正倉院に収められている聖武天皇ゆかりの宝物などを、毎年秋に奈良国立博物館で公開する「正倉院展」。
76回目を迎える今年は、聖武天皇の遺愛品リスト『国家珍宝帳』に記載されている白銅製の鏡と肘おきをはじめ、幅広い分野から57件(うち10件が初出陳)の宝物が展示されます。なかでも、色ガラス製の装身具や、金と緑釉の対比が美しい《黄金瑠璃鈿背十二稜鏡》など、色とりどりのガラスを用いた宝物が特に注目されています。また、宮内庁正倉院事務所が製作した宝物の再現模造品も多数展示され、実物とあわせて宝物により深く親しむことができるようになっています。

南倉 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡
【主な出陳宝物】
北倉35 新羅琴 附 琴柱(しらぎごと つけたり ことじ) 1張 前回出陳年=平成10年(1998)
鳳凰などを精緻に表した朝鮮半島由来の十二絃の楽器。槽(胴部)の表面には金箔を細く切った截金で、輪形の草花文の中に配される鳳凰などが精緻に表されている。

北倉 新羅琴 附 琴柱
北倉42 花鳥背円鏡 附 帯、紙箋(かちょうはいのえんきょう つけたり おび、しせん) 1面 前回出陳年=平成24年(2012)
唐からの舶載品とみられる聖武天皇ゆかりの大型の花鳥文様の鏡。

北倉 花鳥背円鏡 附 帯、紙箋
北倉44 鹿草木夾纈屛風(しかくさききょうけちのびょうぶ) 1扇 前回出陳年=平成25年(2013)
北倉 鹿草木夾纈屛風北倉47 紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく) 1枚 前回出陳年=平成27年(2015)九州国立博物館、平成16年(2004)
聖武天皇の美しい錦仕立ての肘おき。錦には葡萄唐草の円文で取り囲まれた鳳凰が織り表わされている。

北倉 紫地鳳形錦御軾
北倉150 花氈(かせん)〔花文様のフェルトの敷物〕 1床 前回出陳年=昭和40年(1965)
中倉16 続修正倉院古文書(ぞくしゅうしょうそういんこもんじょ)第三十四巻 前回出陳年=平成18年(2006)
興福寺西金堂は、光明皇后が母の県犬養橘三千代の冥福を祈って建立した仏堂。本品は、これはその造営を担当した役所が天平6年(734) にまとめた製作物に関する事業報告書で、正倉院宝物の製作技法の手がかりにもなる重要史料。

中倉 続修正倉院古文書 第三十四巻〔造仏所作物帳〕
中倉51 紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく) 1枚 前回出陳年=平成15年(2003)
宮廷の儀礼に用いられたと考えられている装飾性の高い象牙製のものさし。表面と裏面半分に瑞祥的意味合いのある架空の動物や鳥と唐花文、裏面のもう半分には庭園のある堂閣を含む景観が表されている。


中倉 紅牙撥鏤尺 (表) 中倉 紅牙撥鏤尺 (裏)
中倉111、112 碧瑠璃小尺(へきるりのしょうしゃく)、黄瑠璃小尺(きるりのしょうしゃく)〔ガラス製のものさし形飾り〕各1枚〔組紐結束〕前回出陳年=平成24年(2012)
腰帯に通したと考えられる半透明に輝くガラス製のものさし形の飾り。奈良時代における宮廷のオシャレを想像させる逸品。

中倉 碧瑠璃小尺、黄瑠璃小尺
中倉128 深緑瑠璃魚形(ふかみどりるりのうおがた)、浅緑瑠璃魚形(あさみどりるりのうおがた)、碧瑠璃魚形(へきるりのうおがた)、黄瑠璃魚形(きるりのうおがた)各1枚 前回 出陳年=平成15年(2003)
所持した人の高貴さを示したと思われる愛らしいガラス製の魚の装飾品。


中倉 深緑瑠璃魚形 中倉 浅緑瑠璃魚形


中倉 深緑瑠璃魚形 中倉 浅緑瑠璃魚形


中倉 碧瑠瑠璃魚形 中倉 黄瑠璃魚形
中倉142 沈香木画箱(じんこうもくがのはこ)〔寄木細工の箱〕 1合 前回出陳年=平成21年(2009)
舶来の高級な素材を用いて、精巧な寄せ木細工で飾った、ほとけへの捧げものを納めたと考えられる箱

中倉 沈香木画箱 (部分)
中倉155 緑地彩絵箱(みどりじさいえのはこ)1合 前回出陳年=平成26年(2014) 東京国立博物館、平成16年(2004)
中倉 緑地彩絵箱中倉155 緑地彩絵箱(みどりじさいえのはこ)1合 前回出陳年=平成26年(2014) 東京国立博物館、平成16年(2004)
南倉1 伎楽面 酔胡従(ぎがくめん すいこじゅう)1面 前回出陳年=昭和35年(1960)
法会などに際し行われた伎楽に用いる仮面。

南倉 伎楽面 酔胡従
南倉70 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう) 1面 前回出陳年=平成21年(2009)東京国立博物館、平成12年(2000)
背面に12枚の花びらをかたどった装飾が施された鏡。
背面に12枚の花びらをかたどった装飾が施された鏡。
花びらは銀の薄板に、黄、緑、深緑という3色の七宝釉薬を焼き付けたもので、深い緑と金色の対比が美しい。

南倉 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡
南倉174 紫檀金銀絵書几(したんきんぎんえのしょき) 1基 前回出陳年=平成24年(2012)
仏教儀礼に用いられた可能性が考えられる、巻物を見るための台。貴重な木材のシタン製で、表面には金銀泥で草花や飛鳥を繊細に描かれている。

南倉 紫檀金銀絵書几 (部分)
南倉174 紫檀塔残欠(したんのとうざんけつ)一括 前回出陳年=平成16年(2004)
小建築の部材。一部に切金や飾金具の痕跡があり、きらびやかな姿が偲ばれる品。

南倉 紫檀塔残欠 (高欄の部材)
観覧には日時が指定された前売券の購入が必要です。チケット情報は公式ウェブサイトでご確認ください。
また、館内の混雑を避けるため、時間枠開始直後の入館は避け、少し遅れての入館が推奨されています。
今秋も調度品や服飾具、仏具、文書(もんじょ)といった、正倉院宝物の名品が会場を彩ります。奈良の歴史的な風景の中で、天平文化の粋を感じてみてはいかがでしょうか。
【開催概要】
会期:2024年10月26日(土)~2024年11月11日(月)
会場:奈良国立博物館 東・西新館
時間:8:00〜18:00
金・土・日曜日、祝日は20:00まで ※いずれも入館は閉館の60分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般2,000円、高大生1,500円、小中生500円、キャンパスメンバーズ学生400円
(レイト割) 一般1,500円、高大生1,000円,小中生無料
※観覧には原則、事前予約制の「日時指定券」の購入が必要です(無料対象者を除く)
※レイト割は月~木曜日は午後4時以降、金・土・日曜日、祝日は午後5時以降の「日時指定券」に適用
TEL:050-5542-8600 (ハローダイヤル)
「正倉院展」 公式ウェブサイト:https://shosoin-ten.jp/