丸紅ギャラリーは、「古今東西の美が共鳴する空間」をコンセプトに、2021年11月に開館したギャラリーです。丸紅が蒐集してきた江戸期を中心とする染織品や染織図案、西欧絵画、近代日本絵画などから構成される「丸紅コレクション」を、さまざまなテーマのもとで展示・公開しています。
IMG20221210153747
丸紅コレクションの歴史

開館記念展の第3弾となる「ボッティチェリ特別展《美しきシモネッタ》」では、イタリア・ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェリが手がけたテンペラ画《美しきシモネッタ》を展示。
main2

“テンペラ”とは、イタリア語の「tempera」が語源で「混ぜ合わせる」という意味。粉末状の顔料を、布や紙などに固定させる役目の油などを適度に混ぜ合わせて描いたものが“テンペラ画”で、油彩画の技術が発展する前、およそ15世紀半ばくらいまではよく使われていました。ボッティチェリは、テンペラ画の代表的な作家として知られています。

日本にある唯一のボッティチェリ作品である同作は、1808年にイタリアで発見され、その後、フランス、イギリス、ドイツ、そして再びイギリスと、延べ5カ国を経て、1969年から丸紅の所有となりました。ナチスの強奪品であった時期もあったそうです。ボッティチェリの作品で、19世紀初めまで遡って来歴を辿れる作品はあまりありません。
本展では、この作品の来歴に関する資料や、他のシモネッタの肖像画との比較による制作年に関する新たな推論など、さまざまな角度からこの作品の魅力を紹介しています。作品に対する理解を深めるため、モデルとなっているシモネッタ・ヴェスプッチや、描いたボッティチェリについての関連資料も豊富にパネルで紹介され、より楽しく作品を鑑賞することができます。

シモネッタ・ヴェスプッチは1475年にロレンツォ・ディ・メディチ主催の「大騎馬試合」で美の女王に選ばれた絶世の美女で、同試合の勝利者となったロレンツォの弟ジュリアーノの恋人と噂されましたが、胸の病で1476年に22歳の若さで夭折しました。彼女の美しさと、ジュリアーノとの恋物語はポリツィアーノやボッティチェリやピエロ・ディ・コシモなど多くの詩人や画家の想像力を刺激しました。ボッティチェリの傑作「春」や「ヴィーナスの誕生」も彼女をモデルにしているといわれています。
IMG20221210154413
1階ロビーでは巨大なシモネッタが迎えてくれます。

さまざまな角度から作品の知られざる魅力を紐解く本展。
ボッティチェリが19世紀初頭には忘れ去られた存在で、ラファエル前派の画家たちの再評価により甦った画家であることは初めて知りました。
この作品の来歴自体がドラマであり、さまざまな人々や地域を経て、今ここにこの絵があると思うと、感慨深いものがありました。展示作品は1点のみですが、見ごたえがあります。
今回の特別展に合わせ、絵画の世界をより深く味わう演奏会や講演会なども企画されています。時代を超えて愛されてきた美女をぜひ会場でご覧ください。
IMG20221210153737
会場入口

<丸紅ギャラリー開館記念展Ⅲ ボッティチェリ特別展 《美しきシモネッタ》開催概要>
開催期間 2022年12月1日(木)~2023年1月31日(火)
開館時間 10時~17時(入館は16時半まで)
休館日 日曜、祝日、年末年始(2022年12月29日~2023年1月3日)
※その他、ビルの休業日に準じます。開館日は丸紅ギャラリーHPでご確認下さい。
入館料 一般500円(高校生以下無料)
※障がい者手帳をお持ちの方と介助者の方1名は無料
※着物、浴衣など、和装でのご来館の方は無料
※入館料は全額「社会福祉法人 丸紅基金」に寄付されます。
美術館ホームページ https://www.marubeni.com/gallery/exhibition/