「超・日本刀入門 revive —鎌倉時代の名刀に学ぶ」展が、東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)にて8月25日(日)まで開催されています。

展示風景より ※会場内の写真はすべて許可を得て撮影したものです。
“日本刀の見方”入門の展覧会
刀剣を美の対象として鑑賞することは、遅くとも鎌倉時代後期には行われていたと考えられています。日本刀は、約1,000年にわたるその歴史のなかで、武器として用いられるとともに、美術品として鑑賞されてきました。
静嘉堂文庫美術館は約120振の刀剣を所蔵しています。コレクションは鎌倉時代から室町時代までの古刀が多く、歴史の重みを感じさせる優れた名刀が揃っています。そうした充実のコレクションの中から、選りすぐりの日本刀をまとめて紹介するのが、今回の展覧会です。

日本刀好きの方はもちろん、日本刀のことをよく知らないという方も大丈夫。「入門」のタイトルどおり、太刀・刀・脇差といった刀剣の種類や、刀の姿や各部位の名称などがわかりやすく展示パネルなどで紹介されています。
刀剣ごとの特徴を記したキャプションもついているので、見どころを確認しながら、実物と見比べて鑑賞することができます。

展示風景より
「押形」という、刀剣の形状を写しとった刀の拓本のようなものも展示されています。ライティングがきれいなので、刃文(刃にある白い波のような部分のこと)も良く見えます。この機会にさまざまな角度からじっくり鑑賞してみましょう。
日本刀の種類や主要な産地を紹介
日本刀は、直刀・太刀・刀・脇指・短刀剣・薙刀・槍 と大きく8種類に分けられます。展示では、そのうち、太刀・刀・脇指・短刀・槍を紹介。

長船勝光・宗光《槍 銘 備前國住長舩勝光宗光備中於草壁庄作/ 文明十八年十二月拾三日》室町時代・文明18年 (1486)

長船勝光・宗光《槍 銘 備前國住長舩勝光宗光備中於草壁庄作/ 文明十八年十二月拾三日》室町時代・文明18年 (1486)
日本刀は改造されることがしばしばありますが、太刀から短くつくり直した「磨上げ」と呼ばれる刀も展示されています。

長船長義《太刀 (金象嵌銘) 長義》南北朝時代(14世紀) 備前長船の刀工による刀は、磨上げされても大太刀の風格が感じられます。
刀剣の産地や地域による違いも詳しく紹介されています。
平安時代以降、江戸時代末期までの刀剣は、慶長初年 (1596) を境に、「古刀」 と 「新刀」 と呼び分けられます。
平安時代以降、江戸時代末期までの刀剣は、慶長初年 (1596) を境に、「古刀」 と 「新刀」 と呼び分けられます。
鎌倉時代以降、刀剣の生産は東北から九州までの各地域で行われますが、山城・大和・相模 (相州) ・備前・美濃は、古来刀剣の五大産地として知られています。会場ではこのうち美濃をのぞく4か国と、九州・筑前の刀が展示されています。

「2章 日本刀のいずるところ」展示風景より
備前国は平安時代から現代まで最も多くの刀工を輩出し、作刀数においても群を抜く 「刀剣王国」 として知られています。本作は、備前を代表する刀工集団の一つ長光による作品。

長船長光《太刀 銘 長光》鎌倉時代 (13世紀)、附《黄金造桐紋蒔絵鞘糸巻太刀拵》江戸時代(19世紀)
各地の伝法を受け入れながら独特の作風を生み出してきた、古刀期の九州・筑前の刀は、古い九州物に共通するねっとりとするような地鉄(じがね、刀身の黒っぽい部分に現れる模様のこと)が特徴です。

筑前西蓮《短刀 銘 西蓮》鎌倉時代・13~14世紀 、附《黒蠟色塗鞘合口拵》昭和時代(20世紀)
国宝・重要文化財の刀剣9件を一挙公開
本展では、静嘉堂コレクションの中から、国宝・重要文化財の9振すべてが出品されています。
国宝は手掻包永(てがいかねなが)の《太刀 銘 包永》。手搔包永は、大和手搔派の祖。奈良東大寺の転害門前に住んでいたとされます。700年以上の時を超えて伝わる大和物を代表する名作です。

【国宝】 手掻包永《太刀 銘 包永》 鎌倉時代(13世紀)、附《菊桐紋蒔絵鞘糸巻太刀拵》 江戸時代(18~19 世紀)
拵(こしらえ)とは、刀を収める鞘(さや)や柄(つか)、柄を握った時に手がすべらないようにとつける鍔(つば)などを総合した刀の外装のことをいいます。今回の展覧会では、刀だけでなく一部はきらびやかな拵もあわせて展示されています。華やかな中にも細かい点までこだわりが感じられる拵もあわせてチェックしてみてください。

【国宝】 手掻包永《太刀 銘 包永》 鎌倉時代(13世紀)
「3章 きら星のごとき名刀たちー館蔵の重要文化財」展示風景より
戦国武将の刀剣
相模の刀工・新藤五国光は、相州伝の始祖とされています。本作は、短刀の名手とされる国光の貴重な太刀。生ぶ(うぶ、制作当初の姿を保っていること)の完存した姿である点においても貴重です。
戦国武将の刀剣
長い歴史を経て今に伝わる刀剣は、美術品としての美しさ、形の面白さだけでなく、所持した歴史上の人物と名刀との逸話も、魅力のひとつといえるでしょう。静嘉堂は織田信長ゆかりの刀や、豊臣秀吉の形見といった、名だたる戦国武将の名刀も所蔵しています。
これは織田信長が、重臣で織田四天王のひとり、滝川一益に与えたとされる太刀です。附帯する華やかな朱鞘の打刀拵は、戦国時代末期の様式を伝える希少な作例。拵に織田家の家紋と将軍・足利義昭より拝領した桐の紋が入っていることから、信長の注文で作られたものと考えられています。
こちらは上杉景勝に仕えた直江兼続が、豊臣秀吉の形見として賜ったもの。兼続が亡くなった後に妻から上杉家へ献上されたため、号に「後家」と付けられました。

伝 長船兼光《刀 大磨上げ無銘<号 後家兼光>》南北朝時代(14世紀)、附《芦雁蒔絵鞘打刀拵》明治時代(19世紀)
ホワイエでは、室町時代の将軍家に仕えた金工・後藤家の刀装具も紹介されています。
小さな画面に12支の動物や、仲良く戯れるかわいい犬のようすなどが表現され、室町時代の超絶技巧ともいえるような精緻で美しい世界が楽しめます。
重要文化財《木造十二神将立像》も
鎌倉時代を中心とする名刀の特集にあわせて、鎌倉武士たちに支持された、慶派仏師による作とされる《木造十二神将立像》のうち静嘉堂所蔵の7躯も公開されています。生き生きとした力強い作風の像は、京都の名刹・浄瑠璃寺の薬師如来坐像の眷属(けんぞく、主尊に付き従う存在)として制作されたものと伝わります。

展示風景より、【重要文化財】《木造十二神将立像》
像の表面を覆う精緻な截金(きりかね)などの装飾や、豊かでユニークな表情、そして頭上のかわいい干支の動物もお見逃しなく。

展示風景より、【重要文化財】《木造十二神将立像》
出品される全ての刀剣がスマートフォンで撮影OK!
今回は、出品される全ての刀剣がスマートフォンで撮影できます。
また出品作品のカラー図版を見開きで掲載した、豪華版の図録もミュージアムショップで販売中。事前の勉強に、鑑賞後の振り返りにも役立つ1冊です。
また出品作品のカラー図版を見開きで掲載した、豪華版の図録もミュージアムショップで販売中。事前の勉強に、鑑賞後の振り返りにも役立つ1冊です。
音声ガイドは、「刀剣乱舞ONLINE」にて「後家兼光」役を演じる声優、福山潤さんが担当。
刀剣男士「後家兼光」の等身大パネルも会場に登場しています。

この夏、見逃せない刀剣の名品が、初めて静嘉堂@丸の内で一堂に会します。この機会に日本刀の奥深い世界を味わってみませんか。
【展覧会概要】
展覧会「超・日本刀入門 revive —鎌倉時代の名刀に学ぶ」
会期:2024年6月22日(土)~8月25日(日)
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館 1F
開館時間:10:00~17:00
※毎週土曜日は18:00閉館、第3水曜日は20:00閉館
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(8月12日(月・振)は開館)
入館料:一般 1,500円、高校・大学生 1,000円、中学生以下 無料
静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)ホームページ:https://www.seikado.or.jp/