肥後熊本藩細川家の家紋である九曜紋(くようもん)をテーマにした展覧会「Come on!九曜紋―見つけて楽しむ細川家の家紋―」が、9月23日(月・振)まで東京都文京区の『永青文庫』にて開催中です。
展示風景
細川家の下屋敷跡にあり、700年の歴史を誇る同家伝来の歴史資料や美術工芸品を保存、研究、公開している永青文庫。同館初となる家紋をテーマとした本展は、武器武具、調度品、染織品など、九曜紋があしらわれた大名道具を幅広く展示。細川家と九曜紋のかかわりを紹介する、永青文庫ならではの展覧会です
《細川綱利像》江戸時代(18世紀)永青文庫
束帯姿をした5代綱利の肖像。綱利は、わずか8歳で家督を相続し、その後長年に わたり熊本藩主を務めました。
束帯姿をした5代綱利の肖像。綱利は、わずか8歳で家督を相続し、その後長年に わたり熊本藩主を務めました。
九曜紋のルーツとは?
九曜紋とは、太陽、月を含む9つの天体を象徴する紋章で、古来より加護を願って用いられてきました。家紋として用いられる以外にも絵画や工芸品に表され、武士は自らの武器・武具に取り入れました。
細川家では、2代忠興(1563〜1645)が織田信長から九曜紋を拝領し、以降この紋を定紋(公式の場で用いる家紋)にしたといわれています。会場では、兜や陣羽織、香炉など、さまざまな場面で使用された九曜紋入りの品々が展示されており、それぞれの品が持つ歴史の物語に触れることができます。
展示の冒頭では、星の信仰に由来する軍配団扇や軍扇が紹介されています。
細川家では、2代忠興(1563〜1645)が織田信長から九曜紋を拝領し、以降この紋を定紋(公式の場で用いる家紋)にしたといわれています。会場では、兜や陣羽織、香炉など、さまざまな場面で使用された九曜紋入りの品々が展示されており、それぞれの品が持つ歴史の物語に触れることができます。
展示の冒頭では、星の信仰に由来する軍配団扇や軍扇が紹介されています。
(左から)《軍扇》江戸時代(17~18世紀)永青文庫《軍配団扇》 細川綱利所用 江戸時代(18世紀)永青文庫
九曜紋を纏う
江戸時代になると、家紋は名刺の役割を果たすようになります。
また、戦場において自身の存在を示す標識として重要視され、武器・武具に表されました。
会場では、兜、陣羽織、鞍・鐙、火縄銃などの武器武具や、戦場や公的な場で歴代当主が纏ったと思われる九曜紋があしらわれた品が紹介されています。
鞍覆は、鞍の上から鎧にかけて覆う馬具。 雨をしのぐ目的のほか、装飾としても使われました。
《九曜紋紫羅紗鞍覆》江戸時代(19世紀) 永青文庫 (熊本県立美術館寄託)
展示風景
九曜紋と暮らす
家紋は、武器・武具といった公的な場で用いた道具ばかりでなく、日々の暮らしを彩る調度品のなかにも表されました。
会場には、蒔絵や透かし彫りなどさまざまな技法を駆使して、九曜紋が効果的に配された、美術工芸品としても見ごたえのある品々が並んでいます。
展示風景
手前は婚礼調度のなかで最も重要な道具と位置付けられた貝桶。
手前は婚礼調度のなかで最も重要な道具と位置付けられた貝桶。
展示風景
貝桶に収められた378組の合貝の一部
なかには九曜紋だけでなく、他の文様と組み合わせたものもみられます。江戸時代中期以降、細川家では定紋(公式の場で用いる家紋)である九曜紋のほか、桐紋、引両紋、松蓋菱紋、桜紋あわせて5つの紋が同家のものと認識されていたと考えられています。なかでも桜紋には多くの種類があり、細川家ではハート形の花弁5枚に雄しべ、雌しべを表した「細川桜」が主に使われました。
右は鏡を立てかけるための折りたたみ式スタンド。 上下の板や脚に手の込んだ装飾が施され、透かし彫りの九曜紋と桜紋が配されています。
(右)《桜九曜紋透鏡立》永青文庫 (熊本県立美術館寄託)
《桜唐草九曜紋螺鈿料紙箱》江戸時代(18~19世紀) 永青文庫
小さな九曜紋
九曜紋は、刀装具(刀の外装、その部品)をはじめとする小品、掛軸・巻子の表装にいたるまで、さまざまな品に表されました。これは刀の外装に取り付ける一揃いの金具で、高度な彫金技術によって細かく丁寧に文様が表されています。ほかにも細部まで精巧に作られた小柄や目貫などの刀装具が紹介されています。
《二重唐草九曜紋揃金具》江戸時代(19世紀) 永青文庫
九曜紋を細部にあしらった作品は、作り手の技巧とともに、細川家において九曜紋が同家の象徴として大切にされてきたことを伝えています。その流れは今も続いており、展示室のカーテンにも九曜紋が付けられています。
(右)《七言絶句扇面》細川宣紀筆 江戸時代(17~18世紀)永青文庫
多彩な作品のあちこちに隠された九曜紋を見つけて楽しむ展覧会は、夏休みのおでかけにもおすすめです。会期中は、毎日先着30名に永青文庫オリジナルの「九曜紋うちわ」のプレゼントという特典も用意されています。
この機会に細川家の歴史と文化に触れながら、家紋がどのように武家のアイデンティティを形作り、戦場や日常生活においてどのように使用されていたか、学んでみてはいかかでしょうか。
永青文庫外観
【開催概要】
会期:2024年7月27日(土)~2024年9月23日(月・振)
会場:永青文庫
住所:東京都文京区目白台1-1-1
時間:10:00~16:30 (最終入場時間 16:00)
休館日:月曜日、8月13日、9月17日
※ただし8月12日、9月16日、9月23日は開館
観覧料:一般1,000円、シニア(70歳以上) 800円、大学・高校生 500円
※中学生以下、障害者手帳を提示の方及びその介助者(1名)は無料
永青文庫公式サイト:https://www.eiseibunko.com/
※展示室内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。
※展示室内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。