幕末の探検家でコレクターの松浦武四郎と幕末から明治期に活躍した絵師・河鍋暁斎の交流とその活動を紹介する展覧会「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」が静嘉堂@丸の内にて、6月9日(日)まで開催中です。
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北海道の名づけ親としても知られている武四郎は、生涯に6度、蝦夷地探査を実施しました。
これは箱館奉行の命で調査後に刊行した詳細な蝦夷島・国後島・択捉島の地図(原本の一部はGallery1に展示)の複製。この武四郎の仕事を象徴する地図の上を歩くこともできます。
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また、武四郎は全国各地を旅して、骨董品のほか奇石や古銭、勾玉(まがたま)を収集していました。さらに、集めたコレクションを解説した『撥雲余興(はつうんよきょう)』という図録を出版します。この時に挿絵を依頼したのが暁斎などの絵師でした。

幕末に生まれ、早熟かつ天才的な画力から「画鬼」と呼ばれた河鍋暁斎と武四郎は、近くに住んでいて明治の初め頃から交流がありました。本展では、武四郎の古物コレクションの実物と『撥雲余興』の記述が並べて展示されていて、古物が暁斎の筆でどのように表現されているのかを確かめることができます。

斗とは、取っ手と三つの足がついた片口の酒器。西周時代の形式のものですが、これは 清時代の模倣作。
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「燋斗」清時代(17~18C)  (公財)静嘉堂 

口が開くちょっと不気味な猿の面。暁斎は原寸大でリアルに表現しています。
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上:「老猿面」年代不詳  (公財)静嘉堂 

暁斎と武四郎はともに天神 (菅原道真) と観音を篤く信仰していました。会場では、天神信仰を中心に武四郎が集めた祈りの造形を紹介。 また暁斎が日課として描いていた天神像や、天神様の表象の一種といわれる野見宿禰を描いた絵馬なども展示されています。
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河鍋暁斎「野見宿禰図」明治17年(1884)松浦武四郎記念館 

武四郎が蒐集した多数の天神像も展示、土佐派「社壇天神像」は初公開、「渡唐天神像」は修理後初公開。渡唐天神または渡宋天神は、梅の枝を持った菅原道真が、 夢の中で中国に渡り、無準師範に参禅して教えを会得した姿を描いたものです。
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展示風景より

本展の最大の見どころ「武四郎涅槃図」は、武四郎を釈迦に見立てた変わり涅槃図。横たわる武四郎の胸には自慢の大首飾り、腰に愛用の煙草入れを付けています。
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(中央)河鍋暁斎 重要文化財「武四郎涅槃図」明治19年(1886)松浦武四郎記念館

涅槃図に描かれた武四郎旧蔵の古物は、松浦家と静嘉堂に35点現存しており、今回この古物と涅槃図が一堂に集結。立体的に再現された「武四郎涅槃図」を見ることができます。
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勾玉や水晶など総数243点の玉をつなげた武四郎自慢の「大首飾り」縄文時代~近代  (公財)静嘉堂 

武四郎は次々新たに入手した古物を描き加えよと注文。 暁斎は足かけ6年かけて、それぞれの古物の特徴を捉えながら、武四郎を中心とした理想郷のような光景を描きました。

武四郎が集めた古物は、エジプト新王国時代(紀元前14世紀)の「シャブティ」や重要文化財の絵画など、文化財としても価値があるものですが、お酒を飲んで眠る「妙楽菩薩塑像」、富士を眺めているような「西行法師坐像」、笑顔の「鉄製大黒像」など、造形を眺めているだけでも結構楽しい作品が並んでいます。展示作品と同じような構図の狩野派の絵画も涅槃図に描かれています。
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展示風景より

武四郎の趣味趣向がかいまみえる古物が、暁斎の手によってどのように表現されているか、この機会に見比べながら確認してみてはどうでしょうか。単眼鏡をお持ちでしたらご持参をおすすめします。さらに詳しく知りたい方は、ミュージアムショップにて販売中の『徹底分析「武四郎涅槃図」』に、鑑賞の手引きとして役立ちます。
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展示風景より

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展示風景より

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展示風景より

ほかにも同館所蔵の暁斎の代表作の一つ「地獄極楽めぐり図」が全場面展示(会期中場面替えあり)。
最後の展示室では、同館の誇る国宝「曜変天目」も展示されるなど見どころの多い展覧会です。さらに武四郎の親友・川喜田石水や、三菱第四代社長で静嘉堂初代理事長の岩﨑小彌太との縁についても触れ、暁斎と武四郎、そしてふたりを支えた人びとの“古物に対する情熱”が感じられる展覧会です。

展示の見どころについてはこちらもご覧ください。

展覧会概要
特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」
会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)
場所:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-2-1 明治生命館 1階
開館時間:10:00~17:00
※土曜日は 18:00、第4水曜日は20:00 閉館
※入館締切は閉館時間の30分前
休館日:月曜日、5月7日(火)
※ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館
入館料:一般 1,500円、大高生 1,000円、中学生以下無料
静嘉堂文庫美術館ウェブサイト(展覧会紹介ページ):https://www.seikado.or.jp/exhibition/current_exhibition/