浮世絵・金屏風・金襖絵といった日本美術の傑作を巨大映像で楽しめる新感覚のデジタルアート展「巨大映像で迫る五大絵師 -北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界-」が、大手町三井ホール(東京都千代田区)で開催中です。
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浮世絵を3Dデータとして構築、20億画素で超高精細にデジタルリマスター化することで、葛飾北斎や歌川広重といった絵師たちが表現した微細な凹凸などの技巧はもちろん、和紙の0.05mm程度の繊維の質感までも立体的に復元。また、金屏風や金襖絵の金箔、切箔、金砂子、金泥などの素材や、表現の緻密な違いまでも再現していて、本物の作品を見るのとはまた違った感覚で、美術鑑賞を楽しめます。 

本展覧会は会期中2つの上映プログラムが毎日入れ替わるため、既に1回見ているのですが、別のプログラムも見たい!と思い、再びやってきました。
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公式サイトにて日付ごとの上映作品リストが公開されているので、来場日の参考にしてください。
上映作品一覧はこちら
前回の感想はこちら

さて、2回目ですが、紹介する作品や音楽演出の違いもあり、前回以上に楽しめました!日本美術史を飾った5人の新しい映像体験を提供するデジタルアート展覧会。巨大スクリーンでの美術鑑賞は、どんな体験ができるのでしょうか。注目の同展をご紹介します。
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会場は全部で3つのエリアで構成されています。
五大絵師や日本美術に詳しくない方でも大丈夫。メイン会場に向かう前の「解説シアター」では、約20分、本展覧会の目玉ともいえる超高精細デジタル画像の楽しみ方と作品ごとの見どころを教えてもらえます。作品への理解を深めた後に作品の細部を画像で見ると、絵師の筆意やこだわりが本当によく見えてきます。
ちなみに、この解説シアターのナレーションを担当されているのはタレントの光浦靖子さん。

次にメイン会場の「3面シアター」。
本展覧会の目玉は、荘厳な音楽とド迫力の音響とともに3面巨大スクリーンに映し出される20分間の超高画質映像です。スクリーンの大きさは、縦7m・横45m。 
北斎の「富嶽三十六景」や広重の「東海道五拾三次」、俵屋宗達と尾形光琳が描いた二つの「風神雷神図屛風」などが、驚きの演出ともに絵巻のように展開。
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これだけの面積の巨大な絵画に囲まれると、まるで作品の中に入り込んだような感覚が味わえます。
巨大スクリーンに映し出される数々の名品の中では、雪が舞ったり、花吹雪が散ったり。会場のスピーカーからは、和太鼓や三味線の演奏が流れ、ときには大音量の雷鳴が轟きます。巨大ワイドスクリーン映像とドラマティックな音楽のコラボレーションは、ここでしかできない体験です。

3面シアターでは約10分のフォトタイムが設けられています。この時間中はメイン会場を自由に歩き回って、作品を背景に写真を撮ったりしてOK。 
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そしてラストの「Digital北斎✕広重コーナー」。緻密な部分を拡大表示しつつ、その見どころをわかりやすく解説するコーナーです。『冨嶽三十六景』および『東海道五拾三次』から厳選した58作品を、大型モニター12台で楽しめます。デジタルとはいえ、両作品を一度に楽しめるのは、貴重な機会ですよね。映像で旅する気分も味わえます。
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では、当日上映されたプログラムの中からいつくか作品をピックアップしてご紹介します。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」大きくうねる波と細かく飛び散る飛沫が目を引きますが、巨大スクリーンに投影することで、肉眼では気づきにくい波の表現や船上の人の表情など細かい部分までよくわかります。
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歌川広重「東海道五拾三次 日本橋 朝之景」は、朝焼けがわずかにまじる空の下、大名行列の一団と、日本橋の袂を行き交う行商人の姿を描いています。画面では、魚河岸で働く人々の様子や、犬の表情までよくわかります。
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おなじみ俵屋宗達の国宝「風神雷神図屛風」と尾形光琳 重要文化財「風神雷神図屛風」。
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光琳による風神雷神の方が、少しユーモラスかつ軽やかな雰囲気というのは、普通にみてもわかるのですが、拡大して見ると、目の向き、筆のタッチの違いまでがすごくよくわかります。ワイドスクリーンに映る、大きく見開いた目元で輝く金色の目、半開きの口元から覗く金色の歯、筋骨隆々とした体躯の風神雷神に囲まれると、飲み込まれそうな存在感を感じます。

伊藤若冲「仙人掌群鶏図」。若冲がこよなく愛した画題でもある鶏を、当時まだ珍しかったウチワサボテンとともに描いた襖絵です。この絵は何度も見ていますが、大画面に映し出された鶏は表情までよくわかり、まるで会話をしているように見えるのは楽しい発見でした。
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上の場面は、雌鳥が雄鳥に文句(?)を言っているように見えます。

同じく若冲の「百花の図」。若冲の精密な描写は拡大した映像になるとさらに際立ちます。花の細部や虫食いまで、丁寧に描いこまれています。
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作者不詳「平家物語図屛風」。これも拡大してみると迫力のある戦場の場面では、一人一人の表情まで細かく描きわけられているのがわかります。注目は、絵の中の絵「画中画」。これだけ拡大しても、画質は全く劣化せず、しっかり鑑賞できます。それだけ丁寧に描かれているということですが、映像技術もすごいですね。
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会場を出た先にあるショップでは、公式ガイドブックと作品関連グッズも発売中。巨大スクリーンで見た名画を自宅で楽しむこともできます。作品関連グッズもズラリ。目移りしてしまいますね。会場限定で公式ガイドブックも販売中です。
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今回、こんな細かいところまで描かれていたのかという新しい発見がいくつもありました。 作品の細部の魅力、面白さを知ったことで、今後実際の作品を見たときにも、新しい視点で見ることができるような気がします。

本展は、美術ファンはもちろん、普段アートに触れる機会が少ない方でも純粋にエンターテイメントとして楽しめるのではないでしょうか。日本絵画の入門編として子供たちにもおすすめです。

超高精細なデジタルアート技術によって、これまで体験できなかった美の世界が体験できるようになりました。
この夏は時空を超えたアート体験を楽しんでみませんか。
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巨大映像で迫る五大絵師 −北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界−  公式サイト
会期:2021年7月16日(金)~9月9日(木) 
開館時間:10:30~19:30 ※入館は閉館の60分前まで 
会場:大手町三井ホール住所:東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One 3F 
観覧料:一般 2,000円 / 大学生・専門学生 1,500円 / 中学生・高校生 当日1,000円※満70歳以上、小学生以下、障がい者の方(添付者原則1名まで)は入場無料※学生は学生証または生徒手帳、70歳以上及び小学生以下は年齢証明ができるもの、障がい者の方は障がい者手帳を来場時に提示。 
〈当日チケット購入〉当日チケット販売時間:10:30~18:15 ※定員枚数に達した段階で販売終了
販売場所:会場窓口※定員に空きがある場合のみ、当日チケットを販売。