東京都文京区目白台にある永青文庫では、2025年4月から2026年3月にかけて、4つの企画展を開催します。絵画、工芸、彫刻など、さまざまなジャンルの美術品を楽しめる魅力的な展覧会が予定されています。
令和7年度初夏展
くまもとの絶景 ―知られざる日本最長画巻「領内名勝図巻(りょうないめいしょうずかん)」を旅する―
2025年4月26日(土)~6月22日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし5/5は開館し、5/7は休館)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00 まで)
「領内名勝図巻」(熊本県指定重要文化財)は、熊本藩のお抱え絵師・矢野良勝(やのよしかつ、1760~1821)と衛藤良行(えとうよしゆき、1761~1823)が、おもに熊本領内の滝や名所、川沿いの風景などの絶景を全15巻にわたって描いた、真景図の先駆的作例とされる画巻で、天地の長さは約60センチ、全巻を広げると計400メートルにも及ぶという圧倒的なスケールの作品です。絵画好きとして知られる8代藩主・細川斉茲(なりしげ、1759~1835)の命により制作されました。
本展では、現存14巻のうちから選りすぐりの巻をとおして、この規格外とも言える本作の迫真の風景描写や、制作背景が紹介されます。豊かな水と緑をたたえる熊本の絶景を、旅人になった気分で楽しめる展覧会です。
本展では、現存14巻のうちから選りすぐりの巻をとおして、この規格外とも言える本作の迫真の風景描写や、制作背景が紹介されます。豊かな水と緑をたたえる熊本の絶景を、旅人になった気分で楽しめる展覧会です。

熊本県指定重要文化財 衛藤良行「領内名勝図巻 上益城郡矢部手永之内」(部分)寛政5年(1793) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)

熊本県指定重要文化財 矢野良勝「領内名勝図巻 阿蘇郡北里手永 杖立川路越之図」(部分)寛政5年(1793) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)

「細川斉茲像」(部分)江戸時代(19世紀) 永青文庫蔵

熊本県指定重要文化財 矢野良勝「領内名勝図巻 阿蘇郡北里手永 杖立川路越之図」(部分)寛政5年(1793) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)

「細川斉茲像」(部分)江戸時代(19世紀) 永青文庫蔵
令和7年度夏季展
文房四宝と喫煙具の美(仮)
2025年7月5日(土)-8月31日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし7/21・8/11は開館し、7/22・8/12は休館)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00 まで)
「文房」とは、中国の文人が詩作や読書にふけるための書斎を意味し、そこには彼らの高い教養を反映した様々な道具「文房具」が揃えられていました。特に筆・紙・硯・墨は重要視され、「文房四宝」と呼ばれます。そうした文房四宝を愛好したのが、永青文庫の設立者・細川護立(もりたつ、1883~1970)です。護立は、禅画や刀剣、日本近代絵画の収集で知られますが、中国の陶磁器や仏像にも関心を広げ、文房具も収集しました。1972年に開催された「永青文庫開館記念展」では、護立の中国美術コレクションから文房具が多く紹介されており、細川家で重視された分野であったことがうかがわれます。本展は、永青文庫が所蔵する中国の文房具について行われた調査をもとに、改めてその魅力を紹介する展覧会です。
きざみ煙草を持ち歩くための入れ物である煙草入れなどの喫煙具も特集展示されます。

令和7年度秋季展 重要文化財「黒き猫」修理完成記念
永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰って来る!―(仮)
2025年10月4日(土)-11月30日(日) ※会期中、大幅な展示替えを行います
休館日:毎週月曜日(ただし10/13・11/3・11/24は開館し、10/14・11/4・11/25は休館)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00 まで)
重要文化財「黒き猫」は、36歳の若さで夭折した画家・菱田春草が晩年に残した代表作の一つとして知られています。細川護立は、春草をはじめ同時代の日本画家たちにいち早く注目し、彼らの作品を積極的に蒐集しました。永青文庫所蔵の護立の近代日本画コレクションのなかでも、「黒き猫」は不動の人気を誇る作品です。
本作の修理完成を記念した本展では、「黒き猫」や「落葉」(重要文化財)など同館所蔵の春草作品全4点を期間限定公開。さらに横山大観、下村観山、鏑木清方といった近代日本を代表する画家たちの優品が一堂に展覧されます。あわせて、中国の禅僧・清拙正澄(せいせつしょうちょう)と楚石梵琦(そせきぼんき)による墨蹟2点(いずれも重要文化財)が修理後初公開されます。

重要文化財 菱田春草「黒き猫」明治43年(1910) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)※半期展示


重要文化財 菱田春草「落葉」明治42年(1909) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)※半期展示


横山大観「柿紅葉」 大正9年(1920) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)※半期展示
令和7年度早春展
石からうまれた仏たち(仮)
2026年1月17日(土)-3月29日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし2/23は開館し、2/24は休館)
開館時間:10:00~16:30(入館は16:00 まで)
2019年1月から4月に開催され、好評を得た「石からうまれた仏たち」展が、一部内容を変更して再び開催されます。
細川護立は幼少期から漢籍に親しみ、中国考古や陶磁器ばかりではなく、中国の石仏・金銅仏、インドや東南アジアの彫刻をもコレクションに加えています。とりわけ北魏から唐時代におよぶ中国彫刻は、近代日本においていち早く中国美術を紹介・蒐集した早崎稉吉(はやさきこうきち、1874~1956)の旧蔵品が大半を占め、各時代の特徴を表した重要な像が多く含まれます。
永青文庫の東洋彫刻コレクションが一堂に公開される本展では、「菩薩半跏思惟像(ぼさつはんかしいぞう)」や「如来坐像(にょらいざぞう)」(いずれも重要文化財)をはじめとする中国彫刻のほか、多種多様なインド彫刻が7年ぶりに公開されます。

重要文化財「菩薩半跏思惟像」中国 北魏時代(6世紀前半) 永青文庫蔵

重要文化財「如来坐像」中国 唐時代(8世紀前半) 永青文庫蔵

「道教三尊像」中国 北魏時代 永平年間(508~511年) 永青文庫蔵

「ターラー菩薩立像」インド パーラ時代(9~10世紀) 永青文庫蔵(熊本県立美術館保管)
【開催概要】
会場:永青文庫(東京都文京区目白台1-1-1)
時間:10:00〜16:30(最終入館時間 16:00)
※状況により、臨時に休館や開館時間の短縮を行う場合あり
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌平日が休館)、展示替期間、年末年始
永青文庫公式サイト:https://www.eiseibunko.com/