皆さんは、「鬼」について、どのようなイメージをお持ちですか?最近では鬼と化した妹を人間に戻すために鬼たちと戦う「鬼滅の刃」を思い浮かべる方も多いかもしれません。また、節分のとき「鬼は外、福は内」の掛け声とともに、豆まきをしたという方も多いのではないでしょうか。
古来、神話・伝説、芸能、小説、マンガ、アニメ、ゲームに至るまで、鬼が登場する創作物は多く、それだけ日本人は、古くから鬼の存在を信じ、身近な存在として生きてきたといえます。
江戸時代の読本などを題材とする浮世絵にも、鬼は多く登場しています。
![<北斎 百鬼見参>展チラシ-2](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/7/9/79ab623c-s.jpg)
本展では、北斎や門人による、怖い鬼、哀しい鬼、愛すべき鬼など、前期・後期あわせて約145 点の鬼の浮世絵が集結!
人気の錦絵や版本などから鬼に関連する作品を紹介し、北斎がどのように鬼を捉え、表現してきたかに迫ります。
また、すみだ北斎美術館初公開の貴重な北斎の肉筆画も展示されます。
北斎は、江戸時代にはすでに定型化していた鬼らしい姿の鬼、愛嬌のある滑稽な鬼も描く一方、怖い鬼、角も牙もなく人と変わらない姿のものまで、多種多様な鬼を描いています。
![IMG_20220620_170440](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/f/3f4905ed-s.jpg)
会場風景
本展は、4章構成。
1 章 鬼とは何か/2 章 鬼となった人、鬼にあった人/3 章 神話・物語のなかの鬼/4 章 親しまれる鬼
【1 章 鬼とは何か】
本章では北斎の作品を通して、江戸時代の人々がどのように鬼をイメージし、どのような存在を鬼と考えていたかを紐解いていきます。
「鬼」とは、この字が生まれた中国では死者の霊を意味していました。それが日本に伝わり、異界の恐ろしいものを「鬼」と呼ぶようになりました。
「鬼」とは、この字が生まれた中国では死者の霊を意味していました。それが日本に伝わり、異界の恐ろしいものを「鬼」と呼ぶようになりました。
![北斎 (201)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/1/319dd137-s.jpg)
1 章展示風景
釈迦が弟子を遣わし生きながら地獄に落とされた従弟を救う場面。筋骨隆々の牛頭馬頭の鬼たちが描かれています。
鍾馗を邪鬼悪病除けにする風習は、江戸時代には端午の節句として盛んに行われるようになりました。署名から嘉永元年に端午の節句のために制作されたことがわかる新出の作品。卍楼北鷲と北斎の師弟関係はいまだ謎ですが、画風は北斎に似ています。
![北斎 (89)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/d/5/d59ce568-s.jpg)
卍楼北鵞 「鍾馗図」 すみだ北斎美術館蔵(前期)
【2 章 鬼となった人、鬼にあった人】
日本の歴史において、鬼となった人、鬼にあった人の存在が数多く伝えられています。本章では実在した歴史上の人物のうち、鬼となった人、鬼にあったとされる人々の事績やエピソードをもとに制作された作品を紹介します。
![北斎 (94)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/9/1/913d90f9-s.jpg)
2章展示風景
政敵によって大宰府へ左遷された菅原道真、平治の乱で敗れた悪源太義平など、鬼にまつわるさまざまなエピソードから、古来日本人が、不幸のうちに亡くなった人々を鬼として恐れ、不思議な出来事を鬼と結びつけて考えてきたことがわかります。
![北斎 (121)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/9/39361576-s.jpg)
第2章展示風景より、菅原道真を題材にした作品
一方で鬼に助けられた人もいます。遣唐使の吉備真備が、唐の帝の前で漢詩を読むよう命じられますが順不同に記された詩文であったため困っていると、一匹の蜘蛛が降りてきて、その糸筋をたどってみると文を読みおえることができたという伝説に基づいた作品。
![北斎 (110)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/6/e/6e1818b2-s.jpg)
魚屋北溪 「尚歯会番続 吉備大臣」すみだ北斎美術館蔵(前期)
12世紀に制作された『吉備大臣入唐絵巻』では、真備が唐の人々の仕掛ける罠を、鬼となった阿倍仲麻呂の力を借りながら切り抜ける活躍が描かれています。古くから真備が遠い異国の地で鬼に助けられたという伝説が流布していたのでしょう。
また、修験道の祖・役小角や陰陽師の安倍晴明のように、強力な呪術で鬼を使役した人々もいます。
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2章展示風景より、役小角を題材にした北斎の作品
角大師とは、平安前期の天台宗の僧、良源が鬼に化身した姿を指します。良源は自らにとりついた疫病神を法力で退散させましたが、疫病に苦しむ民を救うため一心に念じて 2 本角の痩せた鬼の姿となり、それを弟子に写させ護符にしたといいます。本作は北斎門人の蹄斎北馬が、角大師と蝸牛を洒脱な筆づかいで描いた肉筆画です。
![北斎 (143)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/c/0/c062c330-s.jpg)
蹄斎北馬 「角大師と蝸牛図」すみだ北斎美術館蔵(前期)
【3 章 神話・物語のなかの鬼】
日本の神話・物語には、数多くの鬼が登場します。江戸時代には、そうした鬼たちが錦絵や版本などでも広く知られるようになり、北斎も作品としています。本章では日本神話や伝説、小説・演劇などの物語に登場する恐ろしい鬼、哀しい鬼、強者のイメージとしての鬼などを集め、さまざまな鬼の様相を紹介します。
![IMG_20220620_181243](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/1/2/12ef02bc-s.jpg)
3章展示風景
平安中期の武将源頼光とその家臣の四天王は数々の鬼退治の伝説で知られています。本作は四天王の筆頭である渡辺綱が羅生門の鬼を退治する話を描いたもの。
![北斎 (174)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/1/b/1bcbb1e0-s.jpg)
葛飾北斎 「羅生門」すみだ北斎美術館蔵(前期)
武勇で名高い平安中期の武将・源頼光が、鬼の頭領・酒呑童子を退治する様子を、見開きのページを縦に使って描いています。頼光によって切断された酒呑童子の首が、不気味な笑みを浮かべて中空に舞っています。
葛飾北斎『絵本和漢誉』大江山の鬼賊酒顚童子を退治す 源の頼光朝臣 すみだ北斎美術館蔵(通期)
日本の神話や物語には、能の「道成寺」の女や『源氏物語』の六条御息所、奥州安達ヶ原・浅草浅茅ヶ原の老婆のように、強い愛着や業、哀しみの果てに鬼となった女たちの登場する話があります。
北斎には珍しい能を題材にした肉筆画「道成寺図」は、修復後初公開。すみだ北斎美術館での展示も初で、前期のみの展示(後期には高精細複製画を展示)。
![北斎 (212)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/4/c/4cf59858-s.jpg)
3章展示風景より、葛飾北斎「道成寺図」(左)すみだ北斎美術館蔵(前期)と能関連の展示
今回の展示のために、「道成寺図」は本紙部分の修復と周りの掛け軸表装の改装を行い、絵の周囲の中廻しと呼ばれる部分は、「道成寺」に因んだ迫力あるものにしたそうです。
【4 章 親しまれる鬼】
鬼は恐れられるだけではなく、親しまれる存在でもありました。本章では暮らしの中の身近な鬼、ユーモラスな鬼を描いた作品が楽しめます。
![IMG_20220620_181851](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/e/1/e1867c77-s.jpg)
4 章展示風景
金太郎や桃太郎などの昔話に登場する鬼は、多くの人が子どもの頃から慣れ親しんだ存在でもあります。
本作は、金太郎が節分の豆まきをしているところを描いたもの。足元の小鬼は逃げるどころか豆を拾い集めたり、太刀を盗もうとしたりしています。
![北斎 (4)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/7/f/7f2134ce-s.jpg)
葛飾北斎「豆まきをする金太郎」すみだ北斎美術館蔵(前期)
![IMG_20220620_170734](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/1/3/1366ebb0-s.jpg)
葛飾北斎 『秀画一覧』 桃太郎 すみだ北斎美術館蔵(前期)
本作は、金太郎が節分の豆まきをしているところを描いたもの。足元の小鬼は逃げるどころか豆を拾い集めたり、太刀を盗もうとしたりしています。
![北斎 (4)](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/7/f/7f2134ce-s.jpg)
葛飾北斎「豆まきをする金太郎」すみだ北斎美術館蔵(前期)
![IMG_20220620_170734](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/1/3/1366ebb0-s.jpg)
葛飾北斎 『秀画一覧』 桃太郎 すみだ北斎美術館蔵(前期)
数少ない北斎の鬼を描いた肉筆画も今回展示されています。落款から、北斎が最晩年のとき門人に与えたものとわかります。
![IMG_20220620_170855](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/a/6/a6792e3a-s.jpg)
葛飾北斎「着衣鬼図」佐野美術館蔵 (前期)
江戸時代には、浄瑠璃・歌舞伎、落語、浮世絵や大津絵といった庶民文化の中で鬼が取り上げられ、鬼の滑稽で愛嬌のある側面も注目されるようになり、鬼が親しまれる存在となっていきます。大津宿の土産物・大津絵の寒念仏の鬼は、江戸時代、東海道の旅人たちが魔除けや土産物として買い求めた人気キャラクターでもありました。このページでは、大津絵の「鬼の寒念仏」の描き方が説明されています。
![IMG_20220620_170837](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/c/9/c9240f8c-s.jpg)
葛飾北斎 「『北斎略画手ほどき』」(通期)
鑑賞後はミュージアムショップにもぜひお立ち寄りください。
鑑賞後はミュージアムショップにもぜひお立ち寄りください。
下はもふもふ感いっぱいの邪鬼のポーチ。
邪鬼ソックス(!)もあります。
![IMG_20220620_182915](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/f/3f2aea3b-s.jpg)
![IMG_20220620_182905](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/5/35a69ca0-s.jpg)
本展公式図録も、ミュージアムショップをはじめ、全国書店で発売中。本展ですみだ北斎美術館初公開の肉筆画「道成寺図」のほか、前期、後期全作品の図版と解説を掲載。拡大図版も多数掲載されているので、細かい部分の表現もよくわかります。鬼才・北斎がどのように鬼を捉え、表現したかを詳細に知ることができる保存版の1冊です。
![IMG_20220620_182915](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/f/3f2aea3b-s.jpg)
鬼瓦のマグネットも。鬼瓦は、恐ろしい表情の鬼の顔で瓦を装飾することで魔除けとして建物を守ります。
![IMG_20220620_182905](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/5/35a69ca0-s.jpg)
本展公式図録も、ミュージアムショップをはじめ、全国書店で発売中。本展ですみだ北斎美術館初公開の肉筆画「道成寺図」のほか、前期、後期全作品の図版と解説を掲載。拡大図版も多数掲載されているので、細かい部分の表現もよくわかります。鬼才・北斎がどのように鬼を捉え、表現したかを詳細に知ることができる保存版の1冊です。
![IMG_20220620_182751](https://livedoor.blogimg.jp/kaisyuucom/imgs/3/9/395ba22b-s.jpg)
タイトル「北斎 百鬼見参」価格:2,640円(税込)単行本192ページ
怖い鬼、哀しい鬼、愛すべき鬼…、展覧会に集結したさまざまな鬼たちをぜひ会場でお楽しみください。
会期:2022年6月21日(火)〜8月28日(日) 前後期で一部展示替えを予定
[前期 6月21日(火)〜7月24日(日) / 後期 7月26日(火)〜8月28日(日)]
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢 2-7-2
開館時間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜日(7月18日(月・祝)は開館)、7月19日(火)
観覧料:一般 1,200円、高校生・大学生・65歳以上 900円、中学生・障がい者 400円、小学生以下 無料
※中学生、高校生、大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳または学生証を提示
※65 歳以上は年齢を証明できるものを提示
※身体障がい者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などの所持者および付添者1名までは、障がい者料金で観覧可(入館時に身体障がい者手帳などを提示)
※本展のチケットで会期中観覧日当日に限りAURORA(常設展示室)も観覧可
●新型コロナウイルス感染予防・拡大防止のため、会期・開館時間・観覧料・イベント・講演会の開催など変更、中止の可能性がございます。
●最新の状況は、すみだ北斎美術館公式ホームページにて最新情報をご確認ください。
すみだ北斎美術館公式ホームページhttps://hokusai-museum.jp/