神奈川県横浜市西区のそごう美術館で、「手塚治虫 ブラック・ジャック展」が2025年2月25日まで開催されています。本展は、1973年から1983年まで『週刊少年チャンピオン』(秋田書店) に連載され、世界的に評価されている名作「ブラック・ジャック」の魅力を余すところなく紹介する、過去最大規模の展覧会です。
ポスタービジュアル

圧巻の原稿の数々!「ブラック・ジャック」の世界に没入
本展の最大の見どころは、なんといっても500点以上もの原稿が展示されていることです。連載当時の『週刊少年チャンピオン』や1970年代に発行された単行本から、200以上のエピソードの直筆原稿が展示され、手塚治虫の筆致を間近で見られる貴重な機会となっています。
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©Tezuka Productions

第1室:個性豊かなキャラクターたちとの出会い
展覧会場に一歩足を踏み入れると、そこには黒ずくめの天才外科医ブラック・ジャックの世界が広がっています。
展示は全4室に分かれており、第1室では「B・J(ブラック・ジャック)とキャストたち」と題して、"18歳で0歳"の女の子ピノコやドクター・キリコなど、作品に登場する個性豊かなキャラクターたちが紹介されています。
1室
©Tezuka Productions

第2室:ブラック・ジャック誕生の秘密に迫る!
第2室「B・J誕生秘話」では、手塚治虫が「ブラック・ジャック」を生み出すまでの背景が紹介されています。
手塚の初期の代表作「新寳島」や「鉄腕アトム」に加え、医大時代の貴重な資料も展示されています。手塚自身が医師免許をもつ医学博士であり、自分がもし医者になるならこんな医者になってみたいという理想の姿を描いたのがこの作品とも言われており、医療と深い関わりを持つ「ブラック・ジャック」の創作の源泉をかいま見ることができます。
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©Tezuka Productions

本展のために新たに収録された証言映像も見逃せません。手塚プロダクションの関係者や、出版に携わった編集者たちが、「ブラック・ジャック」誕生の秘密を明かしています。作品の裏側にある創作秘話を知ることで、より深く作品を楽しむことができるでしょう。
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第3室:ブラック・ジャックの世界観に浸る
第3室「B・J曼荼羅」では、「ブラック・ジャック」の物語全体を通じての主人公の遍歴や、高額請求の謎、動物の命を扱った作品など、主要なテーマごとに作品が展示されています。これほど多くの原稿が一堂に会するのは史上初とのことで、ファンにとっては見逃せない機会となっています。
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©Tezuka Productions

ここでは、「ブラック・ジャック」にまつわる疑問を解決したり、作品の裏設定を発見したりと、様々な視点から作品を楽しむことができます。例えば、ブラック・ジャックが高額な治療費を請求する理由や、彼が患者に求めているものの真意など、作品の深層に迫ることができるでしょう。
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当初、短期連載として企画されたブラック・ジャック」は、予想外の人気を博し、結果的に5年間で230話の連載となります。さらに終了後も13話の読み切り作品が描かれました。ここではその最後となる243話の原画も見ることができます。
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第4室:医療マンガとしての魅力を深掘り
最後の第4室では、「ブラック・ジャック」の「医療マンガ」としての魅力や、現代に通じる社会性が深く掘り下げられています。当時の読者を驚かせた人体の手術シーンを、現代アート的な視点から鑑賞する展示など、多角的なアプローチで作品の魅力に迫ります。

連載当時のニュース映像とともに「ブラック・ジャック」を読み解くコーナーもあります。週刊連載されていた本作品には、昭和時代の事件や流行もストーリーに織り込まれています。それらが実際にどのようにマンガに描かれているのかを知ることで、作者の意図や作品の奥深さを理解することができます。
現代性 
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横浜会場限定の特別展示
展覧会の締めくくりとして、「カミカイ」コーナーが設けられ、3作品の全ページが展示されています。
横浜会場限定の《おばあちゃん》は、ブラック・ジャックが高額報酬を請求する理由や、彼が患者に求めているものの本質、そして親子の愛といった深いテーマを扱った感動作として知られています。展覧会のメインビジュアルにも使われている「それを聞きたかった」というフレーズは、この作品に登場します。
カミカイ
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「ブラック・ジャック」の魅力を余すところなく体感
1話完結型の構成で、限られたページ数ながら、複雑な設定と医学的解説を巧みに織り交ぜ、読者の心を揺さぶる傑作だなと実感できる展示でした。
原画とセリフを丁寧に読んでいると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。じっくり楽しみたい方は、時間に余裕をもって訪れることをおすすめします。
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フォトスポットも用意されています ©Tezuka Productions

医療マンガの金字塔として、今なお多くの読者や現役医師からも愛され続ける名作の魅力を存分に体感できる貴重な機会です。手塚治虫が描いた命の尊さや医療の本質、そして現代に通じる社会性を持つ人間ドラマの数々を、ぜひ会場で直接感じとってみてください。
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©Tezuka Productions

【開催概要】
展覧会名:手塚治虫 ブラック・ジャック展
会期:2025年1月16日(木)~2月25日(火)
会場:そごう美術館(神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階)
開館時間:10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:会期中無休
入館(観覧)料:一般 1,600円、大学・高校生 1,400円、中学生以下 無料
公式ホームページ:https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/