生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI ─ 密教のルーツとマンダラ世界」が、奈良国立博物館(以下、奈良博)東・西新館にて6月9日(日)まで開催中です。
本展は、国宝約28件、重要文化財約59件を含む密教の名宝の数々で、空海が日本にもたらした密教の全貌を解き明かすとともに、空海の教えを残された史料で読み解き、さまざまな角度から空海密教の実像に迫ります。
本展は、国宝約28件、重要文化財約59件を含む密教の名宝の数々で、空海が日本にもたらした密教の全貌を解き明かすとともに、空海の教えを残された史料で読み解き、さまざまな角度から空海密教の実像に迫ります。
開幕前日の内覧会を取材しましたので、そのようすをお伝えします。
展示風景より、(手前)【重要文化財】《大⽇如来坐像》平安時代 仁和3年(887)頃 和歌山・金剛峯寺
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密教の世界観を展示空間に立体的に再現
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密教とは、文字や言葉では伝えられない深く秘された仏の教えのこと。
中国・唐に渡り密教を学んだ空海は、「密教は深遠で文字では伝えにくい。それで図、絵で示すのだ」といったようなことを述べ、”目で見てわかる”密教を目指しました。
このため展示の冒頭では、密教のマンダラ世界を立体的に再現。空海が思い描いた密教の世界観を体感することができます。
京都・安祥寺の国宝《五智如来坐像》は、5軀が揃って伝わる最古の五智如来像です。
この像は、密教の世界の中心にいる大日如来とそれを取り囲む4体の仏像たちで構成されており、密教における5つの知恵「五智」を表しています。
会場では、この《五智如来坐像》を中心に、重要文化財《大日如来坐像》(和歌山・金剛峯寺)、重要文化財《不動明王坐像》(和歌山・正智院)、両界曼荼羅などが配置され、マンダラの世界が広い空間にダイナミックに再現されています。
会場では、この《五智如来坐像》を中心に、重要文化財《大日如来坐像》(和歌山・金剛峯寺)、重要文化財《不動明王坐像》(和歌山・正智院)、両界曼荼羅などが配置され、マンダラの世界が広い空間にダイナミックに再現されています。
(手前)【重要文化財】《不動明王坐像》平安時代(9世紀) 和歌山・正智院
(左奥)インドから日本にいたる、真言密教の教えを伝えた8名の祖師の肖像画。一番左が空海。《真言八祖像》鎌倉時代(14世紀)奈良・室生寺 前期展示
マンダラとは、仏や菩薩などの仏像を体系的に配置して描き、密教独自の宇宙世界を表したもの。
そして《両界曼荼羅》は、「胎蔵界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」という、胎蔵界・金剛界の両界を描いた2幅によって構成されています。
前期展示の重要文化財《両界曼荼羅(血曼荼羅)》は彩色本の原図曼荼羅としては現存最古のもの。その前に置かれているのは、密教の儀式で使うお祈りの道具である重要文化財《両部大檀具》です。
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密教のルーツを紹介
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密教の根本経典とされるのが『大日経』と『金剛頂経』です。
大日如来の慈悲と悟りの世界を説く『大日経』と、悟りを得て仏と成る実践方法を説く 『金剛頂経』 は、インドからそれぞれ別のルートを通ってインドから中国へと伝わりました。 この2つの流れを融合し、現在の密教へとつながる形に体系化したのが、空海の師・恵果です。空海は恵果から密教のすべてを授かり、日本へと伝えました。
大日如来の慈悲と悟りの世界を説く『大日経』と、悟りを得て仏と成る実践方法を説く 『金剛頂経』 は、インドからそれぞれ別のルートを通ってインドから中国へと伝わりました。 この2つの流れを融合し、現在の密教へとつながる形に体系化したのが、空海の師・恵果です。空海は恵果から密教のすべてを授かり、日本へと伝えました。
本展では、これまであまり紹介されることがなかった海のシルクロードを経由する伝来ルートにも着目。密教の伝来の道のりをたどります。
会場では、奈良博の公式キャラクター「ざんまいず」が、わかりやすく展示をナビゲート。
インドネシア国立博物館が所蔵する《金剛界曼荼羅彫像群》は、同国のジャワ島東部にある寺院の遺跡からまとまったかたちで発見された10世紀ごろのもの。インドネシアに密教が伝わっていたことを示す重要な品です。本展のため奈良博の協力によって修理され、日本で初めて紹介されます。
《金剛界曼荼羅彫像群》インドネシア・東部ジャワ期(10世紀) インドネシア国立中央博物館
ほかにもインドネシアで出土した《文殊菩薩坐像》や、《銅五鈷杵》など、日本のものとは少し異なるインドネシア国立中央博物館所蔵の貴重な品々を見ることができます。
空海の入唐と密教との出会い
===========================展示の後半では空海の生涯や活動について、ゆかりの品々を通して紹介します。
讃岐国に生まれた空海は、遣唐使として中国・唐にわたり密教の師である恵果と出会います。
恵果は、 空海を見込んで密教のすべてを伝授。空海はそれを3か月でマスターし、もともとの留学期間は20年でしたが2年で帰国しました。
空海は多くのものを帰国時に持ち帰っています。請来した品々と修学の経緯と内容を記したのが国宝《弘法大師請来目録》。この目録に記載の、真言宗の祖師から恵果へ伝えられたと考えられる法具も今回展示されています。
【国宝】《金銅密教法具》中国・唐(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
ほかにも華やかな造りが目を引く国宝《錫杖頭》(香川・善通寺)、唐代美術の傑作で、空海が身近に置いて大切にしていたと伝わる国宝《諸尊仏龕》(和歌山・金剛峯寺)など、空海が唐から持ち帰った中国・唐の密教文化を伝える遺品が多数紹介されています。
【国宝】《錫杖頭》中国・唐(9世紀) 香川・善通寺
【国宝】《諸尊仏龕》中国・唐(7〜8世紀)和歌山・金剛峯寺
唐で密教を学んだ空海が見たかもしれない、中国・盛唐期の大理石像の一級文物《文殊菩薩坐像》(中国・西安碑林博物館)も展示。この作品のみ写真撮影もOKです。
《文殊菩薩坐像》中国・唐(8世紀) 中国・西安碑林博物館
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空海プロデュースの国宝「高雄曼荼羅」230年ぶりの修理後初の一般公開
===================================帰国した空海は、神護寺(京都)を拠点に密教を広め、多くの僧侶たちが密教を学ぶようになりました。また朝廷の信頼を得た空海は、平安京の東寺を任され、密教による護国の役割も期待されていきました。
本展の注目作品のひとつは、空海が中国・唐で師匠の恵果から授けられた曼荼羅の図様をもとに描かれたと考えられる、神護寺蔵の国宝《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)》。
両界曼荼羅としては国内最古で、今に伝わるの曼荼羅うち、 空海が制作に関わったのはこの高雄曼荼羅のみという唯一無二のものです。
両界曼荼羅としては国内最古で、今に伝わるの曼荼羅うち、 空海が制作に関わったのはこの高雄曼荼羅のみという唯一無二のものです。
【国宝】《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)》のうち胎蔵界 平安時代(9世紀)京都・神護寺 前期展示
「胎蔵界曼荼羅」と「金剛界曼荼羅」の2幅からなり、いずれも約4メートル四方の大きさを誇ります。2016年から6年間にわたって行われた修理事業で、金銀泥であらわされた仏や菩薩のすがた、花鳥文がはっきり見やすくなりました。本展は修理後初の一般公開となります。
【国宝】《両界曼荼羅(高雄曼荼羅)》のうち金剛界(部分) 平安時代(9世紀)京都・神護寺 後期展示
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帰国後の空海の活躍
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中国から帰国した空海は、 密教の教えを広めるために積極的に活動します。神護寺で活動の後、朝廷の信頼を得て、 東寺の運営も任されることになります。
前期では京都・東寺に伝わり鮮やかな色彩が残る平安時代の国宝《両界曼荼羅(西院曼荼羅<伝真言院曼荼羅>)》も展示されています。
【国宝】《両界曼荼羅(⻄院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)》平安時代(9世紀)京都・教王護国寺(東寺) 前期展示空海は語学や建築にも通じた天才であったといわれますが、 書の名手でもあり、この時代の最も秀でた3名(三筆) の一人と称されています。
会場では、 仏教の教えの素晴らしさを説く国宝《聾瞽指帰》(和歌山・金剛峯寺)や、空海が最澄に宛てた手紙である国宝《風信帖》(京都・教王護国寺(東寺))、密教の伝授儀礼、灌頂を受けた人々の名薄である国宝《灌頂歴名》 (京都・神護寺) など、空海直筆の書も多数展示されています。
会場では、 仏教の教えの素晴らしさを説く国宝《聾瞽指帰》(和歌山・金剛峯寺)や、空海が最澄に宛てた手紙である国宝《風信帖》(京都・教王護国寺(東寺))、密教の伝授儀礼、灌頂を受けた人々の名薄である国宝《灌頂歴名》 (京都・神護寺) など、空海直筆の書も多数展示されています。
【国宝】《聾瞽指帰 下巻》平安時代(8~9世紀) 和歌山・金剛峯寺 前期展示
仏教界において、重要な役割を担うようになっていった空海。その一方で自然の中で心静かに修行したいという望みを持ち続けていました。
展示の最後では、高野山に伝わる空海にまつわる品々や、今も続く弘法大師・空海に対する信仰を紹介しています。
仏教界において、重要な役割を担うようになっていった空海。その一方で自然の中で心静かに修行したいという望みを持ち続けていました。
展示の最後では、高野山に伝わる空海にまつわる品々や、今も続く弘法大師・空海に対する信仰を紹介しています。
空海ゆかりの絵をもとに制作されたという快慶作【重要文化財】《孔雀王坐像》鎌倉時代 正治2年(1200)頃 和歌山・金剛峯寺
展覧会特設ショップでは、出品作品をモチーフにしたさまざまなオリジナルグッズが用意されています。こちらもぜひチェックしてみてください。
※文中、展示期間の記載のない作品は通期展示
【開催概要】
名称:生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI-密教のルーツとマンダラ世界」
会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)※会期中、一部作品の展示替えあり
<主な展示替え>
前期展示:4月13日(土)~5月12日(日)、後期展示:5月14日(火)~6月9日(日)
前期展示:4月13日(土)~5月12日(日)、後期展示:5月14日(火)~6月9日(日)
休館日:毎週月曜日、5月7日(火)
※ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30 分前まで
会場:奈良国立博物館 東・西新館
観覧料:当日一般2000円(1800円)高大生1500円(1300円) 中学生以下無料 ※( )は20名以上の団体
展覧会公式サイト:https://kukai1250.jp/