2025年4月5日から6月22日まで、あべのハルカス美術館で「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展が開催されます。
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1970年の大阪万博の年に初来日したジャン=ミッシェル・フォロン。今回は30年ぶりとなる大規模な回顧展で、再び大阪万博の年に開催される特別な展覧会です。
雑誌やポスターなどグラフィックアートで知られるフォロンですが、本展ではドローイング、水彩画、版画、オブジェや彫刻、アニメーションまで、マルチアーティストとしてのフォロンの魅力を、約230点の作品で余すところなく紹介します。
02_フォロン、ミラノにて 1968年(撮影:コレット・ポルタル)
フォロン、ミラノにて 1968年(撮影:コレット・ポルタル)

プロローグ:旅のはじまり
プロローグでは、雑誌『ザ・ニューヨーカー』の表紙原画《いつもとちがう》(1976年)をはじめ、日常をユーモラスに切り取った写真やドローイングが並びます。初期から晩年まで作品に登場する謎めいた人物「リトル・ハット・マン」も登場し、旅の道連れとして私たちを空想旅行へと誘います。
01《いつもとちがう(雑誌『ザ・ニューヨーカー』表紙 原画) 1976年
《いつもとちがう(雑誌『ザ・ニューヨーカー』表紙 原画)》1976年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

03《無題》
《無題》フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

04《無題》
《無題》フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

第1章:あっち・こっち・どっち?
フォロンの作品には、しばしば矢印が登場します。それは道しるべのようでありながら、行く先を混乱させるものでもあります。建築を学んでいた学生時代、単調な授業に反発し、画家を志したフォロンにとって、矢印に翻弄される街や人々を描くことは、自立したアーティストとしての決意の表れでした。第1章では、矢印の上を歩く人物を描いた《無題》 (1968年頃)など、方向性や選択について考えさせられる作品が並び、フォロンの社会に対する鋭い視点を感じることができます。
05《無題》 1968年頃
 《無題》1968年頃 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

第2章:なにが聴こえる?
フォロンは「耳を澄ませば、世界が動いている音が聴こえてきます」と語りました。
彼の絵は明るく親しみやすい雰囲気で描かれていますが、中には穏やかでない場面もあります。
第2章では、《煙》(1971年)や《ごちそう》(1983年)など、戦争や環境破壊、人権侵害といった社会問題をテーマにした作品が展示されます。
ここではフォロンが作品を通して伝えようとしたメッセージに、耳を澄ませてみましょう。
06《ごちそう》 1983年
 《ごちそう》1983年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

第3章:なにを話そう?
フォロンは、ポスターや雑誌の表紙を通じて、世界中の人々にメッセージを発信しました。彼のデザインはシンプルでありながら、力強く、時には社会への鋭い批評を含んでいます。人権の尊重を訴えるために制作された《『世界人権宣言』表紙 原画》(1988年)は、フォロン独自のやわらかな色彩とシンプルな形が、普遍的なメッセージを伝えています。また、環境保護団体のために描かれたポスター《グリーンピース 深い深い問題》(1988年)は、見る人に自然の美しさと戦争の危機を同時に感じさせます。
この章では、フォロンが視覚表現を用いて、どのように世界と対話してきたのかを感じることができます。
07《『世界人権宣言』表紙 原画》 1988年
 《『世界人権宣言』表紙原画》1988年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

08《グリーンピース 深い深い問題》 1988年
 《グリーンピース 深い深い問題》1988年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

エピローグ:つぎはどこへ行こう
空想旅行の締めくくりとなるエピローグでは、地平線を越えて飛ぶ鳥や、水平線の彼方へ向かう船など、彼が愛した海や空、地平線をモチーフにした作品が並びます。
《大天使》 (2003年)の空を飛ぶ人物は、フォロン自身の憧れを投影したのかもしれません。
10《大天使》 2003年
《大天使》2003年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

《対話》 (1975年)は、夜明けの太陽に未知の創造者の視線を感じたという、フォロンの体験をもとにした作品です。
09《対話》 1975年
《対話》1975年 フォロン財団蔵 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

世界は毎朝生まれ変わり、旅はどこまでも続いていく。そして、その行き先は、旅人それぞれにゆだねられているのです。

今こそ出会いたいフォロンの世界
フォロンの作品は、軽やかなタッチと柔らかな色彩で観る人を包み込みながらも、その奥には現実世界への鋭い視線と、希望のメッセージが込められています。世界が大きな転換期にある今だからこそ、彼の作品は私たちに深い示唆を与えてくれるでしょう。
想像力をかき立て、新たな視点をもたらしてくれるフォロンの世界。その魅力を、ぜひ会場で体感してみてください。

【開催概要】
展覧会名:空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会期:2025年4月5日(土)~6月22日(日)
会場:あべのハルカス美術館
開館時間:火-金 10:00-20:00/月・土・日・祝 10:00-18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:4月7日(月)、5月12日(月)
観覧料:一般 1,900円(前売・団体 1,700円)、大高生 1,500円(前売・団体 1,300円)、中小生 500円(前売・団体 300円)
※前売券は4月4日(金)まで販売
※団体は15名以上
公式サイト:https://ourfolon.jp/ 
      https://www.ktv.jp/event/folon/