水木しげる生誕100周年記念「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」が、横浜・そごう美術館にて3月10日(日)まで開催中です。
水木しげるの妖怪が横浜に大集結
水木さんの生誕100周年を記念して開催される「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 ~お化けたちはこうして生まれた~」は、水木の貴重な妖怪画の原画100点以上を展示するほか、水木さんが妖怪画を描く参考として収集した書籍や関連資料なども展示し、彼の描いた妖怪たちが生まれた背景をひもときます。
会場では、「水木しげるの妖怪えほん」など展覧会用に特別に編集された映像も上映。さらに妖怪への思いを語った水木さんのインタビュー映像などを通して、現代の日本人に「妖怪」という文化を根付かせた水木さんが、どのように妖怪と向き合い、描いてきたのかをさまざまな角度から紹介します。
会場入口で迎えてくれるのは、大きな口が特徴な「べとべとさん」。
水木しげるの「妖怪人生」を紹介
なぜこれほどまで水木さんは妖怪にこだわり続けたのでしょうか。展示の最初では彼が妖怪に興味を持ったきっかけから、日本を代表する漫画家として活躍するまでの人生をたどります。
近所に住んでいたお婆さんからお化けや不思議な話を聞いて、妖怪に興味を持つようになった鳥取・堺港の幼少時代、 左手を失う大怪我をした戦争中にラバウルで体験した不思議な現象、奇跡的に生還後、紙芝居作家、貸本漫画家を経て、独自の妖怪画スタイルを確立し、人気漫画家へ上り詰めた時代と、生い立ちから、妖怪たちを生み出すに至った背景を、水木さんの漫画を用いながらパネルでわかりやすく紹介しています。
展示の最後のほうに登場する「ぬりかべ」は、従軍中に南方戦線で水木さんが体験した不思議な現象のひとつでした。今回撮影スポットになっていますので、記念撮影はいかかでしょうか。

「ぬりかべ」Ⓒ水木プロダクション
水木しげるの蔵書でたどる妖怪文化の歴史
水木さんは神田の古書店街を頻繁に訪れ、妖怪に関する書籍を探して研究、制作につなげていました。

妖怪関連資料がズラリと並ぶ会場風景 Ⓒ水木プロダクション
展示では、妖怪画を描くきっかけになった江戸時代の絵師・鳥山石燕(とりやま せきえん)の『画図百鬼夜行』、昭和初期の民俗学者・柳田國男の『妖怪談義』など、水木さんの創造力を刺激した妖怪関係資料を初公開!

水木さん自身が所蔵していた妖怪関係資料の展示 Ⓒ水木プロダクション
さらに妖怪を手がけた絵師や研究者など妖怪文化人として、浮世絵師の葛飾北斎や、『怪談』を書いた小説家の小泉八雲などが紹介されています。ここにはありませんが、明治から昭和期に活躍した妖怪好きの建築家、伊東忠太もその一人かもしれません。
妖怪画の創作手法を初めて紹介
晩年までに1,000点近くの日本の妖怪を描いたという水木さん。
展示では、昔の絵師による妖怪画や民間伝承、さらにはさまざまな資料を駆使して妖怪の実在感を出してきた彼の創作手法を、「絵師たちからの継承」「様々な資料から創作」「文字情報から創作」の3つに分けて紹介します。
展示では、昔の絵師による妖怪画や民間伝承、さらにはさまざまな資料を駆使して妖怪の実在感を出してきた彼の創作手法を、「絵師たちからの継承」「様々な資料から創作」「文字情報から創作」の3つに分けて紹介します。

中央は巨大な顔だけを現す妖怪「大かむろ」Ⓒ水木プロダクション
水木さんは昔の絵師が描いた形のある妖怪は、そのデザインを尊重しつつ、さらに豊かなものに発展させました。妖怪の実在感を出すために、家や里、山、水辺などの背景を緻密に描き、そこに、驚いた人物を加えたりするなど、妖怪が出現する場所や状況が伝わるように工夫をしています。
妖怪というと、ちょっと怖いイメージがありますが、展示作品の中の妖怪は、どこか愛らしく、ちょっとユーモラス。夕方の忙しい時間に勝手に人の家にあがりこんでお茶を飲んだりしてくつろぐという「ぬらりひょん」には、思わず笑ってしまいました。

「絵師たちからの継承」のコーナー Ⓒ水木プロダクション
水木さんはリアルな妖怪を描くため、さまざまな資料を集めていました。葛飾北斎や歌川国芳などの江戸時代の浮世絵師の絵のほか、一見妖怪とは関係なさそうな民芸品、淡水に生息するクラゲ、郷土芸能の仮面、 アラスカの先住民が作成したアザラシのイヌア (万物に存在する精神、魂のようなもの)のデザインなどからも着想を得ていたそうです。

「様々な資料から創作」のコーナー Ⓒ水木プロダクション
伝承で伝わってはいるものの、姿かたちは描かれていない妖怪たちは、柳田國男の 『妖怪談義』 などからヒントを得て妖怪のイメージをつかみ、そこに水木さん独自の工夫を加えて、それまで言葉や文章だけで形のなかった妖怪たちに姿を与えました。
会場には、妖怪関連資料のほか、妖怪がいそうな木陰や水辺、山林の景色の写真などを貼り付けたスクラップブックなど、水木さんの創作の土台になった資料も展示されています。

「様々な資料から創作」のコーナー Ⓒ水木プロダクション
伝承で伝わってはいるものの、姿かたちは描かれていない妖怪たちは、柳田國男の 『妖怪談義』 などからヒントを得て妖怪のイメージをつかみ、そこに水木さん独自の工夫を加えて、それまで言葉や文章だけで形のなかった妖怪たちに姿を与えました。
会場には、妖怪関連資料のほか、妖怪がいそうな木陰や水辺、山林の景色の写真などを貼り付けたスクラップブックなど、水木さんの創作の土台になった資料も展示されています。
中央は『妖怪談義』に記された文章と郷土芸能の仮面をヒントに創作された「児啼爺」Ⓒ水木プロダクション
会場では、水木さんの言葉も作品とともに紹介され、日頃どのようなことを思いながら作品を創り上げて来たのかを垣間見ることができます。
「妖怪はほんらい、怪獣なんかのように創作されるべきではないと思う。妖怪は、昔の人の残した遺産だから、その型を尊重し、後世に伝えるのがよい。」「妖怪なんでも入門」(小学館)
「妖怪の姿形については、昔から形の定まっていると思われるものはそれに従い、文章だけで形のないものはぼくが作った。しかしそれはあくまでも祖霊たちが「うん、それでよろしい」と言うような形にしておいた。祖霊たちがイエスかノーかは、形を作るときイエスの場合は心静かであり、ノーの場合はなんとなくドキドキして落ち着かない。」『水木しげるの妖怪事典』東京堂出版)
貴重な妖怪画の原画約100点が勢ぞろい
会場では、水木さんが描いてきた妖怪画の原画のうち約100点を、山、水、里、家の4つの場所に分けて一挙公開。隅々まで丁寧に描き込まれた妖怪画をたっぷり楽しめる、ファンにとっては夢のような空間です。「水のコーナー」では、コロナ禍で有名になった「アマビエ」にも出会えます。

Ⓒ水木プロダクション
画像や本ではわかりにくい建物や道具や、妖怪の細かい部分なども原画ではじっくりと鑑賞可能できます。また作品からは日本の暮らしに古くから根づき、その存在が信じられ、語り継がれてきた妖怪文化を感じ取ることもできそうです。
会場では、水木さんが描いてきた妖怪画の原画のうち約100点を、山、水、里、家の4つの場所に分けて一挙公開。隅々まで丁寧に描き込まれた妖怪画をたっぷり楽しめる、ファンにとっては夢のような空間です。「水のコーナー」では、コロナ禍で有名になった「アマビエ」にも出会えます。

Ⓒ水木プロダクション
画像や本ではわかりにくい建物や道具や、妖怪の細かい部分なども原画ではじっくりと鑑賞可能できます。また作品からは日本の暮らしに古くから根づき、その存在が信じられ、語り継がれてきた妖怪文化を感じ取ることもできそうです。
「こんな妖怪いるんだ~」と、今回初めて知った妖怪もたくさんいました。見えないものを形にする水木さんの豊かな想像力が実感できる内容です。

「家に棲む妖怪」のコーナー Ⓒ水木プロダクション
妖怪と写真撮影できるARコーナーも
専用のアプリによる「妖怪カメラAR」を用いて、隠れている妖怪を探し出すと、出現した妖怪の写真撮影ができるコーナーもあります。どんな妖怪が隠れているか、会場で探してみましょう。

Ⓒ水木プロダクション
展覧会オリジナル妖怪カード プレゼント
水木さんの名前にちなんで、会期中の水曜・木曜に入館の各日先着100名に展覧会オリジナル「妖怪カード」のプレゼントも用意されています。※カードの種類(全12種)は選べません。なくなり次第終了。

ショップのユニークな妖怪グッズも見逃せない
ミュージアムショップでは展覧会限定の妖怪グッズが多数用意されています。今回の目玉グッズのひとつ、妖怪の絵が描かれたポストカードはセット購入も可。細部まで書き込まれた水木さんの妖怪画を自宅でゆっくり楽しめそうですね。他にも百鬼夜行展限定のぬいぐるみやTシャツなどのグッズが盛りだくさん!ぜひお気に入りの妖怪を見つけてみてださい。



数々の妖怪漫画の名作をてがけ、現代の日本人に「妖怪」という文化を根付かせた水木しげるさんの魅力をさまざまな角度から紹介する展覧会。不思議で、怖い、でもちょっとかわいくて、惹きつけられる妖怪たちが繰り広げる、多彩な水木ワールドをお楽しみください。
【展覧会概要】
水木しげる生誕100周年記念「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」
会期:2024年1月20日(土)~3月10日(日)
会場:そごう美術館
住所:神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階
時間:10:00~20:00(入館は閉館30分前まで)
※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合あり。
入場料:一般 1,600円(1,400円)、大学・高校生 1,400円(1,200円)、中学生以下無料
※( )内は、クラブ・オン/ミレニアムカード、クラブ・オン/ミレニアム アプリ提示者の料金
※障がい者手帳所持者および同伴者1名は無料で入館可能
そごう美術館 公式サイト:https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/