国立西洋美術館にて 2023年7月4日(火)から 9月3日(日)まで、「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」展が開催されます。
スペインのイメージを版画からたどる展覧会
フラメンコ、闘牛、ドン・キホーテ、アルハンブラなど、スペインの「イメージ」の多くは、19世紀にこの国を訪れた旅行者たちによって作られたものでした。そうしたイメージをかたちづくり、流通させた重要な媒体が、複数刷られ簡単に持ち運びができた版画です。
本展は、17世紀からゴヤを経て、20世紀のピカソ、ミロ、タピエスまで、約400年間のスペイン版画の展開を、約240点の作品で紹介。スペイン版画の変遷をたどるとともに、ドラクロワやマネら19世紀イギリスやフランスの画家によるスペイン趣味の版画作品も展示し、版画という表現媒体によって、スペインの文化や美術に関する「イメージ」がどのように作られ、伝えられていったのかを探ります。
本展は、17世紀からゴヤを経て、20世紀のピカソ、ミロ、タピエスまで、約400年間のスペイン版画の展開を、約240点の作品で紹介。スペイン版画の変遷をたどるとともに、ドラクロワやマネら19世紀イギリスやフランスの画家によるスペイン趣味の版画作品も展示し、版画という表現媒体によって、スペインの文化や美術に関する「イメージ」がどのように作られ、伝えられていったのかを探ります。
【展示構成】 ※会期中、一部作品の展示替あり
1章 黄金世紀への照射:ドン・キホーテとベラスケス
18世紀半ば以降、スペインにおいても自国の歴史や過去の再評価が始まり、文学においてはセルバンテスの『ドン・キホーテ』(1605年前篇、1615年後篇)が、絵画においてはベラスケスの作品が、古典としての地位を確立します。
本章では、後世や他国の芸術家たちがこれらの古典をどのように受容し、表現していったのかに着目し、前半は『ドン・キホーテ』の挿絵本を中心に、後半はベラスケスに基づきゴヤとマネが制作した版画を中心に紹介します。
オノレ・ドーミエ《ドン・キホーテとサンチョ・パンサ》 1850-52年 油彩/板 市立伊丹ミュージアム
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《バルタサール・カルロス王太子騎馬像(ベラスケスに基づく)》 1778年 エッチング、ドライポイント 国立西洋美術館
2章 スペインの「発見」
19世紀になるとロマン主義の流行により、フランスやイギリスからスペインを訪れる旅行客が増え、スペインの文化、風景がヨーロッパ諸国に紹介されるようになり、エキゾチックな異国としてのイメージが定着していきました。本章は19世紀前半以降、当時の外国人がスペインの文化や美術のどのような側面に惹かれ、造形化していったのかを、ドラクロワやマネの版画に加え、ポスターや写真、新聞や雑誌の挿絵など、様々な作品、資料を交えて紹介します。
ウジェーヌ・ドラクロワ《ゴヤ〈ロス・カプリーチョス〉に基づく習作》 インク/紙 横浜美術館 坂田武雄氏寄贈
3章 闘牛、生と死の祭典
スペインの国技とされる闘牛は 18世紀後半に近代的な形態や理論が確立され、生と死が隣り合わせにある緊張とそのドラマから、長い間大衆の耳目を集めてきました。本章では、ゴヤとピカソ、アントニオ・サウラという 3 人のスペイン人芸術家による闘牛を主題とした作例を紹介します。
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス〈闘牛技〉20番《マドリードの闘牛場でファニート・アピニャーニが見せた敏捷さと大胆さ》 1816年 エッチング、アクアティント 国立西洋美術館
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス〈闘牛技〉20番《マドリードの闘牛場でファニート・アピニャーニが見せた敏捷さと大胆さ》 1816年 エッチング、アクアティント 国立西洋美術館
4章 19世紀カタルーニャにおける革新
カタルーニャ生まれのマリアーノ・フォルトゥーニは、ゴヤの影響を離れ、1860年代、オリジナル版画を制作した数少ないスペイン人画家です。本章の前半はゴッホからも高く評価された、この画家の先駆的な版画の仕事に焦点を当てます。また19世紀末には、パリのアール・ヌーヴォーの影響を受け、カタルーニャの都バルセロナで新たな芸術が花開きます。本章後半では、若きピカソなどバルセロナに集い、更なる活躍の場を求めパリに旅立った芸術家たちの作品を紹介します。
マリアーノ・フォルトゥーニ《隠遁者》 1869年 エッチング、アクアティント 国立西洋美術館
マリアーノ・フォルトゥーニ《隠遁者》 1869年 エッチング、アクアティント 国立西洋美術館
5章 ゴヤを超えて:20世紀スペイン美術の水脈を探る
20世紀のスペインはピカソ、ミロ、ダリ、タピエスなど美術史に輝く巨匠を数多く輩出しました。本章では、彼らがどのようにして自国の伝統と向き合い、自らの制作に取り込み乗り越えたのかを、ゴヤを起点とする2つの観点から検証します。
前半は20世紀初頭、国家的・民族的なアイデンティティが模索されるなか、ともすると、既に時代遅れで伝統的な風俗や習慣にこそ、「生粋」のスペインの姿を見いださんとする思想のもとで生み出されたバローハやソラーナの作品を、彼らにとって大きな着想源となったゴヤや17世紀の版画とともに紹介します。
後半は、内戦とフランコ独裁という政治的困難の中、ピカソ、ミロ、タピエスといった芸術家たちがどのように民衆に寄り添い、鼓舞し、また自由を求めていったのかをたどります。
後半は、内戦とフランコ独裁という政治的困難の中、ピカソ、ミロ、タピエスといった芸術家たちがどのように民衆に寄り添い、鼓舞し、また自由を求めていったのかをたどります。
6章 日本とスペイン:20世紀スペイン版画の受容
あまり知られていませんが、全国各地の美術館には、驚くほど豊かで幅広い 20世紀スペイン版画のコレクションが収蔵されています。本章ではそのなかから厳選した作品を展示するとともに、日本におけるスペイン版画の収集の現状と版画を通じたスペイン美術の受容を紹介します。
【特別出品】[2022 年度新収蔵作品] ソローリャ《水飲み壺》
また、国立西洋美術館が2022年度に新規収蔵した、スペインの画家ホアキン・ソローリャの油彩画《水飲み壺》を初公開。ソローリャは、1863年スペインのバレンシアに生まれ、祖国の風土と人びとを描いて当時国内外で名声を得た、スペインの誇る国民的画家です。
本展に特別出品される《水飲み壺》は、バレンシアの海岸で描かれたもので、少女が小さな子供に水を飲ませる場面を描いたもの。1964年には、ソローリャの生誕100年を記念して、スペインの記念切手の図柄にも用いられました。
本展は、国内各地に所蔵されるスペイン版画の傑作が一堂に会する史上初の機会となります。
名品を鑑賞するだけでなく、版画を媒体として伝わり、広まった、スペインの多様で豊かなイメージを、ぜひ会場で味わってみてください。
【展覧会概要】
企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」
会期:2023年7月4日(火)〜9月3日(日) 会期中に一部作品の展示替えあり
会場:国立西洋美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9:30〜17:30(金・土曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(7月17日(月・祝)、8月14日(月)は開館)、7月18日(火)
観覧料:一般 1,700円、大学生 1,300円
※高校生以下・18歳未満、心身障害者および付添者1名は無料。入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください。
※観覧当日にかぎり、本展観覧券で常設展も観覧可
※本展は日時指定予約制ではありません。本展の詳細及び最新情報は国立西洋美術館公式サイトをご確認ください。
国立西洋美術館公式サイト: https://www.nmwa.go.jp/
国立西洋美術館公式サイト: https://www.nmwa.go.jp/