京都にある大学ミュージアムのコレクションから京都の伝統産業や芸術などを考える「京都の大学ミュージアム特集」の第1弾として、浅井忠と京都の美術工芸にまつわる展覧会「浅井忠と近代京都のデザイン」が2023年4月14日(金)から開催されます。
京都工芸繊維大学の前身校のひとつである京都高等工芸学校は、明治35年(1902)、京都の伝統産業の近代化を理論的、技術的にバックアップし、世界に通用する新しいデザインを生み出す人材育成を目的に設立されました。
図案科の初代教授となった浅井忠(1856~1907)は、明治を代表する洋画家のひとり。工部美術学校を卒業後、十一会や明治美術会の活動を通じて日本の洋画の発展に大きく寄与し、東京美術学校西洋画科の教授をつとめましたが、明治33年(1900)に洋画研究のために渡ったフランスでアール・ヌーヴォーと出会い、デザインの面白さに目覚めました。
帰国後すぐ、京都高等工芸学校に着任した浅井は、同校でデザインの基礎となるデッサン教育に従事する一方、京都の伝統産業界の関係者らとともに、遊陶園や京漆園といった研究団体を立ち上げ、新技術を用いた伝統にとらわれない新たなデザインの陶磁器や漆器を次々と生み出しました。
明治40年(1907)には、祇園に自身がデザインを手がける陶器店、九雲堂を開店させ、一般市民への流通をみすえた活動も始めています。
浅井はアール・ヌーヴォーだけでなく、近世のデザイナーとも言われる琳派や日本の古美術、滋賀の民画である大津絵などにも深い関心を寄せ、熱心に研究をおこないました。
たしかなデッサン力をもつ浅井のデザインは、実物のかたちを正確にとらえつつ柔らかで愛嬌のあるものが多く、時代を超えて色あせない魅力を放っています。
本展では、京都工芸繊維大学のコレクションから、明治末、京都の伝統産業界に大きな影響を与えた浅井忠の多彩なデザインを紹介するとともに、同時期に浅井らの選定によって京都高等工芸学校でデザイン教材として利用されたフランスのポスターや陶磁器もあわせて展示されます。

ショワジー・ル・ロワ製陶所《果実文花瓶》1902以前

ショワジー・ル・ロワ製陶所《果実文花瓶》1902以前
浅井忠の洋画は見たことがあっても、彼とデザインの関係については知らない方も多いのではないでしょうか。デザイナーとしての浅井忠の魅力をこの機会にぜひご覧ください。
【開催概要】
展覧会名:京都の大学ミュージアム特集1 京都工芸繊維大学コレクション―浅井忠と近代京都のデザイン
会 期: 2023年4月14日(金)~5月28日(日)
休 館 日: 2023年4月24日(月)
開館時間: 9:00~17:00
会 場: みやこめっせ地下1階 WEST SQUARE Window Gallery
(〒606-8343 京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1)
入 館 料: 無料
お問合せ: 京都伝統産業ミュージアム
TEL:075-762-2670 FAX:075-751-1692
https://kmtc.jp/