大阪市立美術館(大阪市天王寺区)が約2年5カ月におよぶ大規模改修工事を終え、2025年3月1日にリニューアルオープンしました。これを記念して、リニューアルオープン記念特別展「What's New!  大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」が3月30日まで開催中です。大阪市立美術館の館蔵品から厳選された約250件の作品が、分野ごとにテーマを決めて展示されています。
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この展覧会は「名品」と「珍品」という2つのキーワードがポイントです。名品は「優れたもの」や「貴重で希少なもの」を指し、美術史に名を刻むような作品が並びます。一方、珍品は「珍しいもの」「変わった面白いもの」「貴重で美しいもの」を意味し、意外性やユーモアを感じさせる作品が特徴です。客観的な評価ではなく、あくまで学芸員が独自の視点で選んだものなので、キャプションのラベルを参考に、自分なりの「名品」「珍品」を探しながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。
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第2会場「中国の仏像」展示風景

リニューアルにより、展示ケースや照明も一新され、作品がより見やすくなりました。また、館内は展示室に入る以外はほぼ「無料ゾーン」となっています。近代日本庭園の名園である慶沢園(けいたくえん)に面したカフェやテラスも無料で利用できます。
慶沢園
慶沢園から見た美術館

カフェ
カフェメニューのサンプルより、(左)古今東西おかずのプレート

新エントランスとなる美術館の地下1階にはミュージアムショップもオープン。
1階には「じゃおりうむ」と名付けられたパブリックスペースが設けられ、創建当時の自然光による採光方式(トップサイドライト)が復元されました。ここでは中国の石仏も常設展示されています。
リニューアルの概要と、展覧会の見どころはこちらをご覧ください。


第1会場:日本の美と中国の宝
第1会場の「近世の風俗画」では、当時の景観や世相、人々の暮らしを生き生きと伝える作品に出会えます。
江戸時代17世紀の《洛中洛外図屏風》は、京都の町並みや四季の風景、年中行事を一望できる貴重な作品です。尾形光琳の《円型図案集》は、光琳の独創的なデザインの数々が見どころ。東洲斎写楽の《三代目市川八百蔵の田辺文蔵》は、江戸の人気歌舞伎役者を大胆に描いた作品で、活動期間が1年足らずとされる謎多き浮世絵師の貴重な一枚です。
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第1会場「近世の風俗画」展示風景

「金工品にみる表情」では、中国の青銅器から日本の江戸時代の刀装具まで、多彩な時代と地域の作品が展示されています。神に捧げられた中国の青銅器や仏具は、堂々たる造形美と流麗なデザインが特徴です。一方、動物や人物をかたどった装飾品や器具などの実用品には、ユーモラスな神々や動物が生き生きと表現されています。
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第1会場「金工品にみる表情」展示風景

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第1会場「金工品にみる表情」展示風景、動物や人物をかたどった装飾品や器具などの展示

「知られざる考古コレクション」では、日本の土器や須恵器のほか、中国、朝鮮半島、東南アジア、古代エジプトやローマ時代の遺物まで、幅広いコレクションが展示されています。田万コレクションの《金銅 菩薩立像ほか》は、奈良市藤原町横井廃寺出土の飛鳥から奈良時代にかけての貴重な仏像群です。また、《テラコッタ 豚》は、古代イタリア・エトルリアの作品で、国際色豊かなコレクションの一端をかいま見ることができます。
考古
【重要文化財】《金銅 菩薩立像ほか》奈良市藤原町横井廃寺出土 飛鳥–奈良時代・7–8世紀 田万コレクション

「仏教絵画と経典」では、田万コレクションを中心に、美術館随一の妖しさを誇る《荼吉尼天曼荼羅図》など多彩な仏教絵画と貴重な経典を紹介しています。特に注目すべきは《大般若経(薬師寺経)》《大金色孔雀王咒経(神護寺経)》など、奈良時代から平安時代にかけての経典。紺紙金字で書かれた《法華経》は、美術館自慢の一品で、金銀泥で描かれた華麗な見返し絵は必見です。
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(左から)《法華経》 1巻(8巻のうち) 平安時代・12世紀 田万コレクション、《大金色孔雀王咒経(神護寺経)》平安時代・12世紀 田万コレクション

第2会場:中国美術の粋
大阪市立美術館は、日本屈指の中国仏像コレクションを誇ります。
第2会場の「中国の仏像」では、雲岡石窟や天龍山石窟、龍門石窟といった中国を代表する石窟から将来された仏像が展示されています。《石造 菩薩交脚像龕》は、中国・南北朝時代(北魏)の作品で、優美な姿が印象的です。また、《石造 四面像》は、6世紀中頃の西魏時代の作品で、四面それぞれに異なる場面が彫られた珍しい作品です。
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第2会場「中国の仏像」展示風景より、(手前)《石造 四面像》 中国・南北朝時代(西魏)・6世紀中頃 山口コレクション

「中国の仏像のお顔」では、河南省・龍門石窟将来の菩薩立像頭部や、山西省の雲岡石窟将来の如来像頭部など、中国各地の石窟寺院から集められた仏像の頭部が展示されています。それぞれの時代や地域の特徴を反映した表情豊かな仏像の顔に、古代中国の美意識を感じ取ることができます。
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第2会場「中国の仏像のお顔」展示風景

「祝杯!華やかな酒器たち」では、カザールコレクションを中心に、江戸時代から明治時代にかけての日本の漆工品が展示されています。《魚介蒔絵杯》や《吉祥文蒔絵杯》など、縁起のよい文様や文字が描かれた品々が並びます。《猩々蒔絵杯》で、酒好きの霊獣・猩々が描かれたゆかいな作品です。
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第2会場「祝杯!華やかな酒器たち」展示風景より、(左) 《猩々蒔絵杯》江戸–明治時代・18–19世紀 カザールコレクション

「竣工記念の石刻」では、師古斎コレクションを中心に、中国古代の石碑や石刻が展示されています。《開通褒斜道刻石》は、後漢時代に100kmにも及ぶ険しい道路の開通を記念して崖に刻まれた碑文で、当時の土木技術の高さを物語っています。
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第2会場「祝杯!華やかな酒器たち」展示風景より、(右)《開通褒斜道刻石》中国・後漢時代・永平9年(66) 師古斎コレクション

第3会場:東洋と日本の美の競演
第3会場の「中国書画」では、阿部コレクションを中心に、中国絵画の名品が並んでいます。米友仁の《岫晴雲図》は、南宋時代の山水画の名品で、繊細な墨の表現が見事です。また、藍瑛(款)の《松巌話古図》や謝時臣(款)の《湖堤春暁図》《巫峡雲濤図》など、明清時代の大作も高さ5メートルにもおよぶ新しい展示ケースで鑑賞することができます。
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第3会場「中国書画」展示風景

「おもてなしのうつわ」では、近世の日本陶磁を中心に、宴席や茶会で使われた器を展示しています。柄本暁舟の《磁製魚紋赤絵花瓶》は、美術館最初期からの所蔵品。金魚の躍動感が見事に表現されています。
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《磁製魚紋赤絵花瓶》柄本曉舟 昭和11年(1936)

「近世の動物画」では、多様な表現で描かれた、 さまざまな生きものの姿を楽しむことができます。フクロウとカラスのやり取りをユーモラスに描いた長谷川等伯の《烏梟図屏風》、森狙仙の《猿図》や、眠る猫を細やかに表現した原在正の《猫図》、森川曽文の《蝦蟇仙人図》、岸駒の《牡丹孔雀図》など、それぞれの画家の個性が光る動物画の数々が見どころです。
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第3会場「近世の動物画」展示風景

第4会場:近代日本美術の精華
第4会場の「住友コレクション」では、昭和18年(1943)に開催された「関西邦画展覧会」に出品された作品を中心に、戦時下の日本画壇の重鎮たちの作品が展示されています。上村松園の《晩秋》、矢野橋村の《那智奉拝》、橋本関雪の《讃光》、山口華楊の《風》など、時代を超えて輝く名作の数々を鑑賞することができます。
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《晩秋》 上村松園 昭和18年(1943) 住友コレクション

「富本憲吉と人間国宝 暮らしを彩る近現代のうつわ」では、主に重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝 による作品が展示されています。富本憲吉の《色絵 赤更紗模様皿》や各種の湯呑をはじめ、荒川豊蔵、金重陶陽、北大路魯山人など、日本の近現代陶芸を代表する作家たちの作品を見比べながら鑑賞することができます。
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《湯呑 各種》 富本憲吉 大正–昭和時代・20世紀 辻本コレクション

「大阪の洋画」コーナーでは、大阪にゆかりのある洋画家たちの作品が展示されています。山内愚僊、赤松麟作、佐伯祐三など、大正から昭和初期にかけて活躍した画家たちの作品を通して、大阪の洋画史をたどることができます。
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《教会》佐伯祐三 1面 大正13年(1924)

最後に登場するのは、美術館の広報大使に就任した《青銅鍍金銀 羽人》。中国・後漢時代の作品で、異様な容貌の珍品であり、世界に3点しかない貴重な名品でもあります。
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《青銅鍍金銀 羽人》中国・後漢時代・1–2世紀 山口コレクション

本展は、東洋と日本の美術の精華が一堂に会する、まさに美の饗宴といえる展覧会です。新しくなった展示環境で、これまで以上に作品の魅力を堪能することができます。また全作品が撮影OKというのもうれしいポイントです。
生まれ変わった大阪市立美術館で、あなただけの「名品」「珍品」を見つけてみませんか。

【開催概要】
展覧会名:リニューアルオープン記念特別展「What's New!  大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」
会期:2025年3月1日(土)~3月30日(日)※会期中一部展示替えあり
会場:大阪市立美術館(天王寺公園内)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
入館(観覧)料:一般1,800円/高大生1,200円/中学生以下、障がい者手帳お持ちの方(介護者1名含む)無料
公式ホームページ:https://www.osaka-art-museum.jp/