静嘉堂では8年ぶりの茶道具展、丸の内で初開催
静嘉堂として8年ぶり、丸の内での開催は初めてとなる今回の茶道具展。
同館所蔵の茶道具は、三菱第2代社長・岩﨑彌之助とその嗣子で第4代社長の岩﨑小彌太の父子二代によって、明治17年(1884年)頃から昭和20年までに蒐集されました。
本展では、将軍家や大名家旧蔵の由緒ある墨跡や花入、茶入や名碗をはじめ、約1,400点にも及ぶ静嘉堂の茶道具コレクションから厳選された名品の数々が一堂に会しています。
展示風景より、名物茶入の品々
本展では、将軍家や大名家旧蔵の由緒ある墨跡や花入、茶入や名碗をはじめ、約1,400点にも及ぶ静嘉堂の茶道具コレクションから厳選された名品の数々が一堂に会しています。
展示風景より、名物茶入の品々
展示の最大の見どころは、国宝に指定されている《曜変天目(稲葉天目)》です。この茶碗は、世界に3件しか存在しない貴重な茶碗のひとつ。虹色に輝く美しい模様が特徴で、茶道具の中でも最高峰の逸品と高く評価されています。
名碗が勢ぞろい!
彌之助は早い時期から茶道具の収集を始め、息子の小彌太は自身も茶の湯に親しむなど茶道、茶道具への造詣を深めました。Gallery 1では、そんな親子のコレクションの中から「名碗」と称される逸品が勢ぞろい。中国からもたらされた「唐物」の天目茶碗や高麗茶碗、日本で千利休が創始したとされる京都の樂焼茶碗など、さまざまな名碗が展示されています。
油滴斑が格別に大きく姿も見事な油滴天目は、水戸徳川家伝来の大振りの堆朱天目台も見どころです。
油滴斑が格別に大きく姿も見事な油滴天目は、水戸徳川家伝来の大振りの堆朱天目台も見どころです。
【重要文化財】《油滴天目》附:《堆朱花卉天目台》南宋時代(12~13世紀)
《黒樂茶碗 紙屋黒》桃山時代(16世紀)
展示風景より、高麗茶碗の展示
ホワイエでは、和物(国焼茶碗の優品)が展示されています。この芦屋釜 (筑前国芦屋津) の基本となる形の茶釜は、 片面に住吉神社の太鼓橋、 別面に周辺の景色が描かれています。
《住吉釜》室町時代(15~16世紀)戦国武将が愛した名物茶入
Gallery 2では、茶席の格を決める重要な道具である茶入に焦点を当てています。
ここでは「大名物」と呼ばれる、千利休の時代以前から高い評価を受けていた唐物茶入7点すべてが展示。
中でも注目は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らが所有していたと伝わる《唐物茄子茶入 付藻茄子》と《唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》の2点です。岩崎彌之助が茶道具の中で最初に購入した品で、まだ若かった彌之助は会社から年末の給与を前借りして買ったという逸話も残っています。
中でも注目は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らが所有していたと伝わる《唐物茄子茶入 付藻茄子》と《唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》の2点です。岩崎彌之助が茶道具の中で最初に購入した品で、まだ若かった彌之助は会社から年末の給与を前借りして買ったという逸話も残っています。
さらに、江戸時代後期、出雲藩主で大茶人であった松平不昧(治郷)が小堀遠州時代の茶入として評価し、“中興名物”と名付けた茶入も、静嘉堂所蔵の5点すべてが展示されています。
今回茶入を収納する筒形の容器(挽家)や、盆、仕覆などの美しい色彩や意匠の付属品(次第)も併せて展示され、会場を華やかに彩ります。
《唐物肩衝茶入 瘤肩衝(佐々肩衝)》には、足利義政や将軍に仕えた相阿弥ゆかりの黒塗の挽家が二つも添っています。
茶道具は各作品の姿・形とともに、その由緒や伝来などを知るとよりいっそう楽しめます。
本展では、松平不昧が二百両で譲渡を熱望したものの入手できなかった茶入など、それぞれに伝わるエピソードなどもキャプションで詳しく紹介されています。
本展では、松平不昧が二百両で譲渡を熱望したものの入手できなかった茶入など、それぞれに伝わるエピソードなどもキャプションで詳しく紹介されています。
展示をとおして、かつての権力者たちが茶道具に注いだ情熱と執着が伝わってきます。この機会にそれぞれの道具に込められた歴史の重みを感じとってみてください。
大名家の美意識を物語る逸品
Gallery 3ではかつての大名家ゆかりの作品が展示されています。仙台藩主伊達家、加賀藩主前田家など、有名な大名家が大切に伝えてきた道具類や、豪商・茶人所持の名品を見ることができます。これらの品々は、単なる道具というだけでなく、各家の美意識や文化的背景を物語る貴重な資料でもあります。
仙台藩主伊達家ゆかりの品々
仙台藩主伊達家ゆかりの品々
今回特に注目の作品は「猿曳棚(さるひきだな)」です。引き戸に猿まわしの絵が描かれたこの棚は、伊達家茶道頭の清水家に伝えられていたものですが、引き戸の絵を狩野派の絵師に描かせた“写し”も複数制作されました。静嘉堂では本歌(オリジナル)に加え3点の写しを所蔵しており、本展では4点すべてが展示されます。
今回初公開となる1点は狩野派に連なる日本画家・橋本雅邦が描いた可能性があるというのも注目のポイントです。
(右)引戸板絵=伝 狩野元信《猿曳棚(本歌)》室町時代(16世紀)とその写しの展示
四国の讃岐丸亀藩主京極家ゆかりの品はすべて江戸時代初期に活躍した野々村仁清作のもの。左の茶入のセットは、17世紀前半、仁清が茶人・金森宗和の指導のもとで制作した唐物茶入の写しと考えられています。
展示風景より、京極家ゆかりの品々
Gallery 4では国宝《曜変天目(稲葉天目)》のほか、淀藩主稲葉家伝来の《唐物瓢箪茶入 稲葉瓢箪》などの逸品が展示されています。
大名物《唐物瓢簞茶入 稲葉瓢簞》南宋~元時代(13~14世紀)など稲葉家ゆかりの品々
自身も茶の湯をたしなんだ小彌太と彼の師との交流のようすを伝える品も紹介されています。
将軍家・大名家ゆかりの茶道具の名品で「眼福」のひとときを
展覧会のタイトル「眼福」には、「目の保養になる」という意味があります。実際に展示品を見ると、その美しさや歴史の重みに圧倒されます。
本展の図録もミュージアムショップで販売中。展示作品のカラー図版と詳しい解説のほか、関連用語や茶道具の種類の解説なども収録され、展覧会の振り返りだけでなく、茶道具や茶の湯文化についての理解を深めるために役立つ一冊です。
本展は、11月4日まで開催されています(会期中一部展示替えあり)。秋の一日、丸の内で日本の美と歴史に触れる「眼福」のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
本展の図録もミュージアムショップで販売中。展示作品のカラー図版と詳しい解説のほか、関連用語や茶道具の種類の解説なども収録され、展覧会の振り返りだけでなく、茶道具や茶の湯文化についての理解を深めるために役立つ一冊です。
本展は、11月4日まで開催されています(会期中一部展示替えあり)。秋の一日、丸の内で日本の美と歴史に触れる「眼福」のひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
【展覧会情報】
特別展「眼福 ―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」
会期:2024年9月10日(火) ~ 11月4日(月・振休)
- 前期:9月10日(火) ~ 10月6日(日)
- 後期:10月8日(火) ~ 11月4日(月・振休)
※会期中一部展示替えあり
会場:静嘉堂@丸の内(明治生命館1階) 東京都千代田区丸の内2-1-1
開館時間:10:00 ~ 17:00 土曜日:18:00まで、 第4水曜日:20:00まで ※入館はいずれも閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日※9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館し翌火曜休館
入館料:一般:1,500円、 大高生:1,000円、中学生以下無料 ※着物の方は200円引(他の割引との併用不可)
TEL: 050-5541-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://www.seikado.or.jp