国立西洋美術館に新たな工芸品コレクションが加わりました。
ジュエリーアーティストの梶光夫氏から寄贈されたこのコレクションは、主に19世紀後半から20世紀初頭のフランスで制作されたエマーユ作品約150点で構成されています。
エマーユは、七宝に相当するフランス語で、金属の素地にガラス釉を焼きつけた工芸品のことをいいます。梶氏は1980年頃にパリの骨董店でエマーユの小箱と出会ったことをきっかけに収集を始め、数百点に及ぶコレクションを築き上げました。
今回の寄贈は、エマーユの美しさを多くの人々に知ってもらいたいという梶氏の願いから実現しました。

エマーユの魅力に迫る「梶コレクション展」
2025年3月11日から6月15日まで開催される「梶コレクション展-色彩の宝石、エマーユの美」は、このコレクションの魅力を存分に堪能できる展覧会です。
コインのように小さなものから、ジュエリー、宝石小箱、さらには額に入った大きなエマーユまで、梶コレクションの全貌が明らかになります。
エマーユ作品だけでなく、梶氏が所有するアール・ヌーヴォーの工芸品やアルフォンス・ミュシャのポスターなども展示されます。
国立西洋美術館《ルネサンス期ファッションの若い女性》
ポール・ボノー《ルネサンス期ファッションの若い女性》1907年 50 x 50 cm(額寸)、17 x 17 cm(エマーユ) 国立西洋美術館 梶コレクション

国立西洋美術館《ヴィーナスが描かれた脚付盃》
シャルル・ルペック《ヴィーナスが描かれた脚付盃》1863年 20 x 20 x 17 cm 国立西洋美術館 梶コレクション

国立西洋美術館《愛の泉が描かれたピルケース》
《愛の泉が描かれたピルケース》1860年頃 6 x 6 x 3 cm 国立西洋美術館 梶コレクション

国立西洋美術館《皇后テオドラ像》
《皇后テオドラ像》19世紀後半 2.6 x 2.6 cm 国立西洋美術館 梶コレクション

ピカソの人物画に迫る
2025年6月28日から10月5日まで開催される「ピカソの人物画」展は、20世紀美術の巨匠パブロ・ピカソの作品に焦点を当てます。ピカソは何よりも「人」を描いた画家として知られています。彼の作品は時代とともに大きく変化しましたが、どの時期も強い存在感を放つ人間像を生み出し続けました。
この展覧会では、近年多数の寄託作品により拡充された国立西洋美術館のピカソ・コレクションを中心に、彼の人物画の魅力に迫ります。

デューラーの木版画の世界
2025年10月25日から2026年2月15日まで開催される「物語る黒線たち――デューラー「三大書物」の木版画」展は、ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家アルブレヒト・デューラーの作品に焦点を当てます。
デューラーは「黒線のアペレス」という異名をとり、色のない線であらゆるものを描きつくすと評されました。
この展覧会では、彼が1511年に同時に出版した「三大書物」――『大受難伝』、『黙示録』(ラテン語版による再版)、『聖母伝』の木版画連作がはじめて全点展示されます。
国内でデューラーの「三大書物」の木版画をすべて所蔵しているのは国立西洋美術館のみ。デューラーの木版画芸術の核心に触れることができる貴重な機会となります。
国立西洋美術館《龍と闘うミカエル》
アルブレヒト・デューラー《『黙示録』:龍と闘う聖ミカエル》1498年頃、1511年出版(ラテン語版再版、印刷本としての初版は1498年)木版、活版印刷 39.4 x 28.1 cm 国立西洋美術館

100年ぶりの再会!フランドル聖人伝板絵
2025年10月25日から2026年5月10日まで開催される「フルーニング美術館・国立西洋美術館所蔵 フランドル聖人伝板絵―100年越しの"再会"」展は、1520年代のフランドル(現在のベルギー)で制作された2点の聖人伝板絵を、100年ぶりに並べて展示する特別な企画です。展覧会では美術史学的アプローチと自然科学的調査から得られた最新の研究成果も紹介されます。
国立西洋美術館《聖ヤコブ伝》
作者不詳《聖ヤコブ伝》油彩、板 116.4 x 105.6 ㎝ 国立西洋美術館 旧松方コレクション

2025年度の企画展も見逃せない
2025年度は、3つの大きな企画展も予定されています。
「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」(2025年3月11日~6月8日)では、2つの美術館のコレクションを比較しながら西洋絵画の新しい見方を学べます。
「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」(2025年7月1日~9月28日)では、北欧の美術館が誇る素描コレクションを堪能できます。
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」(2025年10月25日~2026年2月15日)では、印象派の画家たちが描いた室内空間の魅力に迫ります。

【開催概要】
展覧会名:各展覧会名は本文参照
会期:各展覧会の会期は本文参照
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は20:00まで ※「モネ 睡蓮のとき」会期中(2025年2月11日まで)は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始、2025年2月12日~3月10日まで休館
公式ホームページ:https://www.nmwa.go.jp/
※開館時間、休館日、入館料は変更される可能性があります。最新情報は公式ホームページでご確認ください。