島根県立美術館では、2023年2月3日より『永田コレクションの全貌公開〈一章〉北斎-「春朗期」・「宗理期」編』が開催されます。
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2017年度、島根県津和野町出身の北斎研究者・永田生慈(ながたせいじ)氏(1951-2018)より、北斎とその門人の作品・資料2,398件が島根県へ寄贈されました。この「永田コレクション」は、北斎に関する個人コレクションとしては世界屈指の規模を誇ると共に、北斎研究上、極めて貴重な作品や資料の宝庫です。同館では複数回の展覧会を通じて、その全貌を公開する予定です。
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本展はその〈一章〉として、北斎が浮世絵界にデビューした20歳から45歳頃(※年齢は数え年)まで、主に用いていた画号から「春朗(しゅんろう)期」・「宗理(そうり)期」とよばれる、若き日の北斎に焦点を当てます。
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葛飾北斎《鍾馗図》島根県立美術館蔵 (永田コレクション)[通期展示]

北斎の生涯の中でもこの両期は、現存数や資料が少なく、謎多き時期とされていますが、永田氏は春朗期では約90点、宗理期では約340点もの作品を蒐集。それらの研究を通して、北斎の知られざる様々な側面を明らかにしました。そんな蒐集と研究が一体化した「永田コレクション」より、本展では春朗期と宗理期の作品約350点を一挙公開します。

特に、極めて稀少な春朗期の肉筆画、宗理期における第一級の摺物群「津和野藩伝来摺物」(初の全144点公開)は必見です。
北斎の春朗期・宗理期だけに焦点を当てる初の大規模展となる本展。永田コレクションは県外不出のコレクションのため、島根県でしか見ることができません。世界に轟く画号「葛飾北斎」を名のることも、代表作『北斎漫画』・《冨嶽三十六景》を描くこともまだ先のこと―そんな北斎の知られざる若き日の軌跡をたどることができる貴重な機会です。
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葛飾北斎《曙艸(吉野山花見)》 島根県立美術館蔵 (永田コレクション) [展示3月15日~3月26日]

永田生慈(1951-2018)
島根県津和野町出身の北斎研究者。元・太田記念美術館副館長兼学芸部長(2008年退任)。1990年、津和野町に自身のコレクションを中心とした葛飾北斎美術館を開館(2015年閉館)。北斎に関する数多くの論文・主著・編著を執筆し、国内外で多くの北斎展の監修を務めた。2016年、フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章。2017年、所蔵するコレクション2,398件を島根県へ寄贈。翌2018年2月6日逝去(享年66歳)。

◆みどころ◆
【春朗期(数え20~35歳頃)】-多彩な習作期-
亡くなる90歳まで絵師として活動した北斎の人生の中で、習作期と位置づけられているのが春朗期です。師事した勝川派以外の様々な画派の表現も貪欲に吸収して画技の研鑽に努め、錦絵では勝川派らしい役者絵を中心に、美人画、武者絵、浮絵、宗教画、玩具絵など多種多様な画題を手がけ、黄表紙など版本の挿絵も精力的に描きました。
【宗理期(数え35~45歳頃)】-摺物・狂歌本の世界へ-
寛政6年(1794)頃、35歳の北斎は勝川派を離れ、琳派の流れを汲む俵屋宗理(たわらやそうり)を襲名します。これを機に北斎は、豪華な私家版である摺物、狂歌、本の挿絵、肉筆画など、これまであまり手がけてこなかった分野に挑戦するようになります。画風も一変し、「宗理風」とよばれる優美な女性像に象徴される、温雅で叙情性漂う表現で新境地を拓き、浮世絵師として大いに飛躍しました。
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葛飾北斎《亀》島根県立美術館蔵 (永田コレクション)[前期展示]

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葛飾北斎《巳待の御札[津和野藩伝来摺物]》島根県立美術館蔵(永田コレクション)[展示2月15日~2月27日]

◆開催概要◆
展覧会名:永田コレクションの全貌公開〈一章〉北斎-「春朗期」・「宗理期」編
会期:2023年 2/3(金)~ 3/26(日)[前期]2/3(金)~ 2/27(月)[後期]3/1(水)~ 3/26(日)
※前・後期で錦絵と摺物は全点展示替え、版本は展示箇所を変更し、肉筆画は通期展示
開館時間:[2月]10:00~18:30(展示室への入場は18:00まで)
     [3月]10:00~日没後30分(展示室への入場は日没時刻まで)
休館日:火曜日(ただし3/21は開館)
会場:島根県立美術館企画展示室
観覧料:[当日券]一般:企画1,000(800)円、企画・コレクション展セット1,150(920)円
大学生:企画 600(450)円、企画・コレクション展セット700(530)円
小中高生:無料 
●( )内は20名以上の団体料金
●オンラインチケットは美術館ホームページより購入可。
●身体障害者手帳(障害者手帳アプリ:ミライロID)、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方、及びその付添の方は無料
●『永田生慈 北斎コレクション総目録〈一巻〉-「春朗期」・「宗理期」編』を初版限定価格3,300円(税込)にて販売予定。
●その他
関連事業として、講演会、「浮世絵の摺り実演」「ワークショップ・浮世絵の摺り体験」などが開催される予定です。詳しくは美術館ホームページをご覧ください。
https://www.shimane-art-museum.jp/exhibition/000383.html