いつもさまざまな切り口で北斎の魅力を伝えてくれるすみだ北斎美術館。
2019 年は北斎没後170年にあたります。この節目の年に、すみだ北斎美術館では、9月10日(火)から11月4日(月・振替休日)まで「茂木本家美術館の北斎名品展」が開催されています。
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茂木本家美術館は、キッコーマン創業家の1つである茂木本家十二代当主茂木七左衛門氏が収集した美術品を展示する館として、2006年に千葉県野田市に開館しました。
本展では、茂木本家美術館の浮世絵や近現代の絵画・彫刻・工芸など多岐にわたるコレクションの中から、葛飾北斎や門人たちの作品、藪内佐斗司氏による北斎の彫刻など、前後期あわせて116点の北斎関連作品が展示されます。

展示構成は次のとおり。※作品はすべて茂木本家美術館蔵
1章 富士を旅する―冨嶽三十六景―
2章瀧をめぐる―諸国瀧廻り―
3章奇しき橋をのぞむ―諸国名橋奇覧―
4章北斎さまざま
5章門人へのまなざし
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1章  富士を旅する―冨嶽三十六景―
この章では、「Ⅰ 斬新な構図・工夫された構図」、「Ⅱ厳かな自然と時」、「Ⅲ江戸のシンボル・旅情の演出」という切り口から「冨嶽三十六景」の魅力が紹介されています。
幾何学的な構図で魅せる多様な富士と、描き込まれた江戸の風俗。北斎が 70 歳代で発表した「冨嶽三十六景」は、様々な要因で見え方の異なる富士を描いた人気のシリーズです。

なかでも「凱風快晴」は「神奈川 沖浪裏」「山下白雨」ともには「三役」と呼ばれ、世界的に高い人気を誇っています。

前期で必見なのは、「冨嶽三十六景凱風快晴」“赤富士”と“青富士”の競演!
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左:葛飾北斎「冨嶽三十六景凱風快晴」(前期)
右:「冨嶽三十六景凱風快晴(藍摺版)」(前期) 

茂木本家美術館は「凱風快晴」の藍摺版も所蔵しています。通称「青富士」と呼ばれるこの版は、現存する数が少なく、世界でも6つしかないとても珍しいものです。
本展では通称“赤富士”と呼ばれる「冨嶽三十六景凱風快晴」と「青富士」が並べて展示され、見比べることができます。
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青富士は、雪を頂く山頂を淡い藍色で縁取り、その内側を濃い藍色のぼかし摺りで表しています。「赤富士」の華やかさに対して、「青富士」の透き通るような青と、静かなたたずまいも魅力的。
別摺がつくられるほどに人気を博した「冨嶽三十六景 凱風快晴」の魅力を、ぜひ会場でご覧ください。
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撮影可のフォトスポットもあります。

北斎は、富士の三角形を基準にモチーフに三角形の相似形を取り入れたり、 円や孤などを組み合わせたりして、さまざまな工夫をしています。北斎の構図上の工夫にも着目してみてください。
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葛飾北斎 「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」(前期)

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葛飾北斎 「冨嶽三十六景 尾州不二見原」(前期)

また、場所や季節、天気によって自然の中の移ろいの中で変わる富士の美しさを描き分けています。
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葛飾北斎 「冨嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二」(前期)

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葛飾北斎 「冨嶽三十六景 礫川雪ノ旦」(前期)

また、北斎の絵は、江戸時代の人々の日常生活や旅の風俗が多く描き込まれています。富士をめぐる江戸の人々の生活、旅の様子もお楽しみください。
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葛飾北斎 「 冨嶽三十六景 諸人登山」(前期)

後期には、「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」、「山下白雨」などが出展予定です。お楽しみに!

2章  瀧をめぐる―諸国瀧廻り―
日本各地のさまざまな滝を描いたシリーズ 「諸国瀧廻り」 。滝とひと口に言っても、 豪快に流れ落ちる大瀑布から岩肌を伝わる石清水のような滝もあるし、 周りの風景によっても表情が変わります。北斎のダイナミックな筆力で描き出された、滝の表情をご覧ください。
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葛飾北斎「下野黒髪山きりふりの滝」(前期)

3章  奇しき橋をのぞむ―諸国名橋奇覧―
「諸国名橋奇覧」とは、日本各地のさまざまな構造の橋をめぐる珍しい眺めという意味。本シリーズは、 「冨嶽三十六景」の後に出版され、 全11 図が確認されています。名橋といっても、立地がわからない橋や、北斎がいた当時は失われてしまった橋なども含まれていて、北斎がインスピレーションを受けた橋を中心に珍しい眺めを紹介したシリーズといえそうです。
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葛飾北斎「摂州天満橋」(前期) 

4章  北斎さまざま
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茂木本家美術館は、長大判という縦長の構図が見応えのある「詩歌写真鏡」シリーズや、江戸から京都に至る木曽街道を 1 図にまとめた「木曽路名所一覧」、北斎の代名詞ともなっている「北斎漫画」全冊、108 図にのぼる富士の絵をまとめた「富嶽百景」など、さまざまな錦絵・摺物・版本を所蔵しています。この章では、茂木本家美術館の多岐にわたる北斎関連コレクションが紹介されています。
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葛飾北斎「詩歌写真鏡 春道のつらき」(前期)

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葛飾北斎「江都両国橋夕涼花火之図」(前期)

彫刻家の籔内佐斗司氏による北斎像も展示。
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籔内佐斗司「画狂老人卍(北斎)」(通期)

5章  門人へのまなざし
この章では、魚屋北溪、洋風風景画を得意とした昇亭北寿や柳々居辰斎といった門人たちによる珍しい錦絵や摺物が展示されています。
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柳々居辰斎「六郷渡」(前期)

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魚屋北溪「蘭陵王」(前期)

本展のオリジナル図録も販売中です。持ち運びに便利なハンディサイズで、茂木本家美術館所蔵の北斎名品の数々の図版や解説に加え、「青富士」に関する詳しい解説付きの充実の内容。 同館所蔵の北斎作品を解説する書籍は、本図録が初となります。『茂木本家美術館の北斎名品展』図録 2,300円(税込)は、すみだ北斎美術館ミュージアムショップのみで販売しています。

4階のAURORA(常設展)も見どころいっぱいなので、お見逃しなく。
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北斎没後170年記念 茂木本家美術館の北斎名品展  企画展公式サイト
◎会期2019年9月10日(火)~11月4日(月・振替休日) ◎前期 9月10日(火)~10月6日(日)
◎後期  10月8日(火)~11月4日(月・振替休日)
※前後期で一部展示替えあり
◎休館日
9月17日(火)、24日(火)、30日(月)、
10月7日(月)、15日(火)、21日(月)、28日(月)
◎開館時間9:30~17:30(入館は17:00まで)
◎主催:墨田区・すみだ北斎美術館
◎企画協力:茂木本家美術館
◎観覧料※AURORA(常設展)観覧料含む
一般:1,200円
高校生・大学生:900円
65歳以上:900円
中学生:400円
障がい者:400円
※団体は有料のお客様20名以上。
※いずれも他割引との併用はできません。

今回、さまざまな割引サービスが用意されています。ぜひご活用ください。
★SPECIAL1【茂木さん割引】
本展にちなみ、 お名前に「茂木」のつく方は、特別割引でご覧いただけます。 お名前のわかる身分証明書をご提示ください。
※対象:お名前に「茂木」がつく方(ご本人様のみ)。
★SPECIAL2【むらさき割引】
茂木本家美術館は、キッコーマン創業家の 1 つである茂木本家十二代当主茂木七左衞門氏のコレクションを展示する美術館。キッコーマンといえばお醤油ですが、 お醤油の別称として「むらさき」が使われている事から、今回特別に、“紫の品物”を身に着けて当館にお越しいただいた方は、特別割引でお楽しみいただけます。
※対象:受付にてチケットご購入時に、 紫色のアイテムを身に着けている方(ご本人様のみ)。
★SPECIAL3【千葉県民割引】
茂木本家美術館は所在地が千葉県にあることから、 千葉県民の方は、特別割引でご観覧いただけます。 受付にてチケットご購入時に、 お住まいのわかる身分証明書をご提示ください。(ご本人様のみ)。
★SPECIAL4【建築を学んでいる学生割引】
「茂木本家美術館」はその建築も目を惹く美術館です。今回は特別に、建築を勉強されている方は、特別割引でご観覧いただけます。 受付にてチケットご購入時に、 学生証をご提示ください。 (ご本人様のみ)。
【リピーター割引】
本展の観覧券半券を受付でご提示いただくと、20%OFFでご観覧いただけます。作品保護のため、また、 より多くの作品をご紹介するため、前期と後期で作品の展示替えを行います。本展の前期・後期のみどころの作品をぜひ制覇してください。
【メルマガ割引】
メールマガジン本文の画面、 もしくは印刷したものを受付にてチケットご購入時にご提示の方は、20%OFFでご観覧いただけます。メルマガは毎月1日配信中!学芸員による企画展の見どころ解説や、図書室のオススメ本、ミュージアムショップの新アイテム、イベント予定など、旬な情報を集めた内容です。
【近隣施設半券割引】
◆すみだトリフォニーホール主催・共催の対象公演の半券提示
⇒すみだ北斎美術館の常設展または企画展について団体割引料金でご覧いただけます。
◆ぐるっとパス2019のご利用
⇒すみだ北斎美術館の常設展について無料、企画展について団体割引料金でご覧いただけます。

講演会など関連イベントも開催されます。詳細はこちら


※会場内の写真は美術館の許可を得て撮影したものです。