山種美術館(東京都渋谷区)で、2025年2月24日まで特別展「HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―」が開催されています。
チラシ

古くから日本人は、絵画や工芸品に幸せへの願いを込めてきました。本展では、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた美術作品55点を展示。松竹梅や七福神といったおなじみのモティーフから、現代でもラッキーアイテムとして親しまれている題材まで、幅広い時代の幸せや縁起の良さを感じられる作品が紹介されています。
1章展示風景
展示風景

新春を祝う!めでたい絵画が勢ぞろい
展覧会の冒頭では、新年にふさわしい縁起の良い作品が並びます。
ともに吉祥のモティーフである鶴と松が描かれた、横山大観の《天長地久》からは新年の清々しさが伝わってきます。
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横山大観《天長地久》1943(昭和18)年頃 山種美術館

竹内栖鳳の《艶陽》、奥村土牛の《巳年》など、2025年の干支である巳(へび)にちなんだ作品も展示されています。
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奥村土牛《巳年》1977(昭和52)年 山種美術館

狩野常信の《七福神図》には、七福神とともに吉祥画題の唐子が描かれ、子どもの愉快そうな表情やしぐさが楽しい作品です。
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狩野常信《七福神図》17-18世紀(江戸時代)  山種美術館

おめでたいトリオ松竹梅
日本美術では、松竹梅がめでたい植物の代表として描かれてきました。松と竹は厳寒に耐え、梅は早く花を咲かせるため、縁起の良い植物とされています。
横山大観の《松竹梅》は、これら3つの植物を一つの画面に描いた作品です。力強い松、しなやかな竹、可憐な梅の花が、それぞれの特徴を生かして表現されています。
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横山大観《松竹梅》1931(昭和6)年頃  山種美術館

横山大観、川合玉堂、竹内栖鳳による合作の《松竹梅》は、3人の画家がそれぞれ松、竹、梅を担当して描いた作品。巨匠たちの異なる画風の競演を楽しむことができます。
合作 松竹梅
《松竹梅》1934(昭和9)年 山種美術館

生きものに込められた吉祥
動物を題材にした作品も多数展示されています。岸連山の《花鳥図》は、松竹梅と共に鶴や孔雀などの縁起の良い動植物が多く描かれた豪華な屏風絵です。
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岸連山 《花鳥図》19世紀(江戸時代)  山種美術館

ほかにも伊藤若冲の《鶴図》《鶏図》(ともに個人蔵 )、菱田春草の《白牡丹》、川端龍子の《鯉》など、長寿や富貴、立身出世を象徴する動物や植物を描いた作品が並びます。若冲が多く手がけた鶏は、中国語で「鶏」と「吉」が同音であるため、縁起が良いとされています。
古径鶴龍子鶴 若冲鶏
 (左から)小林古径《鶴》1948(昭和23)年 山種美術館、川端龍子《鶴鼎図》1935(昭和10)年  山種美術館、伊藤若冲《鶏図》18世紀(江戸時代) 個人蔵

蓬莱山と富士山の魅力
富士山や不老不死の仙人が住むとされる蓬莱山も、日本美術における重要な吉祥モティーフです。
蓬莱 左33 新井 34大観
(左から)新井洞巌《蓬莱仙境図》1942(昭和17)年 山種美術館、横山大観《蓬莱山》1939(昭和14)年頃  山種美術館 

富士山は昔から霊峰として尊ばれ、縁起の良い山としても描かれてきました。展示では、生涯で1500点を超える富士山の絵を描いたと言われる大観のほか、奥村土牛、小松均、司馬江漢が富士山を描いた作品が並び、それぞれの画家の表現を見比べながら鑑賞することができます。
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展示風景より、(右)小松均《赤富士図》1977(昭和52)年 山種美術館

思わず笑顔に!ユーモアあふれる作品たち
展覧会の後半では、見る人を楽しい気持ちにさせる作品が並びます。
今回初公開の《虎渓三笑・文王呂尚図屛風》は、中国の三教一致の思想を表す故事を描いた屏風絵。右隻の「虎渓三笑」からは、登場人物3人の楽しい笑い声が聞こえてきそうです。
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《虎渓三笑・文王呂尚図屛風》17世紀(江戸時代)  個人蔵 

若冲がタコの動きをユーモラスに描いた作品や、京都の伏見稲荷付近で作られた土人形を独特の筆致で愛らしく描いた作品も展示されています。
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(左から)伊藤若冲《蛸図》18 世紀(江戸時代)  個人蔵、 伊藤若冲《伏見人形図》1799(寛政11)年 山種美術館 

今年注目されたはにわも登場。《埴輪 猪を抱える猟師》(個人蔵)は、猪を抱えてにっこり笑うような表情の人物の姿を表現しています。素朴な造形ながら、思わず笑みがこぼれる愛らしさがあります。その横に展示されている《迦陵頻伽像》(個人蔵)は、鳥の体に人の顔がついた不思議な姿ですが、にこやかで優しい表情をしています。
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《埴輪 猪を抱える猟師》5-7世紀(古墳時代)  個人蔵

展覧会の余韻に浸りながら、ミュージアムショップでおみやげを選ぶのも楽しみの一つかもしれません。今回も作品をモティーフにしたオリジナルグッズが多数用意されています。

グッズ

カフェでは、展覧会にちなんだオリジナル和菓子を味わうことができます。美術鑑賞の余韻をカフェでゆっくり味わえば、さらに幸せな気分になれそうですね。クリスマスやお正月限定和菓子も登場します!
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日本美術の中に込められた「幸せ」や「縁起の良さ」を、古代から現代までの時代を超えた表現を通して感じることができる展覧会です。新年を迎えるこの時期、幸せな雰囲気いっぱいの美術館で、心温まるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。 
※本文中所蔵表記のない作品はすべて山種美術館蔵 

【開催概要】
展覧会名:【特別展】HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―
会期:2024年12月14日(土)~2025年2月24日(月・振休)
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(1月13日、2月24日は開館)、1月14日(火)、12月29日~1月2日
入館料:一般1,400円、大学生・高校生500円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
公式ホームページ:https://www.yamatane-museum.jp/