東京・虎ノ門の大倉集古館で、2025年1月28日から3月23日まで、企画展「武士の姿・武士の魂」が開催されます。

平安時代後期から武士が歴史の舞台に登場し、やがて国を支配するようになった過程で、絵画に武士の姿が描かれるようになりました。本展では、合戦図や武人肖像画、武力や権力を象徴するモチーフなど、さまざまな形で表現された武士の姿を紹介します。

第1章:武者の姿と武具 - 時代を映す武士の表現
第1章では、平安末期から鎌倉時代の『平家物語』や南北朝時代の『太平記』を舞台にした絵画作品を中心に展示されます。弓馬に秀で、刀剣を身に帯びる武人の姿が描かれた作品は、それぞれの時代の武士に対するイメージを反映しています。

展覧会の目玉となるのが、重要文化財に指定されている前田青邨の《洞窟の頼朝》です。昭和4年に描かれたこの作品は武士の威厳と内面の葛藤を見事に表現しています。
図01_前田青邨_洞窟の頼朝_大倉集古館
重要文化財《洞窟の頼朝》前田青邨、昭和4年(1929)大倉集古館蔵 (c) Y.MAEDA & JASPAR, Tokyo, 2024 E5810
 
安田靫彦の《黄瀬川陣》は、治承4年(1180年)に源頼朝が平家追討のために兵を挙げ、駿河国の黄瀬川で奥州から参じた源義経と対面した場面を描いた作品です。この歴史的な瞬間を、靫彦は洗練された構図と澄明な彩色を用いて、高い芸術性を持つ作品に仕上げました。
図04_1左_安田靫彦_黄瀬川陣_東京国立近代美術館図04_2右_安田靫彦_黄瀬川陣_東京国立近代美術館
重要文化財《黄瀬川陣》安田靫彦、昭和15/16年(1940/41)、東京国立近代美術館蔵【後期展示】

小山栄達の《吉野山合戦》は南北朝時代の吉野山での戦い、《一の谷合戦絵巻》は源平合戦の一場面を描いた作品です。どちらも当時の武士の装いや戦いの緊張感を生き生きと伝えています。
図05_2右_小山栄達_吉野山合戦_喫茶サンキュー
《吉野山合戦》小山栄達、大正~昭和初期・20世紀 (株)喫茶サンキュー蔵【前期展示】

図06_一の谷合戦図屏風_大倉集古館
《一の谷合戦絵巻》江戸時代・18世紀、大倉集古館蔵【巻替えあり】

第2章:鷹図の世界 - 権力の象徴としての鷹
第2章では、武力と権力の象徴とされる鷹をテーマにした作品を紹介されます。
鷹狩は古くは天皇、後に武士が行うようになった為政者による狩猟でした。
豊臣秀吉らが好んだ戦国時代以降、鷹図が多く描かれるようになります。江戸時代になると鷹狩は政治にも組み込まれ、鷹は威信財や贈答品として大切に扱われました。
図08_鷹狩図_狩野典信_東京国立博物館
《鷹狩図》狩野典信、江戸時代・18世紀、東京国立博物館蔵【後期展示】

南溪の《鶴に鷹図》は、鶴を襲う鷹の勇猛さをリアルに表現した作品です。
図07_鶴に鷹図_南溪_摘水軒記念文化振興財団
《鶴に鷹図》南溪、江戸時代・19世紀、摘水軒記念文化振興財団蔵

曽我二直庵は鷹の描写に優れた画家として知られています。12幅からなる《鷹図》に描かれた鷹は、異なる表情や姿勢を見せており、二直庵のならではの鷹の表現を堪能できます。
図09_曽我二直庵_鷹図(12幅のうち)_個人蔵
《鷹図》(12幅のうち)曽我二直庵、江戸時代・17世紀、個人蔵【場面替えあり】

甲冑や刀剣も展示
武士の魂とも言える甲冑や刀剣も展示されています。重要文化財に指定されている《短刀 銘 則重》は、鎌倉時代末期に活躍した刀工・則重の作品です。
《赤絲威大鎧》は、平安時代の12世紀の鎧を忠実に再現した複製で、武士の威厳と美意識を感じ取ることができます。
図03_短刀_銘則重_大倉集古館
重要文化財《短刀 銘 則重》鎌倉時代・14世紀、大倉集古館蔵

図02_赤絲縅大鎧(複製)_千葉県立中央博物館大多喜城分館
《赤絲威大鎧(複製)》平成2年(1990)(原品:平安時代・12世紀)千葉県立中央博物館 大多喜城分館蔵

【開催概要】
展覧会名:企画展「武士の姿・武士の魂」
会期:2025年1月28日(火)~3月23日(日)
前期:1月28日(火)~2月24日(月・休)
後期:2月26日(水)~3月23日(日)
会場:公益財団法人 大倉文化財団 大倉集古館
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
金曜日は19:00まで開館(入館は18:30まで)
休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌火曜日)
入館料:一般1,000円、大学生・高校生800円、中学生以下無料
公式ホームページ:https://www.shukokan.org/