「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が、東京国立近代美術館にて、2023年6月13日(火)から9月10日(日)まで開催されます。
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本展ポスタービジュアル

スペイン、カタルーニャ地方のレウスに生まれ、バルセロナを中心に活動した建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)。バルセロナ市内に点在するカサ・ビセンス、グエル公園、カサ・バッリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア聖堂など世界遺産に登録された建築群は、一度見たら忘れることのできないそのユニークな造形によって世界中の人々を魅了し続けています。
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サグラダ・ファミリア聖堂、2023 年 1 月撮影
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

本展は、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、ガウディの建築思想と創造の源泉を探ります。図面のみならず膨大な数の模型を作ることで構想を展開していったガウディ独自の制作方法に注目するとともに、建築・彫刻・工芸を融合するガウディの総合芸術志向にも光を当て、100点を超える図面、模型、写真、資料に最新の映像をまじえながらガウディ建築の豊かな世界に迫ります。
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サグラダ・ファミリア聖堂、2022 年 12 月撮影
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

恥ずかしがり屋で人前に出ることを嫌ったガウディは写真嫌いでも有名でした。きちんと顔が映った無帽の写真は5点しかなく、このポートレート写真は、建築学校を卒業して間もない頃の貴重な1枚です。
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 《ガウディ肖像》1878 年、レウス市博物館

展示は、「1 ガウディとその時代」「2 ガウディの創造の源泉」「3 サグラダ・ファミリア聖堂の軌跡」「4 ガウディの遺伝子」の4章で構成しています。
1 ガウディとその時代
この章では、若き日のガウディの活動と時代背景をたどります。
1878年のパリ万博において、ガウディが設計したショーケースは会場で評判となり、バルセロナの資産家で、のちにガウディのパトロンとなったアウゼビ・グエルとの関係を築くきっかけとなりました。このスケッチは、デザイン案を名刺の裏に描き留めたガウディのオリジナルです。
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アントニ・ガウディ《クメーリャ革手袋店ショーケース、パリ万国博覧会のためのスケッチ》1878 年、名刺の裏、
レウス市博物館

2 ガウディの創造の源泉
この章では、ガウディ独自の建築様式の源泉とその展開をたどります。
ガウディはゼロから独創的な建築を創造したわけではありません。ガウディの才能は、西欧建築の歴史、異文化の造形、自然が生み出す形の神秘を貪欲に吸収し、そこから独自の形と法則を生み出したことにあります。この章では「歴史」「自然」「幾何学」の3つのポイントから、ガウディの発想の源泉を探ります。

19世紀の後半は、スペインが自らの文化の源泉としてイスラム建築を再発見した時期でした。多彩色(ポリクロミー)の建築を構想していたガウディは、カサ・ビセンスなどの初期作品で、スペイン・イスラム建築を起源とするムデハル様式に着想を得た斬新なタイル装飾を試みました。

また、ガウディは、実際に目にした動植物をつぶさに観察し、しばしば自然を直接石膏でかたどることで装飾を造形しました。このような自然をもとにした装飾の究極の形がサグラダ・ファミリア聖堂に結実しており、「降誕の正面」には植物や小動物をはじめとする生物の多様性が表現されています。
さらに、ガウディは、建築の形態は自然に由来すると考えていました。彼は自然から得たイメージに、幾何学を応用することで、合理的な構造を兼ね備えた独自の造形言語を発展させます。
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アントニ・ガウディ《植物スケッチ(サボテン、スイレン、ヤシの木)》1878 年頃、レウス市博物館

会場では、ほかにも当時の洞窟ブームとガウディの建築との接点や、理想的なアーチを求めて行った、独特の実験についても紹介します。

3 サグラダ・ファミリア聖堂の軌跡
スペインでいち早く近代化を果たした都市バルセロナ。この章では、サグラダ・ファミリア聖堂は誰が発案したのかなど、建設のプロセスを明らかにするとともに、ガウディ独自の制作方法をアトリエの情景とともに紹介しつつ、残された写真と模型をもとに計画案の変遷を明らかにします。

ゴシック建築を新しく解釈しながらサグラダ・ファミリア聖堂を設計したガウディは、聖堂の内部を森に見立て、樹木のように枝分かれした円柱によって「森」を表現し、円柱が天井ヴォールト(アーチを平行に押し出した形状(かまぼこ型)を特徴とする天井様式)を支える独自の仕組みを考案します。
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サグラダ・ファミリア聖堂内観
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

ガウディは、サグラダ・ファミリア聖堂の「降誕の正面」を、キリストの到来と幼・青少年時代を表現する「石のバイブル」として構想し、聖書の内容を表現する彫像も自ら手掛けました。本展では、スペイン内戦時の破壊を免れた、ガウディが自ら制作したオリジナル彫刻を紹介します。
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アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:女性の顔の塑像断片》1898-1900 年、
サグラダ・ファミリア聖堂 © Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

サグラダ・ファミリア聖堂の高くそびえたつ12本の鐘塔は、キリストの十二使徒を表していますが、ガウディは、とりわけその頂点の装飾デザインに工夫を凝らしました。様々な多面体と球体を組み合わせた複雑な結晶体のような形ですが、頂点に十字架を掲げ、その下には使徒の頭文字、側面には縦に祈祷句が刻まれていてキリスト教のシンボルとしても機能しています。ユニークな形状と鮮やかな色彩が大空に映える頂華は、バルセロナの青空にひときわ鮮やかに浮かび上がります。
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 サグラダ・ファミリア聖堂受難の正面、鐘塔頂華 © Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

ガウディの没後、スペインの内戦が勅発し、聖堂の一部は破壊され、図面類は焼失、模型も粉砕されて建設は中断を余儀なくされましたが、さまざまな危機を乗り越えて1882年の着工から140年が経過しました。ガウディが生前に関わることができた部分は、地下礼拝堂と「降誕の正面」に限られますが、その後歴代の建築家たちが、ガウディが残した写真や模型の断片を頼りに作業を継続してきた結果、いよいよ聖堂の完成が近づいてきました。この全体模型は2021年末のマリアの塔、2022年のルカ、マルコの塔の完成をふまえた最新の姿を示すものです。
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《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》2012-23 年、制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、サグラダ・ファミリア聖堂 
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

本展では、ガウディ以降の建設の推移についても、「降誕の正面」を飾る外尾悦郎などの彫刻でたどるとともに、マリアの塔やマルコの塔といった最新の建設事情も紹介します。
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《サグラダ・ファミリア聖堂、マルコの塔模型》2020 年、
制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、サグラダ・ファミリア聖堂 
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

「降誕の正面」の彫刻群のうち、中央の扉のすぐ上に9体の天使像があります。その制作を担当したのが、1978年以来サグラダ・ファミリア聖堂で彫刻家として従事する日本人・外尾悦郎さんです。
本展では、この天使像の完成前に、実際に設置されていた9体の石膏像を展示します。
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外尾悦郎《歌う天使たち》 サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に 1990-2000 年の間仮設置、作家蔵 
写真提供:株式会社ゼネラルアサヒ

4 ガウディの遺伝子
ガウディの建築は、そのユニークな造形や設計原理のみならず、社会の中で建築やモニュメントを成立させる思想的側面など、さまざまな形で後世に影響を及ぼしています。展覧会の締めくくりとなるこの章では、世界と日本におけるガウディの受容の歴史や、現代の建築家に与えた影響を紹介しながら、ガウディの遺伝子が21世紀の現在にいかなるアイディアをもたらしているのかを問いかけます。

さらに会場では、最終段階に向かうサグラダ・ファミリア聖堂の現在の姿を、最新の映像を通して紹介します。NHKが撮影した高精細映像やドローン映像を駆使して、肉眼では捉えられない視点で聖堂を散策。ステンドグラスを通過した光が聖堂内を彩る美しい聖堂内の風景を捉えた映像は圧巻です。

サグラダ・ファミリア聖堂の建設は、新型コロナウイルスの影響で一時中断していましたが、2020年の秋には再開。翌年の12月には、聖堂の中央に位置する6つの塔のうち、頂点に星を頂くマリアの塔が完成、続く2022年12月には4つの福音書作家の塔のうち、ルカとマルコの塔が完成しました。建設作業は現在も進んでおり、残るマタイとヨハネの塔は2023年11月に、聖堂中央の最も高い塔となるイエスの塔は2026年までの完成を予定しています。
時代を超えて生き続けるガウディ建築の魅力を多角的に紹介する本展。サグラダ・ファミリア聖堂の完成の時期が視野に収まってきた今だからこそ、見るべき展覧会といえそうです。
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サグラダ・ファミリア聖堂、2023 年 1 月撮影
© Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

【開催概要】
「ガウディとサグラダ・ファミリア展」
会期:2023年6月13日(火)〜9月10日(日) ※会期中一部展示替えあり
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで)
※入館はいずれも閉館の30分前まで
休館日:月曜日(7月17日(月・祝)は開館)、7月18日(火)
観覧料:一般 2,200円(2,000円)、大学生 1,200円(1,000円)、高校生 700円(500円)
※( )内は20名以上の団体料金、および前売券料金(6月12日(月)まで販売)
※中学生以下、障がい者手帳の所持者および付添者(1名)は無料(入館時に学生証などの年齢のわかるもの、障がい者手帳などを提示)
※内容は変更となる場合あり(最新情報については展覧会公式サイトなどにて確認のこと)
展覧会公式サイト:https://gaudi2023-24.jp/

■巡回情報
・滋賀会場
会期:2023年9月30日(土)〜12月3日(日)※会期中一部展示替えあり
会場:佐川美術館
住所:滋賀県守山市水保町北川2891
・愛知会場
会期:2023年12月19日(火)〜2024年3月10日(日)
会場:名古屋市美術館
住所:愛知県名古屋市中区栄2-17-25(芸術と科学の杜・白川公園内)