展覧会「国宝 雪松図と吉祥づくし」が、東京・日本橋の三井記念美術館にて、2023年1月28日(土)まで開催中です。
チラシ

三井記念美術館のコレクションを代表する国宝《雪松図屏風》は、長命と永遠の象徴である松が大きく描かれ、金泥や金砂子できらびやかに彩られた画面からは、厳かな中にも祝祭的な、おめでたい雰囲気が伝わってきます。
本展では、長寿や子孫繁栄、富貴など、縁起のよい主題の作品をあわせて展示し、この作品の「おめでたい絵画」としての一側面に光を当てます。
「改修工事による館内と展示ケース内照明のLED化により、照明の微妙な調整ができるようになり、この作品も、これまで以上に美しく鑑賞できるようになりました。」(本展の担当学芸員の藤原幹太さん)
三井_吉祥 (25)
国宝《雪松図屏風》 円山応挙筆 江戸時代・18世紀

また、寿老人や大黒天などの七福神をはじめとする、福の神にまつわる三井家ゆかりの品々もあわせて展示されています。
三井_吉祥 (167)
展示室7展示風景より、七福神に、朝日、松竹梅、鶴亀と「縁起物の全種盛り」といった趣の《七福神図》など、お正月の床の間を飾るにふさわしい作品が並びます。

展示室1では、調度品や茶道具を中心に、人々の生活空間を彩った、牡丹などの富貴な花をモチーフにした作品を見ることができます。
IMG20221130131902
展示室1展示風景より

紀州徳川家で飼われていた孔雀の卵を使用した香合。内側には牡丹が蒔絵で描かれています。
三井_吉祥 (107)
《孔雀卵香合》了々斎好 江戸時代・19世紀

もと越前松平家の宝物で、それ以前は大阪城に伝わったとされる名品。
三井_雪松図 (8)
《青磁浮牡丹文不遊環耳付花入》 南宋~元時代・13 ~ 14世紀

展示室3、4は、絵画・調度品にみられる様々な長寿、多子にまつわるモチーフを紹介。
茶室には、手前に多産の象徴である兎をモチーフにした楽茶碗、床の間には祝言能「高砂」に基づく掛軸が飾られています。
IMG20221130131956
展示室3展示風景より、《黒楽兎彫文茶碗 》樂旦入 江戸時代・19世紀、《高砂図》(伝)狩野元信 桃山~江戸時代・16 ~ 17世紀

左は明治期の三井家の人々の書画の合作 鶴、亀、松竹梅などおめでたいモチーフが描かれています。
三井_雪松図 (1)
右から:《双鶴図》円山応挙 江戸時代・寛政 4 年(1792)、《朝日鶴亀松竹梅鶯書画軸》三井高福ほか 明治18年(1885)

独特の形状が目を引く香炉は、謡曲「白楽」に基づく作品で、今回久々の展示。仁清や乾山の作風を意識した箱も併せて展示されています。
三井_吉祥 (21)
《紫交趾写蓬莱山舟形香炉 乾山写竜田川絵箱入》永樂得全 明治40年(1907

中国において「猫」の字は、長寿を意味する「耄(ぼう)」の字と発音が近いことから、猫の絵画は縁起物として、時代を問わず多くの人びとに愛されてきました。
三井_吉祥 (26)
左から:《麝香猫図》(伝)徽宗 明時代・16 ~ 17世紀、《藤花独猫図》 沈南蘋 清時代・18世紀

郭子儀は中国、唐代に安禄山の乱で功を立て名を挙げた武将。“長寿富貴”“子孫繁栄”の縁起の良い画題として頻繁に描かれました。
三井_雪松図と吉祥 (159)
《郭子儀祝賀図》円山応挙 江戸時代・安永 4 年(1775)

沈南蘋は、中国清代の画家。江戸時代に来日し2年間弱の滞在の間、写生的な花鳥画の技法を伝え、応挙や伊藤若冲など江戸中期の画家に多大な影響を与えました。展示作品では、富貴のイメージが託された枇杷、長寿と子孫繁栄、両方のモチーフであるライチ、多子と子孫繁栄の象徴である瓜や葡萄など、さまざまな吉祥画題をみることができます。
三井_雪松図 (2)
展示室3展示風家より、沈南蘋の作品

出雲松江藩主の松平不昧(1751~ 1818)は、藩財政立て直しの後、茶道具の収集に力を注ぎました。その収集品はのちに「雲州名物」と呼ばれ、茶の湯や美術の愛好家から高い評価を受けています。この2点は松平不昧旧蔵の品。
三井_雪松図 (9)
左から:《柘榴図》(伝)牧谿 南宋時代・13世紀、《蓮燕図》(伝)牧谿 南宋時代・13世紀

展示室2、5では、身近な鳥から幻の鳥まで、幅広い「縁起物の鳥」の世界が楽しめます。
三井_吉祥 (65)
展示室5展示風景より、和歌から夫婦円満の縁起物としてのイメージが付された雉子をモチーフにした香炉などの展示

見込みに表された尾長鳥を伝説上の鳥「鸞」に見立て、《鸞天目》と称されてきた盞。鸞は鳳凰の一種とされ、君主が徳をもって世を治めた時にのみ姿を現すとされる瑞鳥です。
三井_吉祥 (10)
重要文化財《玳皮盞 鸞天目》南宋時代・12 ~ 13世紀

文台天板と硯箱蓋裏には、子孫繁栄の象徴といわれる親子の雉子が高蒔絵で表されています。
三井_雪松図 (10)
左から:《桜雉子蒔絵文台》 江戸時代・18世紀、《桜雉子蒔絵硯箱 》江戸時代・18世紀

疫病除けの玩具「みみずく達磨」を中心に描いた掛軸は、円山応挙の弟子である源琦の作です。台上の右側は、北三井家で実際に飼われていた鶴の羽。三井物産社長なども務めた三井高明は500羽(!)ほどの鳥を飼う、大変な愛鳥家だったそうです。
三井_雪松図 (11)
上:《東都手遊図 》源琦 江戸時代・天明 6 年(1786)
下右:《真鶴羽箒 前後軒園中鶴羽》飛来一閑 明治時代・19世紀

燕、雀、文鳥、メジロ、セキレイなど 50羽超の鳥が描かれた額。中心に大きく描かれた尾の長い鳥は寿帯鳥と呼ばれ、東洋の花鳥画において伝統的な、縁起の良いモチーフの一つです。
三井_吉祥 (158)
《百鳥図額》 国井応文 江戸~明治時代・19世紀

展示室6には、七福神など縁起のよいテーマにまつわる香合が展示されています。
三井_吉祥 (74)
展示室6展示風景より

展示室7では、三井家ゆかりの品々を紹介するほか、館蔵の能面から福の神にまつわる作品を展示します。
三井_雪松図 (6)
展示室7展示風景より、鳳凰が織り表された豪華な狩衣や、天下泰平、五穀豊穣を祈る演目で使用される《翁》など福徳神にまつわる能面の展示

寿老人は、七福神の一つで長寿を授ける神。鹿を伴って巻物をつけた杖を携えるというのが定型の姿ですが、右の掛軸では短身長頭で、福禄寿のようにも見えます。
実は南極星の化身ともいわれる福禄寿と寿老人は似た性格をもっていて、混同されることもありました。威厳を示すように険しい顔で描かれています。
三井_吉祥 (85)
左から:《寿老人置物》永樂正全 大正~昭和時代・20世紀、《寿老人図 》(伝)秋月等観 室町時代・15 〜 16世紀

「七福神」の中でも、商売繁盛に結び付く大黒天・恵比寿の二神は、商家である三井家にとって特に重視されていました。右は、江戸前期に活躍した、三井家の創業者といわれる三井高利の遺品を収めた箱。左は、三井家の行事の際に飾られた対幅で、明治期に三井高福が、ほぼ同じ構図で描いた作品も展示されています。
三井_雪松図 (12)
右から:《大黒天図(三井高利遺品 頭巾・十徳・足袋箱蓋)》(伝)尾形光琳 江戸時代・17 ~ 18世紀、《恵比寿・大黒図》  三井高房 江戸時代・延享元年(1744) 

左は、同時期に描かれたものではなく、段階的に絵を描き加えていった三井家の人々による合作です。注目は左下にある「6才 宝珠」のサイン。これだけ署名がなく、おそらく家族団らんの場で、周りから勧められて子どもが書いたサインと考えられます。
三井_吉祥 (188)
左:《大黒図寄合描》三井高祐ほか 江戸~明治時代・19 ~ 20世紀
リニューアル後初の公開となる《雪松図》と、縁起の良いモチーフが表されたおめでたい美術作品をとおして、新たな年の訪れを祝ってみてはどうでしょうか。
※会場内は撮影禁止です。展示室の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。

【展覧会概要】
展覧会「国宝 雪松図と吉祥づくし」
会期:2022年12月1日(木)~2023年1月28日(土)
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館 7階
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(1月9日(月・祝)は開館)、年末年始(12月26日(月)~1月3日(火))、1月10日(火)
入館料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 500円(400円)、中学生以下 無料
※70歳以上は800円(要証明)
※リピーター割引:会期中、一般券ないし学生券の半券の提示により、2回目以降は( )内の割引料金で入館可
※障害者手帳の提示者および介護者1名は無料(ミライロID可)
※開催内容は変更となる場合あり(最新情報については、美術館ホームページないしハローダイヤルにて確認のこと)
三井記念美術館ホームページ:https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html