上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)にて開催中の、『兵馬俑(へいばよう)と古代中国~秦漢文明の遺産~』展に行ってきました。

兵士や馬の俑、その数およそ8000体の埋蔵が推定される始皇帝陵の兵馬俑坑。1974年に井戸を掘っていた農民が見つけ、「20世紀最大の考古学的発見」ともいわれ、秦始皇帝陵および兵馬俑坑は世界遺産に指定されています。本展では、秦漢両帝国の中心地域であった陝西省の出土品を中心に、貴重な文物を多数展覧。それらが語る歴史を紐解いていきます。日本初公開、中国国家一級文物(国宝級を指す中国国内の区分)を多数含む、当時の人々が使った青銅器、兵士が戦場で使った武具など約200点の貴重な文物が展示されています。

兵士や馬の俑、その数およそ8000体の埋蔵が推定される始皇帝陵の兵馬俑坑。1974年に井戸を掘っていた農民が見つけ、「20世紀最大の考古学的発見」ともいわれ、秦始皇帝陵および兵馬俑坑は世界遺産に指定されています。本展では、秦漢両帝国の中心地域であった陝西省の出土品を中心に、貴重な文物を多数展覧。それらが語る歴史を紐解いていきます。日本初公開、中国国家一級文物(国宝級を指す中国国内の区分)を多数含む、当時の人々が使った青銅器、兵士が戦場で使った武具など約200点の貴重な文物が展示されています。

撮影スポット
紀前770年、周王朝は洛陽に遷都しますが、次第にその権威は失われ、各地で有力な諸侯が独立していく時代に入ります。約550年続いたこの群雄割拠の世が、後にいう春秋戦国時代です。
秦は、列国で最も西に位置し、中国文明の中心地の国々からは西戎(西の異民族)とさげすまれていました。しかし、進んだ東方の文化と、西方遊牧民の勇猛さを取り入れ、最強の軍団を築き上げ、紀元前221年、秦の始皇帝がついにこの戦乱を終結させ、史上初めて中国大陸に強大な統一王朝を打ち立てました。
わずか十数年のうちに秦は滅亡しますが、始皇帝の墓に眠る兵馬俑や、万里の長城といった数多くの遺物は、当時の絶大な国力を現代に伝えてくれます。
そして紀元前202年、漢の劉邦が西楚の項羽を破って再び中国を統一。秦の国家制度を引き継いだ漢王朝は、古代中国における一つの黄金時代といえます。
展覧会は統一前夜と統一王朝の秦、漢王朝の3章に分け、各時代ごとの騎馬俑や兵馬俑など多彩な遺物から古代中国文明を紹介。展示をとおして古代中国文化の変遷をたどります。
本展は、中国古代史が専門で映画「キングダム」の中国史監修も務めた鶴間和幸・学習院大学名誉教授が監修を担当。
始皇帝らが登場する人気漫画「キングダム」の名場面も展示。中国古代史の流れをわかりやすくたどることができます。
秦の始皇帝とは
趙の都邯鄲(かんたん)で生まれた秦王嬴政(えいせい)。約550年続いた群雄割拠の春秋戦国時代を終結させ、紀元前221年に史上初めて中国大陸に統一王朝を打ち立てた。1974年、秦始皇帝陵付近で、偶然、地中に埋まった素焼きの像が発見され、地下5メートルの巨大な地下空間に、おびただしい数の兵士や馬の素焼きの像が埋まっていることが発見された。
兵馬俑とは
兵士や馬を木や土に写し取ったものを俑(よう)といい、古代中国の人々は死後の世界で被葬者を守るために。陵墓に収めました。始皇帝陵に埋蔵が推定される約8,000体は、始皇帝軍を再現したとされ、顔、体、服装のひとつひとつが異なると言われています。
統一後の始皇帝は、「皇帝」という新しい権威を、目に見える形で帝国全土に見せつけることを目的に、多数の兵士とともに帝国各地を自ら巡行しました。
その巡行の際に始皇帝が乗用した馬車を2分の1サイズで再現したものが、始皇帝陵から出土した銅車馬です。出土された銅車馬は2両あり、本展で展示されている銅車馬(複製)は安車、または轀輬車と呼ばれ、箱型で乗車する始皇帝の姿を外から隠す構造になっています。複製品ですが、車馬の機能、構造がわかる貴重な品です。
本展では、戦国、漢時代を含めた総計36体の兵馬俑が一堂に会します。なかでも、11体しか確認されていない希少な将軍俑から、日本初公開となる1体は注目です。
高さ196センチもの大きさで、生前、始皇帝に仕えた人物の生き生きした姿を見ることができます。
兵馬俑の役職は頭に被っているものから推測できます。
将軍俑は、頭部に2つに分かれた鶡冠という冠をかぶっています。鶡はヤマドリのことで、攻撃されたときに勇猛に反撃することからその尾羽を武人の冠に使ったということです。

《戦服将軍俑》〈一級文物〉統一秦 陶 高さ 196cm 秦始皇帝陵博物院
兵馬俑は2000年以上も土中に埋まっていたため、木製の武器は朽ちて原形をとどめていませんが、手の形から各人が持っていた武器が類推できます。右手を斜めに丸くしている戦服将軍俑は剣を持っていたと考えられており、右手に剣を持っていることから左利きだと推測できます。
鎧甲軍吏俑は「双版長冠」を被っていることから中級の武官と判断できます。鎧甲軍吏俑は右手を丸くして水平にしていることから長柄の武器を立てて持っているとみられています。
口ひげを生やした兵士が左足をたてひざにしているこの俑は、弩(いしゆみ、石や矢を発射する強力な弓)の引き金に指をかけて待機している姿といわれています。左手は弩の弓の部分を押さえ、弩は弓より弦の張力が強いため、腰を入れた低い姿勢で構えていると考えられます。
戦国時代には小さかった騎馬俑が秦代には等身大で個性的な兵馬俑になりますが、漢代には三分の一程度の大きさに再び縮小され、個性のない顔となっていきます。漢代の人々はむしろそれで安心したのです。ここでは始皇帝と漢代の皇帝権力の違いを読み取ることができます。


今でもいそうな感じの人物像ですが、これが紀元前の作というから驚きます。《跪座俑》〈一級文物〉統一秦 陶 高さ 64cm 秦始皇帝陵博物院
前漢景帝陽陵から出土したヒツジやブタなどの動物俑は一列に並べられ、保存状態もよく、動物の表現が見事です。家や番犬、車、倉をモチーフにした陶製の墓の副葬品からは当時の生活を垣間見ることができます。
死者の遺体に握らせた玉を玉握といいますが、漢代には豚の形をしたものが多く、この《玉豚》の展示もありました。
人物をかたどった俑はさまざまですが、北方の女性をモチーフにしたという騎馬俑は頬骨がはっており、その独自の表現が目を引きました。
古代の信仰を伝える画像石、始皇帝の実父と伝えられる秦の宰相・呂不韋の名前が刻まれた青銅製の戟(矛など複数の武器の機能を持たせた長柄武器)なども展示され、貴重な文物の一つ一つが、中国大陸を舞台に繰り広げられた壮大な歴史の物語を今に伝えてくれます。

《青銅戟》〈一級文物〉秦 青銅 秦始皇帝陵博物院

《青銅戟》〈一級文物〉秦 青銅 秦始皇帝陵博物院
《里耶秦簡》 統一秦 木 里耶秦簡博物館
古代の青銅器は選り抜きの名品が揃います。漢の武帝が作らせたと伝わる秘宝・鎏金青銅馬は36年ぶりに日本で公開。青銅器、金印などは細部にわたるこだわりをぜひじっくりご覧ください。単眼鏡があれば持参をおすすめ。
また泉屋博古館東京で開催中の「不変/普遍の造形 ─住友コレクション中国青銅器名品選─」では、世界有数ともいわれる泉屋博古館所蔵の中国青銅器を紹介。はじめて中国青銅器を知る人のための入門編で、現代の最先端の文化財技術を活用した新しい鑑賞体験も楽しめます。青銅器についてより詳しく知りたい方はこちらもぜひ!紹介記事はこちら。
展示の一部は写真撮影可能です。なお、上野の森美術館はロッカーが少ないため、荷物は最小限にしておくことをおすすめします。
最近漫画やドラマなどで大きな注目を集める古代中国史。その重厚なドラマが、貴重な文物の数々から蘇ります。
【開催概要】
会期 2022年11月22日(火)〜2023年2月5日(日)日時指定予約制
会場 上野の森美術館
時間 9:30~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
観覧料 (税込)一般:2,100円 高校・専門・大学生:1,300円 小・中学生:900円
展覧会公式サイト(東京会場) https://heibayou2022-23.jp/tokyo