珠玉の印象派コレクションを誇るイスラエル博物館のコレクションから、印象派を中心に約70点の作品を厳選して展観する展覧会「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」が、三菱一号館美術館で開催中です。
イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 展覧会チラシ-1

【本展の見どころ】
☆日本初公開の名作の数々
イスラエルの都市エルサレムに所在するイスラエル博物館の所蔵品は50万点にものぼり、近現代の美術のコレクションも充実していますが、大多数はこれまで来日したことがありません。出品されるイスラエル博物館の印象派とポスト印象派の69点の展示作品のうち、なんと59点が初来日!
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クロード・モネ「睡蓮の池」イスラエル博物館蔵 
モネは、1903年から08年にかけて、同じ構図、異なる時間帯で睡蓮を数多く描き、1909年にデュラン=リュエル画廊で開催した個展「睡蓮:水の風景連作」でそれら48点をまとめて発表しました。今回出展の《睡蓮の池》はこのときに発表した作品のひとつ。穏やかな水面に睡蓮が浮かび、水面に写った雲や空、木々なども巧みに描かれています。

☆印象派を中心に、バルビゾン派からナビ派まで珠玉の作品が揃う
印象派を中心に、印象派に先駆けたバルビゾン派のコロー、ドービニー、そしてピサロ、シスレー、モネ、ルノワール、この流れを発展させたポスト印象派のセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガン、さらに印象派の光と色彩の表現を独特の親密な世界に移し変えたナビ派のボナールやヴュイヤールなどの作品を通して、印象派の光の系譜をたどることができます。
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シャルル=フランソワ・ドービニー 「花咲くリンゴの木」イスラエル博物館蔵

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ピエール・ボナール 「食堂」 イスラエル博物館蔵

☆モネ「睡蓮」連作の特別展示
今回の展覧会では、DIC川村記念美術館と和泉市久保惣記念美術館が所蔵する2点の《睡蓮》も特別展示。いずれも「睡蓮:水の風景連作」展の出品作で、イスラエル博物館所蔵の《睡蓮の池》とはほぼ同じ構図のもの。11月30日からは、東京富士美術館所蔵の《睡蓮》も展示予定。見比べながら鑑賞できる貴重な機会です。
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特別展示「睡蓮:水の風景連作」の展示風景より 左:クロード・モネ 「睡蓮」 和泉市久保惣記念美術館蔵、右:クロード・モネ 「睡蓮」 DIC川村記念美術館蔵

本展は「光の系譜」をテーマに、「水の風景と反映」「自然と人のいる風景」「都市の情景」「人物と静物」という4章立て。イスラエル博物館のコレクションから、バルビゾン派から印象派の誕生と発展、ポスト印象派に至るまでの流れを紹介しています。

第1章「水の風景と反映」では、印象派に先駆けて戸外に赴き制作を行ったコローや印象派の画家たちが、水や水面を描いた作品を紹介。さまざまな画家による天候や時間によって千変万化する、水と水の反射や、光の動きの表現が楽しめます。

コローは、柔らかな抒情的な筆致で、画家の家から見た池や周囲の木々、地元の人々などの風景を描きました。
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左:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「舟上の釣り人」イスラエル博物館蔵
右:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「魚を運ぶ釣り人」イスラエル博物館蔵

セザンヌ の作品は、いずれも1865年に描いたもの。森、川、海、岩などの風景を絵具の厚みを感じる筆触で描いています。
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左:ポール・セザンヌ 「川の湾曲部」イスラエル博物館蔵
右:ポール・セザンヌ 「エスタックの岩」イスラエル博物館蔵

印象派の先駆者ともいえるブータン。同じような構図で、時間の違いによる空と雲、大気の違いを美しく表現しています。ブーダンのほかクールベ、ドービニーの作品も展示。彼らの海や川、水の捉え方は、モネをはじめとする、後の印象派の画家たちに大きな影響を与えました。
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左:ウジェーヌ・ブーダン 「岸辺のボート」イスラエル博物館蔵
右:ウジェーヌ・ブーダン 「潮、海辺の日没」イスラエル博物館蔵

新印象主義のシニャックとレイセルベルヘの作品も。
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左:ポール・シニャック 「サモワの運河、曳舟」イスラエル博物館蔵
右:テオ・ファン・レイセルベルヘ 「地中海、ル・ラヴァンドゥー」イスラエル博物館蔵

印象派の画家たちは、身近な自然の営みの表現とともに、野外での労働も重要なモティーフとして描くようになります。第2章「自然と人のいる風景」では、自然とともに人の営みを表現した作品が紹介されています。
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左:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「樹々の間に差す陽光」イスラエル博物館蔵
右:ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「モルトフォンテーヌ、小さな柵へと続く道」イスラエル博物館蔵

印象派に影響を受けたゴッホやゴーガンも、自然のある風景を独自の視点で描きました。下は同時期に描かれたゴッホの作品。ポピーの花、麦畑やそこで働く農民など、南仏アルル近郊の農村での生活が描かれています。
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左:フィンセント・ファン・ゴッホ 「麦畑とポピー」イスラエル博物館蔵
右:フィンセント・ファン・ゴッホ 「プロヴァンスの収穫期」イスラエル博物館蔵

ゴーガンの作品は今回4点出展。全て同じ部屋に展示されています。
印象派を学び、ピサロの影響が残る作品、1887年マルティニーク滞在中に描いた作品、タヒチをモティーフにした作品、晩年の作品など、ゴーガンの様式や画風の変遷をたどることができます。
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第2章会場風景より、ゴーガンの作品が並ぶ会場

《ウパ ウパ(炎の踊り)》は、近代化・西欧化が進んだタヒチで禁じられていた、官能的な先住民の踊りを、《犬のいる風景》はマルケサス諸島のヒヴァ・オアの風景を描いたもの。
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左:ポール・ゴーガン 「ウパ ウパ(炎の踊り)」イスラエル博物館蔵
右:ポール・ゴーガン 「犬のいる風景」イスラエル博物館蔵

第3章「都市の情景」では、印象派とその後継者たちが、19世紀後半より急速に発展していったヨーロッパ近代都市の風景を描いた作品が紹介されています。

ピサロの風景画のほとんどは田園を描いたものですが、晩年にはパリやルーアンの都市風景の連作にも挑戦しています。本作は手前に人々が集うパリ・ルーヴル宮から続くテュイルリーの庭園の情景を描き、後方に1900年の万国博覧会に向けて建設中のオルセー駅の工事の様子を描いたもの。
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カミーユ・ピサロ 「テュイルリー宮庭園、午後の陽光」イスラエル博物館蔵

壁にいくつかの作品が掛けられた、アトリエの内部を描いた面白い構図の作品。左方には、画中画として1866年にサロンに出品した油彩画《障害競走(コースにて負傷するジョッキー)》が描かれています。
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エドガー・ドガ 「《障害競走》のあるアトリエ」イスラエル博物館蔵

ドイツで活躍したユダヤ系の画家レッサー・ユリィ。今回初めて知った画家ですが、出展作品はどれも秀逸。既に見た人たちの間で結構話題になっていますね。ベルリンを描いた作品からは、当時の街の雰囲気がよく伝わってきます。
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左:レッサー・ユリィ 「冬のベルリン」イスラエル博物館蔵
右:レッサー・ユリィ 「夜のポツダム広場」イスラエル博物館蔵

第4章「人物と静物」では、主に肖像画と、日々の暮らしを表現した静物画が展示。
《レストランゲの肖像》は、ルノワールが親しい友人を描いた作品。幅広の大胆な筆致で描かれていますが、モデルの穏やかでくつろいだ雰囲気がよく伝わってくる作品です。
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左から:ピエール=オーギュスト・ルノワール 「花で飾られた帽子の女」、ピエール=オーギュスト・ルノワール 「マダム・ポーランの肖像」、ピエール=オーギュスト・ルノワール 「レストランゲの肖像」いずれもイスラエル博物館蔵

ルノワールといえば美しい女性像で有名ですが、屋内外の情景や、静物画にも優れた作品を残しています。《花瓶にいけられた薔薇》は、美しい色彩で、赤やピンクのバラの匂い立つような華やかさを表現しています。
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左から:ピエール=オーギュスト・ルノワール 「静物」、ピエール=オーギュスト・ルノワール 「リンゴとキジ」、ピエール=オーギュスト・ルノワール 「花瓶にいけられた薔薇」いずれもイスラエル博物館蔵

19世紀末のパリで、前衛的な活動を行った若き芸術家のグループ「ナビ派」。ゴーガンから影響を受け、自らを「ナビ(預言者)」と呼んで、新たな芸術表現を模索しました。室内風景や日常生活など、身近な題材を描き「親密派」とも呼ばれた、ボナールやヴュイヤールの作品も出展されています。
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左から:エドゥアール・ヴュイヤール 「長椅子に座るミシア」、エドゥアール・ヴュイヤール 「エセル夫人、ナポリ通り」、エドゥアール・ヴュイヤール「 窓辺の女」いずれもイスラエル博物館蔵

■本展担当学芸員の安井さんが、展覧会の見どころ、魅力などについて語る【オンラインレクチャー】展覧会を語る「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」が10月29日 (金)に開催されます。詳細はこちら

■「印象派・光の系譜展」と「上野リチ展」の2つの展覧会に何度でも入場可能な“チェキ”を活用した「チェキパス」が期間・数量限定で販売中です。2,600円(税込)。“チェキ”のデザインは本展でも展示されている《グラン・ブーケ(大きな花束)》です!
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■グッズ
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展覧会特設ショップでは、ポストカード、クリアファイルなどのほか、イスラエル博物館から貴重な印象派のコレクション群が初めて一堂に会することを記念して、イスラエル発ライフスタイルブランドLaline(ラリン)の、ハンドクリームとハンドクリアジェルの特別セットも販売中です(価格:1,675円(税込))。

19世紀から20世紀初頭にかけての「光」をめぐる絵画の革新をたどる本展。
イスラエル博物館の所蔵品がまとまって館外で巡回展示されたことはほとんどないそうで、今回を逃すと2度と見られないかも!?
モネ、ルノワールといった人気のある画家の作品が並び、しかも日本初公開の作品が多数。会期末は混雑が予想されます。早めのご鑑賞をおすすめします!
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【概要】
会期:2021年10月15日(金)~2022年1月16日(日)
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2)
開館時間:10:00-18:00※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第二水曜日は21:00まで)
休館日:月曜日・年末年始(2021年12月31日、2022年1月1日)
入館料:一般1,900円/高校・大学生1,000円/小・中学生無料

※会場内の写真は主催者の特別の許可を得て撮影