特別展「京都・南山城の仏像」が、東京国立博物館 本館にて、2023年9月16日(土)から11月12日(日)まで開催されます。

本展ポスタービジュアル
仏像を通じて、南山城の歴史と文化を紹介
京都府の最南部、木津川に育まれた麗しい景観を擁する一帯は、「南山城(みなみやましろ)」と呼ばれています。奈良と京都の両方の文化の影響を受けて、独自の仏教文化を育んできた南山城には、奈良時代や平安時代に創建された古刹が点在し、そこには優れた仏像が伝わります。本展は南山城に伝わる国宝、重要文化財をはじめとする数々の貴重な仏像を通じて、その歴史や文化の奥深さをたどります。
【見どころと主な作品紹介】
1. 浄瑠璃寺九体阿弥陀 明治期以来およそ110年ぶりの修理完成記念
本展は、明治期以来約110年ぶりに修理が行われた浄瑠璃寺の九体阿弥陀の修理完成を記念して開催されるものです。浄瑠璃寺の本堂に安置される平安時代の9体の阿弥陀如来坐像は、2018年度から2022年度までの5年をかけて修理されました。9体の阿弥陀如来像が並ぶ様子はまさに極楽浄土の世界を表わしています。

《浄瑠璃寺九体阿弥陀堂》画像提供:飛鳥園
2. 平安時代の仏像の変遷が一堂に見られる
古代に創建された寺院が点在する南山城は仏教彫刻の宝庫です。とくに奈良の大寺院や中央貴族と結びつきを強めた平安時代には、優れた仏像が数多く作られました。本展では、およそ400年におよぶ平安時代彫刻の変遷を見ることができます。
かつて恭仁京(くにきょう)があった 瓶原(みかのはら)を山腹から望む海住山寺の檀像の《十一面観音菩薩立像》(重要文化財)は、鋭く明快な彫りが魅力の平安時代初期の木彫像を代表する名作です。
本作は、現存唯一の平安時代の九体阿弥陀のうちの1体。丸い顔立ちや浅い衣文表現など、総じて穏やかな作風は平安時代後期に流行した定朝様の特徴です。
平安時代に仏の教えが廃れる末法思想を背景に、阿弥陀如来が住む極楽浄土に生まれ変わることを願う信仰が隆盛しました。現世での行ないに応じて9段階の極楽往生の方法があるとされ、それに関わる9体の阿弥陀如来像いわゆる九体阿弥陀が作られ、専用の堂宇である九体阿弥陀堂に安置されました。記録の上では30例ほど確認できますが、当時の彫像と堂宇が現存するのは浄瑠璃寺だけです。

平安時代に仏の教えが廃れる末法思想を背景に、阿弥陀如来が住む極楽浄土に生まれ変わることを願う信仰が隆盛しました。現世での行ないに応じて9段階の極楽往生の方法があるとされ、それに関わる9体の阿弥陀如来像いわゆる九体阿弥陀が作られ、専用の堂宇である九体阿弥陀堂に安置されました。記録の上では30例ほど確認できますが、当時の彫像と堂宇が現存するのは浄瑠璃寺だけです。

国宝《 阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち)》平安時代(12世紀) 京都・浄瑠璃寺
かつて恭仁京(くにきょう)があった 瓶原(みかのはら)を山腹から望む海住山寺の檀像の《十一面観音菩薩立像》(重要文化財)は、鋭く明快な彫りが魅力の平安時代初期の木彫像を代表する名作です。
大半をきめの細かい一本の木材から彫り出し、材の特性を生かして目鼻や衣の襞を切れ味鋭く明快に刻む点に高い技術がうかがえ、全身を弓なりに反らせて右膝を少し曲げた流麗な姿勢は優れた造形感覚を示します。鎌倉時代に海住山寺を再興した興福寺僧・貞慶の念持仏であったと伝わります。


重要文化財 《十一面観音菩薩立像》 平安時代(9世紀)京都・海住山寺
10世紀末に創建された禅定寺には、巨大な《十一面観音菩薩立像》(重要文化財)が伝わります。
高さ約3メートルもの巨大なこの像は、禅定寺創建時からの本尊です。柔らかな顔立ちやなだらかな体つき、衣の襞を浅く表わす点は、彫刻の造形が和様化し始めた平安時代中期の特徴を示します。禅定寺は、藤原家の援助を受けて東大寺の平崇(へいそ)上人が創建した奈良とゆかりの深い寺院で、本像の制作にも東大寺で活動した仏師の関与が想定されています。


重要文化財《十一面観音菩薩立像》 平安時代(10世紀) 京都・禅定寺
3. 鎌倉時代の作品にも注目
鎌倉時代に奈良で活躍した慶派仏師作の仏像。像内の納入品から、運慶とともに東大寺や興福寺の仏像制作を手掛けた快慶の亡くなった時期下限が分かる点が貴重です。作者は快慶の弟子の行快とされ、整った顔立ちや細かい衣の襞など、師の作風を受け継いでいます。奈良の大寺院や鎌倉幕府に重用された慶派仏師たちが南山城でも活動したことがわかります。
【展覧会関連情報】
仏像大使にみうらじゅんさん、いとうせいこうさんが就任!
仏像好きのお二人が、本展の仏像大使(広報大使)に就任しました。展覧会オリジナルグッズの開発や音声ガイドへの特別出演などの活動を行うほか、会期中にトークショーが開催されます。
【展覧会概要】
浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」
会期:2023年9月16日(土)〜11月12日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5室
住所:東京都台東区上野公園13-9
開館時間:9:30〜17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
観覧料:当日 一般 1,500円、大学生 800円、高校生 500円
公式サイト : https://yamashiro-tokyo.exhn.jp
公式 SNS: @m_yamashiro2023 (Twitter)
問い合わせ : 050-5541-8600(ハローダイヤル)
※展示作品、会期、開館時間、休館日などは変更となる場合あり。最新情報については公式サイトなどにて確認してください。