東京・すみだ北斎美術館にて、企画展「大江戸グルメと北斎」が開催中です。
江戸時代、農業や漁業が盛んになり、経済が発展し、成熟した社会の到来は人々に食を楽しむという余裕をもたらしました。また、さまざまな技法や工夫をこらした料理書や高級料理屋が登場し、食は文化として磨かれていきました。
北斎は、食の生産の現場や食材、ファストフードやスイーツ、高級料理からグルメを楽しむ人々まで、当時の食文化の様子を描いています。本展では、そうした北斎の浮世絵のほか、江戸時代の料理のレプリカや当時のレシピなども交えて展示し、江戸時代に生きた人々の食の営みを多角的に味わうことができる構成になっています。
展覧会は、全4章で構成。
◆1章 江戸グルメ繁栄の背景
江戸時代後期、庶民も含めて食文化が豊かに育まれていきます。その背景には、農業や漁業など食を支える産業の発展がありました。1章では、江戸グルメ繁栄の背景にある、食の生産にまつわる江戸の人々の営みが紹介されています。
◆農業
葛飾北斎百人一首うはかゑとき 天智天皇天保6年(1835)頃
◆漁業
葛飾北斎百人一首乳母か絵と起 参議篁 天保6年(1835)頃
葛飾北斎千絵の海 総州利根川 天保年間(1830-44)初期頃
◆調味料の生産
◆2章 江戸の食材
2章では、北斎一門が描いた、魚や野菜といった食材の浮世絵を展示。展覧会のメイン作品の1つである、リアルな描写の葛飾北斎「鮟鱇図」など、江戸の様々な食材が紹介されています。
◆魚
葛飾北斎 鮟鱇図 文化年間(1804-18)中期頃
魚屋北溪 魚菜図 天保年間(1830-44)初期頃
◆野菜・果物
魚屋北溪 つれつれ艸土おほね 文政年間(1818-30)後期~天保年間(1830-44)初期
鎌倉時代の随筆「徒然草」の内容に基づいた狂歌にちなみ、鎧と土おほね、すなわち大根が描かれています。
二代葛飾戴斗 『万職図考』五編 きさわし柿 嘉永3年(1850)
◆食材の流通
葛飾北斎五十三次江都の往かい 日本橋 文化年間(1804-18)初中期頃
斎藤月岑ほか著 長谷川雪旦画『江戸名所図会』一 日本橋魚市 天保5年(1834)
◆3章 江戸の料理帖
江戸後期には、様々な豆腐料理を紹介する『豆腐百珍』など、珍しい料理を紹介するレシピ本が大流行します。3章では、調理をする人が描かれた作品や、江戸の料理本とそれにもとづく江戸料理の再現レプリカの展示から、当時の調理や料理の様子を知ることができきます。
◆料理人たち
葛飾北斎『北斎漫画』九編 士卒英気養図 文政2年(1819)
葛飾北斎『絵本庭訓往来』初編 文政11年(1828)~嘉永元年(1848)頃
◆レシピ本
当時の料理帖再現したレプリカが併せて展示されています。
小田原屋主人著 関文川画『四季漬物塩嘉言』天保7年(1836)
◆4章 江戸の人気料理
寿司や蕎麦といった和食や、あこがれの高級料理店、せっかちな江戸っ子にぴったりのファストフードも誕生した江戸時代。4章では、そんな当時の人気グルメが紹介されています。
◆江戸のいちおしグルメ
歌川国芳 縞揃女弁慶 安宅の松 天保15年(1844)
女性の手にする皿には海老の握り寿司、卵の巻き寿司が盛られています。この寿司は江戸で一番贅沢な寿司とも言われた 松ケ鮨のものだそうです
月岡芳年風俗三十二相 むまさう 明治21年(1888)
天ぷらを食べる女性、本当においしそうですね。
三代歌川豊国やつしけんじ 雨夜のしな定 安政2年(1855)
左端の女性の前には大皿の料理と箸が乗った円卓が描かれています。これは中国の料理の形式を和様化した卓袱料理と呼ばれる形式のもの。
三代歌川豊国三長寿人 安政2年(1855)
盆の上にはお頭付きの鯛やさしみが乗っています。鯛は当時から祝いの席には欠かせない高級魚でした。
東京家政学院生活文化博物館 鯛の香物鮓 平成23年(2011)復元レプリカ
おいしそうですね~。このようなレプリカが会場にたくさん並んでいます。
◆季節のグルメ
三代歌川豊国十二月之内 水無月 土用干 安政元年(1854)
勝川春亭江戸大かばやき 文化年間(1804-18)初期
葛飾北斎『北斎漫画』十二編 鰻登り 天保5年(1834)
チラシに使われてる作品。勢いよく上昇する何とも美味しそうなうなぎの様子が描かれています。
◆江戸のスイーツ
葛飾北斎東海道 彩色摺 五拾三次 につさか文化年間(1804-18)初中期
につさか名物のわらび餅の看板が見えます。
スイーツのサンプルも展示されています。
◆江戸の高級料亭グルメ巡り
歌川広重、三代歌川豊国 東都高名会席尽 橋本 牛若丸 嘉永5年(1852)
歌川広重と三代目歌川豊国が合作した高級料亭を描いたシリーズ「東都高名会席尽」 のうちのひとつです。ここでは柳島の料亭橋本が取り上げられています。 橋本は鯉こくなどの料理で有名でした。
歌川広重、三代歌川豊国 東都高名会席尽 青柳 小野道風 嘉永5年(1852)
歌川広重、三代歌川豊国 東都高名会席尽 二葉屋 葵の前 嘉永6年(1853)
実際に大江戸グルメを食べてみたいな~という方は、当時の料理レシピをわかりやすくまとめた「大江戸グルメと北斎」というリーフレットもミュージアムショップで販売中(300円)。ぜひ家で再現してみてください!
さらに特別企画として、江戸グルメを気軽に楽しむコラボCaféが開催。「大江戸グルメと北斎」で紹介した江戸の再現料理を味わうことができるコラボレーションカフェ企画が、すみだ北斎美術館近隣のカフェ6店舗にて実施されています。「ORI TOKYO」では、江戸のレシピを基に専門家が監修したランチプレートを用意。
さらに鰻屋さん千代福の鰻登り弁当が期間限定で発売される予定です。詳細はHPでご確認ください。
実際に江戸グルメを味わうことができるチャンス。鑑賞後にいかがでしょうか。
コラボCaféの詳細はこちら
大江戸グルメの魅力を多角的に楽しめる本展。この機会にぜひご覧ください!
開催概要
○展覧会名:「大江戸グルメと北斎」 ホームページはこちら
○会期: 2018年11月20日(火)~2019年1月20日(日)
◎前期:11月20日(火)~12月16日(日)
◎後期:12月18日(火)~2019年1月20日(日)
※前後期で一部展示替えを実施
〇休館日:毎週月曜日
※年末年始 12月29日(土)~12月31日(月)2019年1月1日(火)休館
12月25日(火)、2019年1月15日(火)休館
12月24日(月)、2019年1月14日(月)開館
○会場:墨田区・すみだ北斎美術館
○観覧料:
一般1,000円<800円>、 高校生・大学生 700円<560円>
中学生300円<240円>、 65歳以上700円<560円>
障がい者300円<240円> ※< >は団体料金