2024年4月2日(火)~5月26日(日)の期間、京都国立近代美術館にて「没後100年 富岡鉄斎」が開催されます。
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富岡鉄斎《空翠湿衣図》40歳代 清荒神清澄寺 鉄斎美術館
※展示期間:4/2~4/14、4/16~4/29

富岡鉄斎(1836-1924)は、幕末、京都の商家に生まれ、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に、神道、仏教等の諸学を広く学びつつ、同時に南宗画、やまと絵等をはじめ多様な流派の絵画も独学しました。

鉄斎は、何を描くにもまず対象の研究に努め、全国各地を旅して、各地の風景や理想の山水を描き出しました。深い学識に裏付けられ、人間の理想を説いた彼の絵画は、画壇の巨匠たちから敬われ、京・大阪の町の人々に広く親しまれただけではなく、新世代の青年画家たちからも自由で大胆な新しい表現で注目され、生前から今日まで国内外で高く評価されてきました。

本展では、名作として繰り返し取り上げられてきた作品はもちろん、これまで紹介される機会の少なかった作品や、近年になって再発見、あるいは新たに見出された作品なども紹介。また、京都御所の近くに住んでいた彼の書斎(画室)を彩っていた文房具や筆録(旅行記や研究用メモ)等も取り上げ、彼の画業と生涯をあらためて振り返ります。

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代表作を多数展示
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本展では、鉄斎の画業を初期から晩年までの代表作を一挙公開。初期作品の繊細な美しさ、50歳代の作品の力強さ、60歳代の作品の円熟、そして70歳代から80歳代にかけてさらに自由奔放に展開した晩期の作品と、彼の画風の変遷をたどることができます。
六曲屏風一双の大作《富士山図》、《妙義山図・瀞八丁図》、《富士遠望図・寒霞渓図》、《阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図》(重要文化財)や、掛軸の《三津浜漁市図》、《菟道製茶図・粟田陶窯図》双福、《嫦娥奔月図》、《碧桃寿鳥図》、《瀛洲仙境図・西王母図・福禄寿図》三幅対など、鉄斎の画業を語るうえで欠かすことのできない作品が多数展示されます。
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富岡鉄斎《菟道製茶図・粟田陶窯図》1869年 34歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館

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富岡鉄斎《三津浜漁市図》1875年 40歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館

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富岡鉄斎《富士山図》1898年 63歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館


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富岡鉄斎《富士遠望図・寒霞渓図》1905年 70歳 京都国立近代美術館

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富岡鉄斎《妙義山図・瀞八丁図》1906年 71歳 布施美術館

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富岡鉄斎《嫦娥奔月図》1923年 88歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館

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富岡鉄斎《福内鬼外図》1924年 89歳 清荒神清澄寺鉄斎美術館

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これまであまり取り上げられてこなかった作品も紹介
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一般に公開されたことのない《土神建土安神社図・椎根津彦像・平瓫図》三幅対や、初期の屏風《山水図》、50年振りの公開となる《渉歴余韻冊》など、これまでの鉄斎展では見ることができなかった作品も紹介されます。

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鉄斎の日常空間を彩った貴重な品々も紹介
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絵画制作と読書に日々励んでいた鉄斎の画室に置かれていた硯や墨、筆、絵具、絵具皿、机など、遺愛の品々も多数展示。彼の関心の広さを通じて彼の交友関係をもうかがいます。
松花堂昭乗の墨や、池大雅の筆、青木木米が制作した硯など貴重なものも多く、襖に用いられていたのは岡田(冷泉)為恭の絵。旧蔵の書籍の中には、池大雅の旧蔵本や小田海僊の旧蔵書画も含まれます。また、鉄斎の膨大な印章コレクションの中から、彼の印譜《鉄老斎印景》に載るものを中心に120顆が展示されます。

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書の名作にも注目
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鉄斎は生前、書家としても親しまれていました。今回の展覧会では、二曲屏風一双の大作《雪・月・花・茶詩書》のほか、親しくしていた画家の今尾景年のため揮毫した《養素斎書》、陶芸家の四代清水六兵衛に捧げた《四代清水六兵衞宛弔辞》など、書の名作も紹介されます。
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富岡鉄斎《勾白字詩七絶》60歳代 清荒神清澄寺鉄斎美術館

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京都会場のみ公開の作品も多数
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本展は、京都国立近代美術館のあと富山県水墨美術館、碧南市藤井達吉現代美術館へ巡回しますが、鉄斎作品の所蔵者が京都周辺に集中していることもあり、京都会場でしか公開されない作品も多数あります。《妙義山図・瀞八丁図》、《阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図》(重要文化財)、《雪・月・花・茶詩書》、《蜃楼海市図》などは京都会場のみの展示となります。
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富岡鉄斎重要文化財《阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図》1914年 79歳 公益財団法人辰馬考古資料館

文人画というと、何か難しい世界のように思われがちですが、鉄斎の生きた時代には縁起物として都市の商人たちの間で親しまれていたともいわれます。
2024(令和6)年末が、鉄斎没後100年を迎えることを記念して開催される本展は、京都では27年振りに開催される展覧会。この機会に「最後の文人画家」鉄斎の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。


開催概要
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【展覧会名】 没後100年 富岡鉄斎
【開催期間】 2024年4月2日(火)~5月26日(日)*会期中に一部展示替えがあります
 第一期 4月2日~4月14日/第二期 4月16日~4月29日
 第三期 5月1日~5月12日/第四期 5月14日~5月26日
【開館時間】 午前10時~午後6時 金曜日は午後8時まで開館 *入館は閉館の30分前まで
【休  館 日】 月曜日(ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
【観  覧 料】 一般1,200円(1,000円)、大学生500円(400円)
※( )内は前売と20名以上の団体及び夜間割引(金曜午後6時以降)
※本料金でコレクション展も観覧可。
※前売券は4月1日(月)までの限定販売。
【会 場】 京都国立近代美術館[岡崎公園内](〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町)
[京都国立近代美術館公式HP] https://www.momak.go.jp/