奈良国立博物館で2025年4月19日から6月15日まで、開館130周年を記念した特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」が開催されます。この展覧会では、国宝約110件を含む約140件もの貴重な仏教・神道美術が一堂に会します。
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奈良博初の大規模な国宝展
奈良国立博物館(奈良博)は、130年を超える歴史を持ち、その中で文化財の保護と展示を通じて日本の文化を次世代へと継承してきました。
この特別展は奈良博初の大規模な国宝展で、奈良博や奈良の歴史に深く関わる国宝を中心に展示されます。
「超 国宝」という言葉には、優れた宝という意味だけでなく、時代を超えて伝えられた祈りや文化を継承する人々の心もまた宝であるという思いが込められています。

7つの章で紐解く日本の美の世界
第1章「南都の大寺」では、奈良の大寺院に伝わる国宝級の仏像や宝物が集結します。
法隆寺の国宝《観音菩薩立像》、通称「百済観音」は、すらりとした姿と柔和な表情が特徴的な、飛鳥時代を代表する仏像です。
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国宝 観音菩薩立像(百済観音) 飛鳥時代・7世紀 奈良・法隆寺

また、東大寺の国宝《金銅八角燈籠火袋羽目板》も見逃せません。大仏開眼の法要と同時期に作られたこの作品には、音楽を奏でる菩薩の姿が生き生きと表現されています。
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国宝 金銅八角燈籠火袋羽目板 奈良時代・8世紀 奈良・東大寺 展示期間:5月16日~6月15日

第2章「奈良博誕生」では、奈良国立博物館の誕生にまつわる貴重な文化財が展示されます。
奈良国立博物館の誕生には、明治8年(1875年)から18回にわたって開催された「奈良博覧会」が深く関与しています。この博覧会は、東大寺を会場として正倉院の宝物をはじめとする貴重な文化財が展示され、多くの観客を集めました。その反響はやがて博物館設立の構想へとつながりました。
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奈良博覧会立札 明治時代・19世紀 個人蔵 

その後、明治28年(1895年)に帝国奈良博物館が設立され、現在の奈良国立博物館となりました。この展覧会では「奈良博覧会」における目玉展示の一部を再現!名品・珍品を通じて奈良博草創期の歩みを振り返ります。
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国宝  龍燈鬼立像 鎌倉時代・建保3年(1215)奈良・興福寺  展示期間:4月19日~5月18日

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国宝 天燈鬼立像 鎌倉時代・建保3年(1215) 奈良・興福寺 展示期間:4月19日~5月18日
 
1875年から東大寺で開催された「奈良博覧会」に出品された作品の中から、法隆寺の国宝《竜首水瓶》が東京国立博物館から里帰りします。
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国宝 竜首水瓶 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館・法隆寺献納宝物

釈迦への信仰が生んだ美
奈良の地で栄えた仏教の大きな流れには、釈迦とその遺骨である仏舎利への信仰が重要な位置を占めています。
第3章「釈迦を慕う」では、飛鳥時代から鎌倉時代までの釈迦信仰に関する名宝が展示されます。東京・深大寺の《釈迦如来倚像》は、日本を代表する釈迦如来像の名作です。
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国宝 釈迦如来倚像 飛鳥時代・7世紀 東京・深大寺

ほかにもさまざまな舎利荘厳具の数々など、釈迦を慕う思いが生み出した各時代の名宝へが一堂に会し、奈良博に聖なる空間が現出します。
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国宝 金亀舎利塔 鎌倉時代・13世紀 奈良・唐招提寺 

極彩色の仏の世界
第4章「美麗なる仏の世界」では、平安時代の華麗な彩色や截金技法が施された仏画や、平安から鎌倉時代にかけて制作された美しい仏像、工芸作品が一堂に会し、先人たちが祈り描いた清らかな仏の世界へと観覧者を誘います。円成寺の国宝《大日如来坐像》は、若き日の運慶の才能が光る仏像です。
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国宝 大日如来坐像 運慶作 平安時代・安元2年(1176) 奈良・円成寺

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国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音) 平安時代・8世紀 京都・宝菩提院願徳寺

さらに、地獄草紙や病草紙など、仏の救いと明暗を描いた作品も見どころです。
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国宝 十一面観音像 平安時代・12世紀 奈良国立博物館 展示期間:4月19日~5月18日 

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国宝 釈迦金棺出現図 平安時代・12世紀 京都国立博物館 展示期間:5月20日~6月15日 

神々の世界:神道の美術
第5章「神々の至宝」では、神々への祈りが込められた神道の美術に焦点を当てます。神々の姿を表した絵画や彫刻、精巧な技術が施された神宝など、奈良を中心とした神社にゆかりの名宝が紹介されます。
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国宝 吉祥天像 奈良時代・8世紀 奈良・薬師寺 展示期間:4月19日~5月6日

天理市の石上神宮に伝わる国宝《七支刀》は、左右に3本ずつ枝刃が交互に出ている独特の形をした古墳時代の鉄製の刀で、東アジアの古代史を語る上で欠かせない重要な作品です。
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国宝 七支刀 古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮 

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国宝 金地螺鈿毛抜形太刀(部分) 平安時代・12世紀 奈良・春日大社 
展示期間:4月19日~5月18日

第6章「写経の美と名僧の墨蹟」では、日本を代表する古写経と高僧たちの墨蹟が紹介されます。
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国宝 山水図(水色巒光図) 伝周文筆 室町時代・15世紀 奈良国立博物館 展示期間:4月19日~5月18日

仏の教えを伝える経典は、書写することに加え、それ自体を美しく飾ることでも功徳があるとされています。日本では、平安時代に煌びやかな装飾を施した写経が隆盛し、特に美しい作品が数多く生み出されました。
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国宝 金光明最勝王経(国分寺経)(部分) 奈良時代・8世紀 奈良国立博物館 ※巻の入れ替えあり 

平安時代に描かれた精緻な宝塔は、よくみると全体が経典の文字で形作られています。
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国宝 金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第六幀 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺大長寿院 展示期間:4月19日~5月18日

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国宝 金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅 第六幀(部分) 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺大長寿院 展示期間:4月19日~5月18日

未来へつなぐ宝
展覧会の最終章「未来への祈り」では、中宮寺の菩薩半跏像を中心に、仏さまと向き合える特別な空間が設けられます。
かけがえのない文化財とそれを伝えてきた先人の祈りを受け継ぎ、文化の灯を次の時代につなぐ思いを込めた展示が行われます。
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国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音) 飛鳥時代・7世紀 奈良・中宮寺 展示期間:5月20日~6月15日

さらに鎌倉時代の写実的な彫刻の傑作《重源上人坐像》(鎌倉時代・13世紀、奈良・東大寺)、平安時代の絵巻物の傑作《信貴山縁起絵巻 尼公巻》(平安時代・12世紀、奈良・朝護孫子寺)、細密な描写と大胆な構図が特徴的な伊藤若冲の代表作・国宝《動植綵絵》(江戸時代、皇居三の丸尚蔵館)、春日大社にまつわる物語を描いた《春日権現験記絵》(鎌倉時代・14世紀、皇居三の丸尚蔵館)、玄奘三蔵の物語を想像力豊かに描いた《玄奘三蔵絵(全12巻のうち1巻)》(鎌倉時代・十四世紀、藤田美術館)など、よく知られた国宝の数々も展示される予定です。
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国宝 信貴山縁起絵巻 尼公巻(部分) 平安時代・12世紀 奈良・朝護孫子寺 展示期間:4月19日~5月18日

奈良国立博物館の130年の歴史を振り返るだけでなく、日本の美術史の粋を集めたとても贅沢な展覧会です。
古代から現代まで、時代を超えて受け継がれてきた「超 国宝」の数々に出会える喜びを、ぜひ会場で体験してみてください。

【開催概要】
展覧会名:奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」
会期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)
会場:奈良国立博物館 東・西新館
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日、5月7日(水)(ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館)
入館料:未定
公式ホームページ:https://oh-kokuho2025.jp