示

クレーの魅力再発見!
本展は、パウル・クレーを同時代の芸術家たちとの交流や歴史的文脈の中に位置づけ直すことで、その創造の軌跡を新たな視点からたどります。
後期からは、バウハウス時代の理論的な作品や、時代の危機感と向き合った晩年の作品など、見応えのある作品が新たに加わりました。この機会に、ぜひ線と色彩が織りなすクレーの魅力的な世界に触れてみてください。
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神戸会場風景 ※後期展示

【開催概要】 
展覧会名:パウル・クレー展――創造をめぐる星座 
会期:2025年3月29日(土)~5月25日(日) 
会場:兵庫県立美術館(〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]) 
開館時間:午前10時~午後6時(入場は閉館の30分前まで) 
休館日:月曜日
観覧料:一般2,000円、大学生1,500円、高校生以下無料、70歳以上1,000円、障害者手帳等をお持ちの方(一般)500円、(大学生)350円 
公式ホームページ:https://www.ktv.jp/event/paulklee