特別展「大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101」が、東京・六本木の泉屋博古館東京にて、5月21日(日)まで開催中です。

東洋陶磁の珠玉の名品が一堂に
世界有数の東洋陶磁コレクションを有する、大阪市立東洋陶磁美術館。その中核をなすのが、昭和の財界数奇者として知られる、安宅英一(あたか えいいち)氏によって収集された「安宅コレクション」です。961件もの東洋陶磁から構成されるこのコレクションは、伝統的な価値観や枠組みにとらわれることなく、安宅の審美眼によって築かれました。
本展では、安宅コレクションから国宝2件、重文11件を含む名品101件を厳選して紹介。コレクションを代表する名品をはじめ、珠玉の東洋陶磁を見ることができます。
第1展示室 珠玉の名品
第1展示室では、安宅コレクションを代表する珠玉の名品を紹介。
展示室入口付近で迎えてくれるのは、「MOCO(モコ)のヴィーナス」こと《加彩 婦女俑》。ふっくらと柔らかそうな手、指先の可憐なしぐさ、頭をかしげたような様子が愛らしい唐美人です。※MOCOは大阪市立東洋陶磁美術館の英語名の略称
展示室入口付近で迎えてくれるのは、「MOCO(モコ)のヴィーナス」こと《加彩 婦女俑》。ふっくらと柔らかそうな手、指先の可憐なしぐさ、頭をかしげたような様子が愛らしい唐美人です。※MOCOは大阪市立東洋陶磁美術館の英語名の略称
法花とは、さまざまな色の釉薬を素地に直接掛け分けて彩る三彩の技法の一種。本作は法花としては最大級のもので、胴には花鳥、下方には波や岩が描かれ、華やかな花鳥ワールドが楽しめる作品。

重要文化財《法花 花鳥文 壺》 明時代・15世紀

重要文化財《法花 花鳥文 壺》 明時代・15世紀
目利きとして知られた、廣田不孤斎秘蔵の「三種の神器」と呼ばれる品。いくら頼んでも譲ってもらえず、安宅氏がさまざまな策を講じてようやく入手した名品です。

右: 重要文化財《白磁刻花 蓮花文 洗》北宋時代・11〜12世紀
中:《紫紅釉 盆》 明時代・15世紀
左:《五彩 松下高士図 面盆(「大明萬曆年製」銘)》明時代・万暦(1573〜1620)
《青磁象嵌 六鶴文 陶板》は、厚さ5ミリほどの陶板。高麗特有のやわらかい釉色と、葦や竹の繁った水辺で鶴が戯れる絵画的な図様が特徴。陶板の完品の遺例は世界に数点しかなく、さらに本作ほどの大きさと絵画性をもつものは他にほとんど類例がない珠玉の名品。
中央は、中国古代の青銅器を模倣して、五穀を盛り神々に捧げるためのうつわとしてつくられた品。安宅氏はこの祭器に深い愛着をもち、「弁慶」の名で呼んでいました。

中央:《粉青白地象嵌 条線文 簠》 朝鮮時代・15世紀
どちらも愛嬌のある虎が描かれた壺。虎は実際に朝鮮半島に生息し、 霊獣として信仰され、崇められていました。

右:《青花 虎鵲文 壺》 朝鮮時代・18世紀後半
左:《鉄砂 虎鷺文 壺》 朝鮮時代・17世紀後半
第2展示室 韓国陶磁の美
安宅コレクションの中でも質、量ともに世界有数のコレクションである韓国陶磁。第2展示室では、高麗時代、朝鮮時代の陶磁を代表する名品が並びます。
展示室では、泉屋博古館蔵の高麗仏画の名品である重要文化財《楊柳観音像》と、仏具として用いられてきた高麗青磁の取り合わせも見ることができます。

上:重要文化財《楊柳観音像》徐九方 高麗時代 忠粛王10年 (至治3年(1323))泉屋博古館 (住友コレクション)前期(3/18~4/16)展示
下右:《青磁 瓜形瓶》高麗時代・12世紀前半
下左:《青磁 陰刻柳蘆水禽文 浄瓶》高麗時代・12世紀
蔓をよじ登ろうとする童子の姿がかわいい作品も(^^♪

重要文化財《青磁象嵌 童子宝相華唐草文 水注》 高麗時代・ 12世紀後半〜13世紀前半
その後、朝鮮王朝時代に至り、素朴な中にも自然への憧憬が垣間見られる粉青や白磁、青花など、造形、文様共に魅力的なものが多く誕生します。ここでは、青くない高麗青磁や、草花や魚の独特な文様が楽しい朝鮮時代の陶磁なども見ることができます。

展示風景より
第3展示室では国宝である《飛青磁 花生》や《油滴天目 茶碗》をはじめ、宋・元・明時代を中心とする陶磁作品が展示されています。日本では長らく陶磁器に対する価値観は茶の湯文化によって形成されてきました。その中で中国陶磁は、特に「唐物」として珍重されました。
茶碗の内外の黒釉に生じた油の滴のような銀色の斑文に、青色を中心とした虹色の光の色彩のグラデーションが美しい、南宋時代の建窯の天目茶碗。 かつて関白・豊臣秀次が所持し、のち西本願寺、京都三井家、若狭酒井家に伝来した名品中の名品です。
国宝 《油滴天目 茶碗》(独立ケース) 南宋時代・12〜13世紀均整のとれたプロポーション、 翠色の美しい釉色、 絶妙な鉄斑の配置など、 元時代の龍泉窯青磁を代表する、鴻池家伝来の国宝《飛青磁 花生》。
加賀前田家伝来の重要文化財《木葉天目 茶碗》。見込みには本物の木葉が焼き付けられており、日本伝世の木葉天目の最高傑作として名高い作品。

重要文化財《木葉天目 茶碗》(独立ケース) 南宋時代・12〜13世紀
近代に入り、「鑑賞陶磁」というやきもの鑑賞の新たな概念が提唱され、唐時代の唐三彩や、明時代の法花などが注目されるようになりますが、会場では、従来の価値観に縛られることなく、安宅氏自らの美意識によって選び抜いた美の世界を見ることができます。

展示風景より、唐三彩の展示
展示風景より、明時代の景徳鎮窯の金襴手などの展示
第4展示室 エピローグ
第4展示室では、コレクションの中から、安宅氏の思い入れが強く、収集時の秘話が残る作品が紹介されています。
胴面に描かれた宝相華が美しい《青磁鉄絵 宝相華唐草文 梅瓶》、人間国宝・濱田庄司をうならせた《粉青線刻 柳文 長壺》、李朝白磁の魅力を凝縮した《白磁 壺》、安宅氏が「げんこつ」 と呼んでいた《黑釉 扁壺》などの名品が並びます。

展示風景より
安宅コレクションの隠れた名品である《鴟鴞卣》と、泉屋博古館蔵の中国古代青銅器とのコラボレー
左:《鴟鴞卣》商時代後期・ 前12~11世紀 泉屋博古館
(住友コレクション)
本展の公式図録(2750円、青幻舎刊)もミュージアムショップで販売中。展示作品101点すべてのカラー図版と解説のほか、泉屋博古館理事長で住友銀行時代に安宅産業の経営破綻に関わった奥氏と、安宅氏のもとでコレクション収集に携わった大阪市立東洋陶磁美術館名誉館長の伊藤氏による特別対談も掲載。様々な興味深いエピソードが満載でとても面白く読めました。全国の書店、オンラインショップでの発売は4月上旬からの予定です。

本展では、展示室内の全作品撮影OK。撮影した作品をSNSに投稿するときは、ぜひハッシュタグ(#安宅コレクション101)を付けて投稿してください。
【展覧会概要】
特別展「大阪市立東洋陶磁美術館 安宅コレクション名品選101」
会期:2023年3月18日(土)~5月21日(日)
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
開館時間:11:00~18:00(金曜日は19:00まで開館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般 1,200円(1,000円)、高校・大学生 800円(700円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体割引料金
※障がい者手帳の提示者本人および同伴者1名までは無料
泉屋博古館東京ホームページ:https://sen-oku.or.jp/program/20230318_moco101/