[山種美術館 広尾開館10周年記念特別展]生誕130年記念 奥村土牛が東京・広尾の山種美術館で開催されています。
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奥村土牛(1889-1990)は、16歳で梶田半古塾に入門し、院展を活動の中心とし、横山大観、小林古径、速水御舟などから多くを学びながら、試行錯誤を重ねて独自の芸術世界を築き上げます。38歳で院展初入選と遅咲きでありながらも、40代半ばから名声を高め、101歳で天寿をまっとうする直前まで絵筆を持ち続けました。
今年は生誕130年にあたり、この展覧会はそれを記念して開催されたのもので、全て奥村土牛作、山種美術館蔵の作品で構成されています。

山種美術館の創立者・山﨑種二氏は、画家と直接関わり合うなかで作品を蒐集しました。特に土牛とは親しく、まだ無名だった時期から約半世紀にわたり交流を続け、山種美術館は土牛作品135点を所蔵し、質・量ともに最高レベルの土牛コレクションで知られています。

お餅のお礼に土牛が種二に贈った絵付きの書簡。二人の親交の様子がうかがえます。
奥村土牛から山﨑種二宛書簡(牛) 20 世紀(昭和時代)
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※会場内の写真は美術館の特別の許可を得て撮影したものです。

展覧会は、初期から晩年にいたる作品を通して、土牛のあゆみがたどれるような構成になっています。

第1章では、画家としての礎を築いた、大正期から昭和20年代に至る作品を展示。

院展の同人に推挙される契機となった作品
枇杷と少女 1930(昭和 5)年
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動物を描いた作品も多数展示されています。
兎を描いた作品がいくつかあります。どれもかわいい!
兎 左:1938(昭和 13)年  右:1947(昭和 22)年頃
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アンゴラ兎を描いた作品。 柔らかな毛並みのふわふわ感がすごい!品があり、とても可愛らしい兎です(^^)
兎 1936(昭和 11)年
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土牛は長野の善光寺に、インドから牛が贈られたと聞き見にでかけ、一週間かけて写生しました。出産後の母牛に落ち着きと気品を感じたといいます。
聖牛 1953(昭和 28)年
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セザンヌの影響を受けたといわれる作品。色面を幾何学的に構成して風景を表現しています。
雪の山 1946(昭和 21)年
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第2章は 旺盛に制作に取り組み、数多くの代表作を生み出した60歳代から70歳代にかけての作品が紹介されています。

土牛の傑作の一つ。船上で何十枚も写生して、下絵は作らずに描いたそうです。透明感と深みのある色調はすばらしいの一言。渦の音が聞こえてきそうなほどの迫力があります。遠くの島影には金泥が下地として用いられています。
鳴門 1959(昭和 34)年
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人物画もあります。
左:舞妓 1954(昭和 29)年 以前から舞妓を描きたかった土牛。幾度も京都を訪れ完成までに約2年間かけた作品
右:踊り子 1956(昭和 31)年。モデルはバレリーナの谷桃子さん
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和歌山県の那智の滝を描いたもの。土牛は京都から7時間かけて滝を訪れ、毎日写生したそうです。滝はその上下で水の質感が描き分けられています。
那智 1958(昭和 33)年
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 いろんな面を積み重ねて城壁の形態や量感を表した作品。姫路城の天守閣を下から見上げた大胆な構図が印象的。
城 1955(昭和 30)年
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姫路城のいろは順に名付けられた「は」の門がモデル。門の外から内、さらに壁の中の鉄砲穴の先へと連なる、入れ子みたいな構図がおもしろい作品
門 1967(昭和 42)年
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京都大徳寺の一休宗純の庵を描いたもの。障子、柱、壁、畳、さらに窓の外の景色が、色を抑えた面と直線で幾何学的に組み合わされています。
茶室 1963(昭和 38)年
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左:蓮 1961(昭和 36)年 日本美術院の重鎮が他界した際に、追悼の意を込めて制作した作品
右:浄心 1957(昭和 32)年  師である古径が亡くなった年に、心の奥にある仏様を描きたいと思って描いた作品だそうです。 
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土牛は生涯尽きることのない制作意欲を抱き続け100歳を超えても作品に取り組みました。 第3章では 晩年の作品を中心に展示されています。

朝市の女 1969(昭和 44)年 80歳で旅した能登を題材に描いた作品
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日本の風景を叙情豊かに描き出した作品もありました。
左:大和路 1970(昭和 45)年
右:輪島の夕照 1974(昭和 49)年 
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吉野の桜と背景にそびえる山々を描いた作品ですが、桜の木は右下に1本のみ。背景に緑や青の山と、雲が流れ、桃源郷のような柔らかく優しい雰囲気の作品です。この作品のみ写真撮影OKです。
吉野 1977(昭和 52)年
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山なみ 1987(昭和 62)年 白寿の記念に今までやったことのない新しい試みとして取り組んだ作品だそうです。
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醍醐 1972(昭和 47)年
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数々の名作の中でも、傑作とされるのが《醍醐》です。土塀を背に、緑色を帯びたどっしりとした幹。満開の桜が咲き誇る姿は艶やかで、匂いまで漂ってくるようです。
83歳の作で、土牛は師の古径の七回忌法要に訪れた帰りに、この京都・醍醐寺三宝院のしだれ桜に出会います。初めて見てスケッチをしてから、完成までに約10年を要したそうです。胡粉(ごふん)などの顔料を何度も塗り重ねて微妙な色彩を生みだしています。

そして、山種美術館ならではのお楽しみ♪Cafe椿のオリジナル和菓子は青山の菓匠「菊家」謹製。
「奥村土牛」展では、出品作5点をモティーフにした5つの和菓子がいただけます。色とりどりで美しい和菓子は、お菓子もアートと思えるほどの美しさ。どれも美味ですが、今回のお気に入りは 雲海に屹立する青富士をイメージした「富嶽」。シナモンの香りがアクセントになってとてもおいしかったです。

和菓子
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ミュージアムショップではオリジナルグッズを販売中。鑑賞の記念にぜひ!
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今回は京都の人気店、祇園辻利の宇治茶と抹茶あられセットが特別に販売中です。おみやげにも喜ばれそう。
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土牛という雅号は、中国・唐の詩句「土牛石田を耕す」に由来するそうです。牛のごとくゆっくりと、しかし確実に歩んだ土牛。精進を重ね、100歳を超えても絵筆をとり続けました。最高峰の土牛コレクションを見られるこの機会に、ぜひ会場でご覧ください。


【開催概要】公式ホームページ
[山種美術館 広尾開館10周年記念特別展]生誕130年記念 奥村土牛
会期: 開催中~3月31日(日)
会場: 山種美術館
主催: 山種美術館、朝日新聞社
開館時間: 午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日
入館料: 一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
[お得な割引サービス]
きもの割引:会期中、きものでご来館のお客様は、団体割引料金となります。
リピーター割引:本展使用済み入場券(有料)のご提出で会期中の入館料が団体割引料金となります(1枚につき1名様1回限り有効)。
※リピーター割引は、同一の展覧会を2回目以降にご覧いただく場合に有効。
 他の展覧会の入場券はご使用いただけません。
※ 複数の割引の併用はできません。