2025年4月6日まで、東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が開催されています。ブルックリン博物館は、ニューヨーク市にある米国で最大級の美術館の一つで、特に古代エジプトコレクションは世界有数の規模と質を誇ります。今回の展覧会では、そのコレクションから厳選された約150点の貴重な遺物が日本にやってきました。
本展の概要と主な見どころはこちらをご覧ください。
1st Stage:古代エジプト人の暮らし
1st Stage「古代エジプト人の謎を解け!」では、私たちが意外と知らない古代エジプト人の日常生活に焦点が当てられています。住居や食事、仕事、身だしなみなど、現代にも通じる生活の様子がをかいま見ることができます。
当時最も人気の高い職業だった「書記」をモチーフにした《書記と高官を務めた人物のレリーフ》や《貴族の男性のレリーフ》からは、古代エジプト人の服装や髪型がよくわかります。
「1st Stage:古代エジプト人の謎を解け!」展示風景より、東京会場 特別出展《貴族の男性のレリーフ》新王国時代・第1王朝、 前1292~前 1075年頃《女性と供物を描いた墓の壁画》からは、当時の女性の装いや食文化を読み取ることができます。首飾りや腕輪などの装飾品からは、当時のファッションセンスを感じ取ることができるでしょう。また《上流階級の女性の小像》は、当時の女性の姿を知ることができる貴重な像です。

「1st Stage:古代エジプト人の謎を解け!」展示風景
化粧皿や櫛、アイライナーの容器として使われた壺も展示され、古代エジプト人の美への関心の高さがうかがえます。

「1st Stage:古代エジプト人の謎を解け!」展示風景
古代エジプト人の信仰心を表す展示品も見逃せません。ベス神やパタイコス神などの神々は、日常生活を守護する存在として、古代エジプト人に親しまれていました。
《木製のローテーブル》や《椰子のサンダル》など、古代エジプト人の生活の様子が具体的にイメージできるような日用品も展示されています。

「1st Stage:古代エジプト人の謎を解け!」展示風景
2st Stage:ピラミッドの謎に迫る
2st Stage「ファラオの実像を解明せよ」では、先王朝時代からプトレマイオス朝時代までの3000年にわたる王朝の歴史を紹介しています。クフ王やラメセス2世など、12人の王に関連する作品を通じて、ファラオたちの権力と実像に迫ります。
また、3Dスキャン技術やドローンを使った最新の研究成果に基づくピラミッドの建築方法や、大迫力のピラミッド調査映像も紹介され、これまで謎に包まれていたピラミッドの内部構造が、現在どこまで解明されているかを知ることができます。

第2ステージ「ファラオの実像を解明せよ」展示風景
ここでは、さまざまな王の威厳を示す作品が多く展示されています。
これは知られている中で最古のエジプト王の頭部とされる石像です。ピラミッドを作ったクフ王の像ではないかともいわれており、その表情からは、強大な権力を持つ王の威厳が伝わってきます。

(左)《王の頭部》古王国時代・第3王朝後期~第4王朝 初期、 前2650~前2600年頃、(右)本展監修者の河江肖剰氏(かわえゆきのり、エジプト考古学者/名古屋大学 デジタル人文社会科学研究推進センター教授)
古代エジプトの王は神聖な存在で、国の秩序と繁栄を守る多様な役割を担っていました。神々と人々をつなぐ存在であった王は、ナイル川の治水と灌漑管理、外交・軍事活動、宗教的儀式などの役割を通じて、国家の安定と発展を図っていました。
《ひざまずくペピ1世の小像》は、第6王朝の王であるペピ1世の姿を、神の前でひざまずく姿勢で表現しています。

2st Stage「ファラオの実像を解明せよ」展示風景より、(右)《ひざ
ラメセス1世やプトレマイオス2世など、有名なファラオたちの石碑やレリーフなども見どころです。
美しさで有名なネフェレトイティ(ネフェルティティ)王妃のレリーフや神殿の復元模型、古代エジプトの多様な神々の姿を表した像なども展示されており、さまざまな角度から古代エジプトの王族の生活や信仰に触れることができます。

(左から)《王妃の頭部》新王国時代・第 18王朝後期、 アマルナ時代、 前1353~前1336年頃、
《ネフェレトイティ (ネフェルティティ) 王妃のレリーフ》新王国時代・第18王朝、 アマルナ時代、 前1353~前1336年頃
《ネフェレトイティ (ネフェルティティ) 王妃のレリーフ》新王国時代・第18王朝、 アマルナ時代、 前1353~前1336年頃

2st Stage「ファラオの実像を解明せよ」展示風景より、多様な神々の像
Final Stage:死後の世界への旅
Final Stage「死後の世界の門をたたけ!」では、古代エジプト人の死生観に迫ります。人間や動物のミイラ、美しい副葬品、葬儀用の道具、神々の姿を表したレリーフなど、葬送儀礼に関する作品が展示されています。
ここでは古代エジプトの最古の葬送文書『ピラミッド・テキスト』の音声が展示室内に流れています。この音声は、古代エジプト語を再現したもので、来場者は臨場感あふれる空間で古代エジプト世界を体験できます。
ここでは古代エジプトの最古の葬送文書『ピラミッド・テキスト』の音声が展示室内に流れています。この音声は、古代エジプト語を再現したもので、来場者は臨場感あふれる空間で古代エジプト世界を体験できます。

Final Stage「死後の世界の門をたたけ!」展示風景
古代エジプト人は死後の世界で再生し、永遠の命を得られると信じていました。この再生には肉体が必要だと考えられており、ミイラとして肉体を保存することはとても重要でした。
《<家の女主人>ウェレトワハセトの棺と内部のカルトナージュ》では、女性の生前の姿が棺に描かれています。一方、《神官ホル(ホルス)のカルトナージュとミイラ》の棺には、死者の来世での安全と再生を願い、多くの守護神が描かれています。こうした棺の装飾は、古代エジプト人の死生観と来世への希望を反映しています。
古代エジプト人は動物を神聖視しており、多くの動物が死後にミイラ化されていました。特にネコはバステト女神と関連づけられ、深く崇拝されていました。
古代エジプト人は、 死後も現世と同様の生活が続くと信じ、 日常生活で必要とされる品々を副葬品として墓に納めることで、 来世での 豊かな生活を保証しようとしました。《帆船の模型》は、死者が来世で使用すると信じられていた品の一つです。シャブティと呼ばれる副葬品としての小像は、死者の代わりに冥界で労働を行ってくれると考えられていました。動物やきらびやかな装飾品など、多彩な副葬品の数々も見どころです。

Final Stage「死後の世界の門をたたけ!」展示風景より、(左)《帆船の模型》中王国時代、 前2008~前1759年頃またはそれ以降
冥界の神であるオシリス神やイシス神、そしてミイラ作りの過程で取り出された内臓を保管するための「カノプス壺」や死者の魂を守るためのバー(魂)の護符なども展示されています。
古代エジプトを味わう!展覧会を締めくくるコラボカフェ
展覧会を見終わった後は、同じ階にある「THE SUN & THE MOON (Cafe)」で、期間限定の「特別展 古代エジプトカフェ」を楽しむことができます。エジプト料理の代表的なコシャリやターメイヤ、ケバブなどが一度に楽しめるエジプトフードプレートや、エジプトをイメージしたパフェなど、エジプトの食文化を体験できるさまざまなメニューが用意されています。

※写真はイメージです。実際の商品とは異なる場合があります。
※カフェの利用には、「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」、もしくは展望台、森美術館いずれかの入館券が必要です。
※「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」の観覧時間により、コラボカフェ(L.O.フード21:00、ドリンク21:30)の利用が出来ない場合もあります。予めご了承ください。
この展覧会では、日々の暮らしから死後の世界まで、幅広い視点から古代エジプト3000年の歴史に触れることができます。この機会に、ブルックリン博物館の貴重なコレクションを通して、「知っているようで知らない」古代エジプト文明の魅力を体感してみてはどうでしょうか。
【開催概要】
展覧会名:ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト
会期:2025年1月25日(土)~4月6日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:10:00~18:00(金・土・祝前日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
入館料(当日券):
一般・大学生 平日2,500円/土日祝2,600円
高校・中学生 平日1,800円/土日祝1,900円
小学生 平日1,200円/土日祝1,300円
※土・日・祝日は日時指定制。
※障がい者手帳をお持ちの場合でも、ご鑑賞にはチケット購入が必要です。ただし介助者1名は無料。各種手帳のご提示が必要です。
※高校生以下は学生証など年齢がわかるもののご提示が必要です。
※未就学児は無料。
公式ホームページ:https://egypt-brooklyn.exhibit.jp