企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」が、東京の町田市立国際版画美術館にて、2024年9月14日(土)から12月1日(日)まで開催されます。
E405-5452

両大戦間期における版画表現の展開をたどる
本展は、ふたつの世界大戦の狭間にあたる約20年間に焦点を当てる展覧会。モダニズムの時代を版画に表したアーティストたちの作品約230点をとおして、新しい社会に対する期待と不安が入り混じる、当時のフランス、アメリカ、日本、ドイツ、ロシアの様相を見ていきます。
E405-5438
エドゥアール・アルーズ《使者》1925年刊、ポショワール、当館蔵

「両大戦間」に向かって:Before 1918
「両大戦間」の前史にあたる19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパはベル・エポック(美しい時代)と呼ばれる平和と繁栄の時代を迎えました。
特にパリは芸術や文学、ファッションの中心地として栄え、街には多色刷りリトグラフのポスターや、アール・ヌーヴォー様式の優美な装飾があふれていました。
一方、フェリックス・ヴァロットンらが描いたように、貧富の差の拡大や列強諸国の軍事強化といった事象が、この華やかな時代の裏側に潜んでいました。
そして1914年に勃発した第一次世界大戦によって、ベル・エポックは終焉を迎えます。戦争は、本展で後に紹介するアーティストらに大きな衝撃を与えることになるのです。

<主な出品作家>
フェリックス・ヴァロットン、アンドレ・エレ、テオフィル・アレクサンドル・スタンラン、ジョルジュ・ルオー
E405-5439
フェリックス・ヴァロットン《ラ・ペピニエールのポスター》1893年、リトグラフ、当館蔵

E405-5440
シャルル・マルタン『スポーツと気晴らし』より、1923年刊、ポショワール、当館蔵

煌めきと戸惑いの都市物語
第2章では、都市をテーマとする版画やファッション雑誌、絵本などの印刷物から、新しい社会に対する期待と不安が入り混じった両大戦間のフランス、アメリカ、日本、ドイツ、ロシアの様相を見ていきます。
第一次世界大戦後の好景気に沸いたフランスとアメリカは、「狂騒の時代」と呼ばれる繁栄期を再び迎えました。当時のアーティストは、自動車や飛行機といった工業的なモチーフ、賑わうサーカスやキャバレー、最新のファッションをまとうモダンガールなどに着想を得て、現代への賛美ともいえる作品を手がけたのでした。
ファッションの発信地パリでは『ガゼット・デュ・ボン・トン』などの雑誌が次々と再刊され、直線や幾何学模様を特徴とするアール・デコのスタイルは海を越えて日本にも伝わっていきます。

一方、敗戦国ドイツでは1919年にワイマール(ヴァイマール)共和国が成立するも不安定な時代が続き、この時代にはドイツを中心に、戦争の惨禍を反映する作品や、享楽的な世相への皮肉、近代化に対する不安を表現する作品が生みだされました。マックス・ベックマンら戦争を経験したアーティストたちは都市の喧騒を客観的に見つめた作品を残しています。

1917年の革命を経て社会主義国家となったロシア(ソビエト連邦)では「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ばれる芸術表現の革新運動が展開されるも、国家統制により1930年代初めに終焉を迎えることとなります。

<主な出品作家>
ジョルジュ・バルビエ、ジョルジュ・ルパップ、シャルル・マルタン、ルイス・ロゾヴィック、マックス・ベックマン、エル・リシツキー、竹久夢二、藤田嗣治
E405-5442
ジョルジュ・バルビエ『ガゼット・デュ・ボン・トン』1924-25年第1号より、平版印刷、ポショワール、伊藤紀之氏コレクション

E405-5443
竹久夢二『婦人グラフ』より、1924刊、平版印刷、木版、当館蔵

E405-5444
ウラジーミル・アフメーチエフ『夏』より、1931年、平版印刷、当館蔵

E405-5448
マックス・ベックマン『年の市』より、1921年、ドライポイント、当館蔵

モダニズムの時代を刻む版画
第3章では、写真や映画が新しい表現として脚光を浴びた両大戦間に、旧来の表現媒体である版画を制作し続けたアーティストを、「抽象表現」「挿絵本文化」「シュルレアリスム」という3つのキーワードから紹介します。

この時期のヨーロッパでは、伝統的な写実主義と決別した抽象表現はモダニズムの最も主要な潮流で、こうした作品のイメージはしばしば版画を通して広まりました。
一方、挿絵本文化が花開いた同時代のパリでは、多くのアーティストが版画を制作し、エングレーヴィングなどの古典技法が注目を集めるようになります。

さらに1924年に誕生したシュルレアリスムは、人間の理性中心主義を否定して、文学や絵画、写真、版画など幅広い領域で、非合理的な無意識下の世界に目を向けました。

<主な出品作家>
ピエト・モンドリアン、フランティシェク・クプカ、ソニア・ドローネー、ジャン=エミール・ラブルール、アンドレ・デュノワイエ・ド・スゴンザック、マックス・エルンスト、マン・レイ、サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロ、長谷川潔
E405-5445
ピエト・モンドリアン《色面によるコンポジション No.3》1957年(原画1927年)、スクリーンプリント、当館蔵

E405-5447
フランティシェク・クプカ『黒と白の4つの物語のために』より、1926年、木版、当館蔵

E405-5449
ジャン=エミール・ラブルール《前線の小さな売り子たち》1917-21年(1921年以降の刷り)、エングレーヴィング、当館蔵

E405-5450
長谷川潔《カーネの水車小屋》1929年、メゾチント、当館蔵

 「両大戦間」を超えて:After 1939
エピローグでは、1939年の第二次世界大戦の勃発によるアーティストたちの変化や戦後の展開に焦点を当てます。フェルナン・レジェの『サーカス』には、戦争の遠い記憶と自然の再生への願いが込められています。

<主な出品作家>
エミール・ツビンデン、ジャン・フォートリエ、スタンレー・ウィリアム・ヘイター、イヴ・タンギー、アンドレ・マッソン、ルイーズ・ネヴェルソン、フェルナン・レジェ
E405-5446
フェルナン・レジェ『サーカス』1950年刊、リトグラフ、当館蔵


【展覧会概要】
企画展「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」
会期:2024年9月14日(土)~12月1日(日)
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1・2
住所:東京都町田市原町田4-28-1
開館時間:平日 10:00~17:00 / 土・日曜日、祝日 10:00~17:30
※入場はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(9月16日(月・祝)・23日(月・振)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・振休)は開館)、9月17日(火)・24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
観覧料:一般 800円(600円)、高校・大学生 400円(300円)、中学生以下 無料
※( )は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)、精神障がい者福祉手帳の所持者および付添者1名は半額
町田市立国際版画美術館公式サイト:https://hanga-museum.jp