すみだ北斎美術館で開催中の「北斎のなりわい大図鑑」に行ってきました。
北斎のなりわい大図鑑_チラシ-1
すみだ北斎美術館は、尽きることのない北斎の魅力をさまざまな切り口で紹介する美術館。
本展では、北斎一門による江戸時代の生業(なりわい) を描いた作品が展示されています。
生業とは、生活をするための仕事。江戸時代には、現在ではなじみのなくなってしまった仕事がある一方、現代の商売のルーツになる仕事も存在します。本展では、働く人々が描かれた作品が紹介されています。
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展示の構成に沿って見どころをご紹介します。   ※会場内の写真は、美術館の許可を得て撮影したものです。

~1 章 ものを売る生業~   
本章では、様々な販売業に携わる人たちがテーマとなっています。現在と異なり、江戸時代には小売り業者が市中を売ってまわる棒手振りと呼ばれる人たちが活躍し、流通を支えていました。 現在とは異なる流通の方法や、今も昔も変わらない売買をめぐっての人々の交流にも注目。


 葛飾北斎   「不動詣」
不動明王にお参りする人たちの中で、植木売りが商売しています。
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曲亭馬琴著 葛飾北斎画 『三七全伝南柯夢』第二巻笠松平三奈良に膏薬を売る 
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葛飾北斎『絵本隅田川両岸一覧』築地の凧 佃住吉地方
中央に正月の風物「綿ぼうし」を売る人がいます。
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<本展最大の見どころ!新発見「蛤売り図」>
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これまで知られていなかった北斎の肉筆画「蛤売り図」がすみだ北斎美術館のコレクションに加わり、本展で初公開されています。この絵は、表具を修復していますが、修復前
の表具の題簽(だいせん) には「蜆売り」との記載があり、これまで蜆売りと思われてきました。絵の中の貝殻は蛤を砕いて作る白い胡粉で描かれ、近くで見ると立体的なのがわかります。絵の描写から北斎は「蛤売り」として描いたと推測されます。
絵の上には蜀山人の賛があり、これは後にかかれたものです。


~2 章 自然の恵みをいただく生業~
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この章では、漁師や林業に従事する人など自然を相手とする生業が紹介されています。

葛飾北斎  「冨嶽三十六景 東海道江尻田子の浦略図」 
富士に目が行ってしまいますが、手前には漁をする人、遠景には塩田で作業をする人が描かれています。IMG_20190422_155048   


 葛飾北斎  「百人一首うはかゑとき 源宗于朝臣」
焚火の周りで猟師と思われる男たちが暖をとっています。煙の表現にも注目。
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~3 章 人を楽しませる生業~
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ここでは、歌舞伎役者や大道芸人など江戸のエンターテイナーたちが登場します。テレビもネットもない時代、こうした芸人たちは娯楽として大切な存在でした。現代に伝わる芸もあり、北斎の描いた芸人たちの姿、当時の娯楽を楽しむ人たちの様子が楽しめます。
 
葛飾北斎「覗機関」
大道芸の一種で、箱の下にあるレンズ をのぞき、ひもを操作して次々に変わる絵を見ることができます。IMG_20190422_155254


葛飾北斎 『北斎漫画』十編香具師 
さまざまな芸をする大道芸人が描かれています。
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~4章 ものを運ぶ生業~   
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本章では、輸送業に携わる人々を描いた作品が展示されています。江戸時代は人が自ら担いだり、馬など動物を使ったり、機械に頼らない運搬が基本でした。ここでは人力や、動物を使ってものを運ぶ人々の姿をみてとることができます。 

葛飾北斎「五十三次江都の往かい三島」
手紙などの書類を運ぶ飛脚がいます。
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葛飾北斎 「百人一首宇波か縁説 藤原道信朝臣」
人を乗せて走る駕籠かき。大変そうですね。
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葛飾北斎「冨嶽三十六景 東海道金谷ノ不二」 
橋のない大河で、流れに負けず、人を肩や台に乗せて川を渡す川越人足を描いています。 
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~5 章 ものを作る生業~ 
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本章では、桶屋や絵師など、匠の姿がとりあげられています。北斎の時代には物作りは手作業でした。また、絵師なども当時は職人としての位置づけられていました。北斎の描く江戸の職人が楽しめます。
 
左: 葛飾北斎「五十三次江都の在かい大津」
桶作りの職人が、桶の中から姿を見せる富士山を背景に、板を削っている姿が描かれています。よく見ると桶が転がらないよう、ストッパーをかけているのがわかります。IMG_20190422_162504
右: 葛飾北斎「 百人一言字波かゑとき春道列樹 」右側を川が流れ、その横で木材を切り出す職人が作業をしています。


葛飾北斎「五十三次江都の往かい 大津」 後ろの屏風には大津絵が飾られています。お土産としても人気だった大津絵を制作中です。
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~6章 生業いろいろ~ 
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本章では、これまでの分類にない様々な生業の紹介や、色々な種類の生業がまとめて描かれている作品が展示されています。

 
葛飾北斎  『画本早引』二編浦人 漆師 靭猿 裏打 瓜畑 牛飼  確眼切 鵜飼
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葛飾北斎  『北斎漫画』初編
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いったいどんな仕事?と思うものもありますが、壁には絵に出てくる仕事の解説もあります。
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今まで、見たことがある絵でも、改めて見ると、「ここに働く人が描かれていたんだ」と新たな発見もありました。江戸時代の生き生きと働く人の様子を見ているとこちらまで元気になれそう。
こんな職業もあったんだ、と楽しめるとともに、北斎のまなざしを通して、当時の生活の知恵や暮らしぶり、働く人たちの様子がわかる楽しめる企画です。


本展の主要作品およびその解説を収録した「北斎のなりわい大図鑑」展リーフレットがすみだ北斎美術館のミュージアムショップのみ限定販売です。(300 円・税込)。
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リーフレット表紙

また、4階企画展示室は現在、期間限定で「常設展プラス 隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎 漫画」を展示中です。『北斎漫画』など貴重書の展示や、「隅田川両岸景色図 巻(複製画)」の絵巻を、全長7mに拡げた状態で見ることができます ※6月9日(日)まで
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関連イベントなどもあります。 詳細は、ホームページでご確認ください。

 
北斎のなりわい大図鑑
○会期:2019 年 4 月 23 日(火)~6 月 9 日(日)
◎前期:4 月 23 日(火)~5 月 19 日(日)      ◎後期:5 月 21 日(火)~6 月 9 日(日)
※前後期で一部展示替えを実施
※休館日:毎週月曜日 ※5/7(火)、5/13(月) 、5/20(月)、5/27(月)、6/3(月)休館 
○開館時間:9:30-17:30(入館は 17:00 まで)
○会場:墨田区・すみだ北斎美術館  東京都墨田区亀沢 2-7-2
○観覧料:  一般 1,000 円<800 円>、 高校生・大学生 700 円<560 円> 中学生 300 円<240 円>、 65 歳以上 700 円<560 円> 障がい者 300 円<240 円> ※< >は団体料金 ※団体は有料のお客様 20 名以上。
※小学生以下は無料。
※中学生・高校生・大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳ま たは学生証をご提示ください。 ※65 歳以上の方は年齢を証明できるものをご提示ください。
※身体障がい者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などをお持ちの方及び その付添の 1 名まで障がい者料金でご覧いただけます。(入館の際は、身体障がい者手帳などの提示をお願いし ます) 
◎本展のチケットは、会期中観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)をはじめ全ての展示をご覧になれます。