すみだ北斎美術館では 2021年6月27日(日)まで「しりあがりサン北斎サン -クスッと笑える SHOW TIME!-」展が開催されています。ゆるいタッチの画風で、ギャグ漫画から社会派に至るまで、幅広い作品を送り出しているマンガ家のしりあがり寿サン。近年は、映像や現代アートなども手がけ、活躍の場を広げています。
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今回はそんなしりあがり寿サンが尊敬してやまぬ葛飾北斎の絵に、ちょっとイタズラを加えた作品を一挙公開!

2018年にすみだ北斎美術で開催した展覧会『ちょっと可笑しなほぼ三十六景 しりあがり寿北斎と戯れる』では、葛飾北斎の代表作《冨嶽三十六景》のパロディ作品が発表されました。
今回は、さらにパワーアップし。《青富士》《瑠璃富士》などのパロディ作品の新作のほか、原案となった北斎の作品など、約160点を展示。いたずら心と遊び心満載の、思わずクスっと笑える作品が大集合。しりあがりサン独自の視点で解釈された北斎の世界が楽しめます。
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《冨嶽三十六景 凱風快晴》をはじめ、本家葛飾北斎のオリジナルももちろん展示。
北斎の《東海道五十三次》《諸国瀧廻り》などの浮世絵、《椿説弓張月》などの版本など、北斎の画業も堪能できる展覧会です。

ちなみに本展のタイトルである「しりあがりサン北斎サン」の「サン」という言葉には、個人の名前のあとに敬称としてつける「さん」、絵をほめたたえるまたは批判・批評するという意味の「讃・賛」の2つの意味があるそうです。
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2人の肖像画。似てるかな?

第一展示室の入口は大きい「太陽から見た富士山」のパネルが皆様をお迎え。
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え? 富士山? どこに?ぜひ近寄って見つけてくださいね。
富士山入りバージョンは初公開だそうです。
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第1章 ちょっと可笑しな三十六景
この章では2018年に開催された「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 しりあがり寿北斎と戯れる」展で発表された作品に、新作を加えて展示。

北斎が描いた「冨嶽三十六景」が、36作では終わらなかったことから、しりあがりサン の前発表作「ちょっと可笑しなほぼ三十六景」 も作品数が更に増えました。「北斎漫画」の人物が登場する作品も展示されていますので、 作品内の「北斎漫画」の絵も探してみてください。元の構図を引用しつつ、大胆なアレンジを加えた作品は、どれもクスッと笑える面白さがあります。

「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 こわれやすい富士」(通期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵
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有名な北斎の「山下白雨」。しりあがりサンの作品ではなんと富士山にひびが!

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一番右が北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(前期)

しりあがりサンの作品では、銭湯で子供が大暴れ(中央・通期)。左の作品は入口パネルにあった「太陽から見た富士山」(通期)。波が太陽のフレアになっています。
上記2点©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

しりあがりサン「ポテトチップス六景」
2020年夏に、葛飾北斎生誕260年を記念 してカルビーから期間限定で発売された「すみだ北斎美術館監修ポテトチップスうすしお味」は、しりあがりサンと北斎のコラボレーション作品のパッケージでした。
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今回は、そのポテトチップスが出来上がるまでの過程が紹介されています。北斎の浮世絵の世界観はそのままに、展示された6 作を続けて見て行くとポテトチップスができる工程がわかります。
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しりあがり寿「ポテトチップス六景 つくった桶でイモ洗い」(通期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

現代スポーツであるゴルフも、浮世絵の世界になりました。作品の出典は、北斎の「富嶽三十六景」シリーズですが、浮世絵に描かれた世界が、現代の景色にとてもマッチしていることに驚きます。ゴルフ好きの方なら、こういう場所でプレイしたい!と思うのでは?
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右:しりあがり寿「二つの季節」(前期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

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右:しりあがり寿「湖面のグリーン」(前期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

第2章 よりぬき北斎サン
この章では「東海道五十三次」の 4 シリーズと「諸国瀧廻り」から作品をピックアップし、北斎の作品としりあがりサンの作品が併せて展示されています。
北斎は、「冨嶽三十六景」「富嶽百景」で富士山を描いたように、滝や橋に着目して描いたシリーズもあり、ひとつのテーマでいくつものシリーズ作品を手掛けました。
「東海道五十三次」のテーマでは7つのシリーズが発表されています。
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しりあがりサンの絵ではなんとケータイショップが登場!
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右:葛飾北斎 「東海道五十三次 戸塚」(前期)
左:しりあがり寿「東海道五十三次 戸塚 ケータイショップ 」(通期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

「五十三次江都の往かい」は、華やかな色彩が魅力的なシリーズです。左はしりあがりサンの作品。フキダシのコメントが入るだけで、ずいぶん見え方が違ってきますね~。
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右:葛飾北斎「五十三次江都の往かい につさか」(前期)
左:しりあがり寿「五十三次江都の往かい につさか イタズラ」(通期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

「諸国瀧廻り」は、「富嶽三十六景」の人気を受けて、瀧を題材にした名所絵のシリーズです。 
北斎は様々な条件によって変化する水の様子を 描き分けています。

しりあがりサンの作品では滝の上にライドがあり、大迫力のアトラクションに!
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左:しりあがり寿 「諸国瀧廻り アトラクション」(通期)©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

第3章 ちょっと可笑しな北斎サンにしりあがりサン
北斎は「冨嶽三十六景」を描いてのち、「富嶽百景」で更に富士山をユーモアたっぷりに描くなど、幅広い創作活動をしました。
この章では、北斎の作品をしりあがりサンの着想で現代風にアレンジした作品が紹介されています。ともに多彩な2人の作品が、浮世絵の枠を飛び出して、マンガやアパレルや映像など、さまざまな分野に広がっていきます。

北斎は、江戸の最先端を行くイラストレー ターや、デザイナーとして の一面もありました。「椿説弓張月」といった読本に 描き込まれた人物や物語の場面は、現代マンガの 1ページを読むような迫力や面白さがあります。

下は「椿説弓張月」続編の 1 場面。封印された石櫃を暴いたところ、爆音とともに櫃が砕けて飛び散り、中から妖術師が出現!
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葛飾北斎『椿説弓張月』続編 巻三 「石櫃を破て曚雲出現す」(通期)

下はしりあがりサンが「椿説弓張月」を現代マンガ風にアレンジした作品。コマ割りしてセリフを入れたら、もう現代のマンガそのもの!
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しりあがり寿「いきなりビーム」©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

北斎富士がまとめて見られる貴重な絵も。こんなにいろいろ富士山を描き分けているんだ~と楽しめました。
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しりあがり寿 「冨士だけほぼ三十六景」©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

今の世相を反映した、本当にあるある、という感じの絵。北斎漫画の人物の絵などを参考に描かれています。
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しりあがり寿「リモート九景あるある」©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵

3階ホワイエの「北斎をまとう」では、北斎作品をしりあがりサンのセンスで現代のアパレルにアレンジした展示が並んでいます。コロナ禍をテーマにした、しりあがり流のコレクションなども展示。
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北斎の絵をモティーフにした服やマスクは、粋で可愛く、時代を超えて着られそうなデザインですね。

北斎をモティーフにした楽しい映像展示もあり、写真撮影可能です(動画、フラッシュ、三脚(一脚)使用は不可)
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こうした展示を見ると北斎が現代に生きていたら、本当にクリエーターとしてさまざまな分野で活躍していたのだろうなという気がします。

ワークショップ「北斎サンしりあがりサン○○サン」フキダシを貼ろうも開催中。皆さんも展覧会出品作品に登場する人物の発言を考えてみませんか?フキダシ付箋が用意されているので、思いついた発言をぜひ書いて貼ってみましょう。
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会場内の「しりあがり寿、作家ごあいさつ」の中に「皆さんもぜひ北斎サンのキモチで「私だったらこうする!」 と一緒に楽しんでください。」とあるのですが、北斎の絵ってこんなに面白かったんだと改めて実感できる展覧会。
分野や時代を超えて広がるしりあがりサン北斎サンの世界をぜひ会場で楽しんでください!

展覧会概要
展覧会「しりあがりサン北斎サン ─クスッと笑えるSHOW TIME!─」
会期:2021年4月20日(火)〜7月10日(土) 一部展示替えを実施予定 <4/25~5/31臨時休館>
[前期 4月20日(火)~6月20日(日) / 後期 6月22日(火)~7月10日(土)]
会場:すみだ北斎美術館
住所:東京都墨田区亀沢2-7-2
休館日:月曜日(5月3日(月・祝)は開館)、5月6日(木)
開館時間:9:30〜17:30(入館は17:00まで)
観覧料:一般 1,000円、高校生・大学生 700円、65歳以上 700円、中学生 300円、障がい者 300円、小学生以下 無料
※当面のあいだ、団体受付はなし
※上記料金で会期中観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)も観覧可
※開館時間・展覧会開催などは変更となる場合あり(来館時には、美術館公式ホームページにて最新情報を確認のこと)
展覧会公式サイト

会場内の写真は主催者の許可を得て撮影