東京・六本木の泉屋博古館東京にて、リニューアルオープン記念展IV「不変/普遍の造形 ─住友コレクション中国青銅器名品選─」が2月26日(日)まで開催中です。

泉屋博古館東京のリニューアルオープン記念展パート4となる「不変/普遍の造形 ─住友コレクション中国青銅器名品選─」では、世界有数ともいわれる泉屋博古館所蔵の中国青銅器を紹介。コレクションを代表する選りすぐりの名品を一堂に集め、種類・用途・文様・モチーフ・金文・鑑賞の歴史など、さまざまな角度から解説、紹介します。
本展は、はじめて中国青銅器を知る人のための「入門編」。本展の担当学芸員の山本堯さんは「住友コレクションの名品を東京でまとめて見ることができる機会はなかなかありません。青銅器に詳しくない方にも面白さが伝わるような展示にしました。」と語っていました。
また、今回の展覧会にあわせて、 3Dデータを用いたデジタルコンテンツを制作し、会場(講堂)にて公開。 展示では見ることができない器の内側や、拡大画像だからこそわかる器の細部など、現代の最先端の文化財技術を活用した新しい鑑賞体験も楽しめます。
そして、今回展示室内は一部展示品(住友春翠氏の写真など)を除き撮影可能!撮影した作品を家で拡大してじっくり鑑賞、なんていうこともできちゃいます。
◆◆第1章 神々の宴へようこそ◆◆
青銅は銅と錫(スズ)の合金で、錫が入ることで融解温度が低くなって扱いやすくなり、人類が最初に使った金属とされています。殷や周といった古代王朝が栄えた約3,000年前の古代中国では、高度な青銅器文化が発達しました。青銅器の多くは祖先の神々をもてなすために使われたとされています。
また青銅器には 複雑な名前がついてますが、実はこうした命名には 基本的なルールがあります。 会場ではそうした名前がなぜつけられたのか、どういう意味があるのか、という点も解説しています。
「卣(ゆう)」は、蓋つきの酒や香草の煮汁を入れる器。本作では後肢で立つ虎が人を抱え、丸のみにするかのような様子が表現されていますが、何を意味するのかは不明だそう。重そうに見えますが、わずか厚さ2ミリ程度で鋳造された器で、5kgぐらいしかありません。虎以外にも鹿、蛇などさまざまな動物の文様を見ることができるので探してみてください。
「卣(ゆう)」は、蓋つきの酒や香草の煮汁を入れる器。本作では後肢で立つ虎が人を抱え、丸のみにするかのような様子が表現されていますが、何を意味するのかは不明だそう。重そうに見えますが、わずか厚さ2ミリ程度で鋳造された器で、5kgぐらいしかありません。虎以外にも鹿、蛇などさまざまな動物の文様を見ることができるので探してみてください。
「敦(たい)」は、穀物を盛る器で、半球状の蓋と身が合わさり、その上下に三脚 がついた器で、蓋を逆さまにして置いたときにも安定するように設計されています。

展示風景より、《円渦文敦 (えんかもんたい)》 戦国前期/ BCE5cなど「敦」の展示
三脚がつき、 左右非対称の口をもつ独特の造形の「爵」は、主にお酒を温めるために利用されました。
「尊(そん)」はお酒を入れて神前に供える器。本作は生贄の動物の頭をかたどった犠首(ぎしゅ)がついています。
「兕觥(じこう)」は、大きな把手と、怪獣の姿をかたどった蓋がついた器で、酒や水を注ぐ器と考えられています。 怪獣型ながら愛嬌のある器です。
「盤(ばん)」は儀式の際に身を清めるために使用する水器の一種。見込みの部分には1匹のカエルがいて気持ちよさそうに泳いでいますが、傍には大きくとぐろを巻く蛇がカエルを狙う姿が表現されています。
《虎鎛(こはく)》西周前期/ BCE11-10c (右)
◆◆第2章 文様モチーフの謎◆◆
中国青銅器の大きな特徴のひとつが、器の表面を埋め尽くすようにあらわされた文様やモチーフです。機能性のみでは説明できない複雑な造形・文様は、古代中国における思想や信仰をあらわすと考えられますが、後世の吉祥のモチーフとは異なり、中国青銅器の文様は、人間にとって危険であるがゆえに聖性(邪を払う聖なる存在)を帯びているという、「二面性」が特徴です。


第2章展示風景より
また、実在の動物をそのままあらわすのではなく、様々な動物のパーツを組み合わせて、この世にはないような文様を生みだすという「キメラ」としての性格も認められます。瑞獣の代表格、龍も9種類の動物の特徴を兼ね備えたとされるように、 「キメラ」 としての性質をもっていました。第2章では、中国青銅器の文様を、「二面性」と「キメラ」という2つのキーワードで読み解き、中国古代の人々の豊かなイマジネーションの世界を探っていきます。

また、実在の動物をそのままあらわすのではなく、様々な動物のパーツを組み合わせて、この世にはないような文様を生みだすという「キメラ」としての性格も認められます。瑞獣の代表格、龍も9種類の動物の特徴を兼ね備えたとされるように、 「キメラ」 としての性質をもっていました。第2章では、中国青銅器の文様を、「二面性」と「キメラ」という2つのキーワードで読み解き、中国古代の人々の豊かなイマジネーションの世界を探っていきます。

龍の文様があらわされた《見卣(けんゆう)》 西周前期/ BCE11-10c
文様のなかで一番使われているのは、獣の顔面が正面を向いている「饕餮(とうてつ)文」。饕餮は、後の時代の文献では「欲深い邪悪な獣」として記されていますが、殷周時代当時の人々がこの文様をどのように呼び、どのような意味を与えていたのかは不明な点が多いのだそうです。

第2章展示風景より、《饕餮文方彝(とうてつもんほうい)》西周前期/ BCE11cなど饕餮があらわされた青銅器
ころっとした丸みを帯びた体つき、 つぶらな瞳がかわいい鴟鴞(ミミズク)形の器。グッズでもあれば人気が出そうですね。しかし鴟鴞は、古代中国では不吉で 凶悪な鳥として忌み嫌われていました。 その危険性が転じて、邪霊を祓う役割を期待されるようになったそうです。まさに「毒をもって毒を制す」といったところでしょうか。しかし作品では野生のミミズクの細かな特徴が表現されており、作者が実物をよく観察していたことがうかがえます。

展示風景より、《鴟鴞尊(しきょうそん) 》殷後期/ BCE13-12cなど鴟鴉形の器
片側に大きな翼が生えた4体の獣。口には板のようなものをくわえています。 はっきりした 用途は不明ですが、円形の台座のようなものに取りつける飾りだと考えられています。

《有翼神獣像(ゆうよくしんじゅうぞう)》 戦国前期/ BCE5c
扉が開閉し、内部に火種を入れて食べ物を 温めることができた器。 わかりにくいのですが、扉の両側にいる門番は足切りの刑を受けた人といわれ、両脚が極端に短くあらわされています。この拡大画像を会場にあるデジタルコンテンツで見ることができます。 ミニチュアハウスのような印象とは裏腹に、結構怖~い作品です。
青銅器は鋳造の際に型を破壊するため、全く同じ文様はありません。この機会に、さまざまな文様を見比べてみてください。◆◆第3章 古代からのメッセージー金文一◆◆
第3章では、当時の歴史的事件や社会状況を記した貴重な歴史史料であるだけでなく、文字としての美しさをも備えた金文に着目。謎の古代文字が記す意味について、釈文や現代語訳をつけて丁寧に解説しています。

第3章展示風景より

第3章展示風景より
《埶父辛簋(げいふしんき)》は穀物を盛る器。 「埶」 は 「 芸」 の古い字形で「植える」の意味。器の中を見ると、人がひざまずいて木をささげもつ姿を見ることができます。
鐘は複数個を組み合わせ、複雑な音階を奏でることもできます。本作では、武功を誇るヒョウ羌がその功績を韓宗、 晋公、周王に認められたと誇らしげに記しています。

《ヒョウ羌鐘 (ひょうきょうしょう)》 戦国前期/ BCE5c
鏡にもさまざまな文様とともに銘文が記されています。ここでは君主に忘れ去られていくのを嘆くなど、バリエーションに富んだ銘文を見ることができます。
秦王政(始皇帝)の26年に、始めて作られた重さを計るときに基準として用いる錘の一種。 銘文には始皇帝による功績を高らかに喧伝し、計量に不正が疑われる場合には、この錘を用いて疑義を正すことを命ずる内容が記されています。
◆◆第4章 中国青銅器鑑賞の歴史◆◆
第4章では、中国青銅器の鑑賞の歴史と、それが美術工芸品に与えた影響について詳しく見ていきます。
時代とともに徐々に日用品としての性格を強めていった青銅器ですが、宋時代になると古器物への関心が高まり、殷周青銅器が再評価されるようになります。泉屋博古館の名称は、住友が江戸時代に使用した屋号 「泉屋」 と、 北宋時代に編纂された青銅器図録である 『宣和博古図録』 に由来するとされています。
《宣和博古図録 (せんなはくこずろく)》 初版:北宋/ CE12c 亦政堂重修版:清/ CE18c宋時代には殷周青銅器を模した「倣古銅器(ほうこどうき)」が数多く製作されるようになり、交易を通じて中世の日本にももたらされ、「唐物」として珍重されるようになります。

《金銀錯獣形尊 (きんぎんさくじゅうけいそん) 》北宋/ CE10-12c

《金銀錯獣形尊 (きんぎんさくじゅうけいそん) 》北宋/ CE10-12c
第15代住友吉左衞門友純 (号: 春翠) は、煎茶に傾倒しており、煎茶会で使う床飾りのために青銅器を購入したのが青銅器コレクションのきっかけでした。

展示風景より、《キ文筒形卣(きもんつつがたゆう)》 西周前期/ BCE11-10c(右下)は煎茶の床飾りとして住友春翠がはじめて購入した青銅器
明治44年から刊行が開始された住友コレクションの青銅器図録《泉屋清賞 》 。全点コロタイプ印刷による写真が掲載され、青銅器の考古学的・美術史的研究を促進した画期的な図録でした 。
本展にあわせて、展覧会の公式ガイドブックも兼ねた、国内では希少な中国青銅器の入門書も刊行されました。
この入門書とともに、本展を鑑賞することで、中国青銅器の奥深い世界をさらに楽しむことができそうです。一般書店、オンライン書店のほかミュージアムショップでも販売中。
「太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門 (とんぼの本) 」
「太古の奇想と超絶技巧 中国青銅器入門 (とんぼの本) 」
出版社:新潮社 単行本(ソフトカバー) 128ページ 山本 堯 (著)
担当学芸員によるスライド解説トークや、講演会、実際に鋳造を体験することのできるワークショップまで、中国青銅器をさらに楽しむための各種イベントも開催されます。
はるか3,000年前の古代中国で生み出された奇想と超絶技巧の数々、さらにはその造形が後世の工芸に与えた影響まで、古代中国文明が凝縮された中国青銅器を多様な切り口から楽しめる展覧会。
神秘的で驚異の青銅器ワールドをぜひ会場で体験してみてください。
神秘的で驚異の青銅器ワールドをぜひ会場で体験してみてください。
【展覧会概要】
泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展IV「不変/普遍の造形 ─住友コレクション中国青銅器名品選─」
会期:2023年1月14日(土)〜2月26日(日)
会場: 泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
開館時間:11:00~18:00(金曜日は19:00まで開館)
※入館は閉館30分前まで
休館日 :月曜日
観覧料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 600円(500円)、中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体料金
※障がい者手帳の提示者本人および同伴者1名まで無料
※泉屋博古館東京年間パスポート:東京館受付にて販売(税込4,000円)詳細はhttps://sen-oku.or.jp/annualpass_tokyo/
*泉屋博古館東京の開館期間中に何度でも入館可能
※障がい者手帳の提示者本人および同伴者1名まで無料
※泉屋博古館東京年間パスポート:東京館受付にて販売(税込4,000円)詳細はhttps://sen-oku.or.jp/annualpass_tokyo/
*泉屋博古館東京の開館期間中に何度でも入館可能
*購入日の翌年同日まで有効
*記名の本人と同伴1名が利用可
泉屋博古館東京ウェブサイト https://sen-oku.or.jp/tokyo/