縄文人の暮らしぶりを紹介する特別展「縄文2021─東京に生きた縄文人─」が江戸東京博物館で開催中です。
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今年7月、北海道・北東北の17の縄文遺跡群がユネスコの世界文化遺産への登録が決まったことで、縄文時代があらためて注目されています。
1万年以上にわたって続いた縄文時代。この長い時代を生きた縄文人の暮らしとは、どのようなものであったのか? 
本展は、縄文時代を生きた人びと、特に東京での縄文人の“生”の暮らしに焦点をあてた展覧会です。

江戸東京博物館は、これまで江戸東京の様々な暮らしや文化を歴史資料に基づいて復元・再現した展示を行ってきました。今回は、その実績を活かし、最新の調査成果を紹介するほか、縄文時代の出土品が、どのような場所でどのように利用されていたか、生活空間や道具を復元模型などを用いて具体的に再現しています。
また縄文人の姿を知るだけではなく、東京の縄文発掘史や考古学の未来、文化財の保護・活用についても学ぶことができます。展示室内撮影OKというのもうれしいポイントですね。
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全6章からなる本展覧会。会場入口で迎えてくれるのは、多摩ニュータウンのビーナス(土偶)。今から約5,380~5,320年前に作られたもので、今展の目玉のひとつです。2009年に大英博物館で開催された「土偶 The Power of DOGU」でも展示されました。にっこり微笑んでいるような表情がかわいい土偶です。
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多摩ニュータウンのビーナス(土偶) 多摩ニュータウンNo.471遺跡出土 縄文時代中期  東京都教育委員会蔵

展覧会の見どころをご紹介します。
1 東京の縄文遺跡発掘史
1万年以上も日本列島で続いた縄文時代。実は東京も、縄文文化が豊かな土地なのです。東京都内で発見された縄文時代の遺跡は、土器片のみが出土するものを含めて3,800か所以上確認されているそうです。
下記のサイトで東京都の縄文時代の遺跡が閲覧できます。
東京の縄文遺跡と言えば「貝塚」。貝塚とは大昔のゴミ捨て場で、貝以外にも動物の骨・土器・石器など様々なものが見つかっています。 
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日本で初めて考古学としての科学的調査が行なわれた遺跡である大森貝塚に関する展示

貝塚は縄文人の営みを考古学から解明できる重要な遺跡であるとともに、現代の海岸から離れた場所にあるものなどもあり、地形や自然の変化も知ることができます。日暮里延命院貝塚は縄文時代後期の遺跡。当時日暮里の台地の東側には干潟、その先に海があり、西側には森が広がっていました。
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2 さまざまな縄文石器
石器の歴史の中で、最も加工技術が発達し、石器の種類や量が豊富だったのが縄文時代です。縄文石器は時期によって種類や形に違いが見られます。
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中には日常的に使用したとは思われない奇妙な形をしたものもありますが、何のために作られたのかいまだにわからないそうです。
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3 多彩な素材で作られた道具類
土、石、骨などなど様々な素材から形作られた道具類は、当時の人びとの実際の生活の様子をかいま見せてくれます。
縄文時代の人びとは煮るための器としての土器に次第に文様をつけるようになり、中期には火焔式土器に代表されるように過度ともいえる装飾化、大型化が進みます。展示ではその形や文様の変化をたどることができ、造形の美しさとともに、どのように使ったのか?なぜこの形なのか?いろいろ想像しながら楽しめます。
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縄文時代には、樹木やさまざまな植物をもとに木器、漆器なども作られました。
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4 遠隔地を結ぶ地域間交流
黒曜石やヒスイなど、産地が特定の場所に限られるものが遠く離れた遺跡から出土していたり、離れた地域で流行していた土器が出土していることから、材料、資源を入手するための交易が縄文時代に行われていたことがわかります。出土したものから当時の流通ルートや人びとの交流の様子をたどることもできます。
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5 縄文時代のムラの再現模型
江戸東京博物館常設展示室では江戸東京の暮らしを再現した復元模型が楽しめますが、本展では、2つの復元模型で縄文時代のムラの様子を再現。

ムラ貝塚(西ヶ原貝塚)再現模型(原寸)
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多摩丘陵の環状集落の縮尺20分の1の再現展示。大地とともに暮らす当時の人びとの生活の様子を実感することができます。
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環状集落再現模型 部分 (多摩ニュータウンNo.107 遺跡) 復元年代:縄文時代中期 縮尺1/20

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環状集落再現模型 部分 (多摩ニュータウンNo.107 遺跡) 復元年代:縄文時代中期 縮尺1/20

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 環状集落再現模型 部分 (多摩ニュータウンNo.107 遺跡) 復元年代:縄文時代中期 縮尺1/20

下はまとまって捨てられたと思われる土器の一群。完成品もあり、単なる不用品とは思われませんが、どのような意図があったのでしょうか?
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6 縄文時代の乗り物
下は縄文時代のものと推定されているカヤ材で作られた長さ6.2mの丸木舟。縄文時代の人々にとって舟は主要な交通手段でした。
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丸木舟 千葉県落合遺跡出土 縄文時代後期 江戸東京たてもの園蔵

7 暮らしの中の道具
当時の人びとが使用していたさまざまな道具も展示。現代につながる形状のものも多いというから驚きます。
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また、既に編み物をしており、服はもちろん耳飾り、腰飾りなどの装身具も身に着けていました。
下は耳飾り。どのように耳を飾ったかわかりますか?
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8 多彩な土偶が100点以上展示
東京都内では縄文中~晩期にかけての土偶や土面が多く発見されていて、展示されている土偶からは当時の人びとの姿や想いを知ることができます。
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100点以上展示された土偶の中には。思わず微笑んでしまうようなかわいい表情のものがあったり、怒っている(?)ような表情のものがあったり、表情、しぐさなどさまざまで、縄文時代の東京の人たちを本当に身近に感じることができます。ぜひお気に入りの一品を探してみてください。
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9 国宝の土偶2点が展示
国宝の土偶2点「縄文ビーナス」と「仮面の女神」が期間限定で公開!
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国宝 土偶(縄文のビーナス)茅野市所蔵 尖石縄文考古館保管
展示予定期間:10月19日(火)~11月14日(日)

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国宝 土偶(仮面の女神)茅野市所蔵  尖石縄文考古館保管
展示予定期間:11月16日(火)~12月5日(日)

また、江戸東京たてもの園では特別展「縄文2021ー縄文のくらしとたてものー」が2022年5月29日(日)まで開催中。本展と併せて見るとより楽しめそうですね。

最後に館内飲食店のコラボメニューのご案内。
館内1階の飲食店 レストラン「江戸博砂漠」と、カフェ「セリーズ」にて、特別展「縄文2021―東京に生きた縄文人―」期間限定の特別メニューが販売中。
カフェ「セリーズ」ではアーモンドとヘーゼルナッツを使用した生地4枚で、4種類のクリームをサンドし、8層に仕上げ、貝塚や遺物が含まれた地層をモチーフにしたケーキと、貝塚の貝の形をイメージしたマドレーヌがいただけます。
(左)マドレーヌ 1つ160円(税込)
(右)JOMON 450円(税込)トッピングにはチョコの石槍も♪
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プロローグとエピローグを合わせて6章からなる充実した展覧会。
東京という地域の縄文時代を考える大規模な展覧会は、1986年(昭和61)2月に銀座ソニービルで開幕した「第2回 東京の遺跡展」(主催・東京都教育委員会)以来、35年ぶり。縄文人の手仕事の技や造形美は、考古学だけでなく、アートの面からも楽しめるのではないでしょうか。
本展を通じて、縄文時代の東京を感じ取り、考古学の新たな楽しみ方を発見してみませんか。
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特別展「縄文2021─東京に生きた縄文人─」  博物館ホームページ
会場 東京都江戸東京博物館(東京都墨田区横網1-4-1、JR総武線 両国駅徒歩3分・都営地下鉄大江戸線 両国駅徒歩1分)
会期 2021年10月9日(土)~12月5日(日)
休館日 月曜日
開館時間 9:30~17:30(土曜日は19:30まで)※入館は閉館の30分前まで
観覧料 特別展専用券 一般 1,300円など *事前予約推奨
詳しくは博物館ホームページ参照
※会期・休館日・開館時間などは変更となる場合あり(最新情報は江戸東京博物館ホームページにて確認のこと)