近代日本画の大家、横山大観。明治から昭和の激動期を生き、人物画から風景画、巻物まで多くの名作を残した巨人でもある。生誕150年と没後60年を記念して、東京国立近代美術館で大規模な回顧展が開かれています。
大観は、明治期の画壇での評価は決して高くはなかったのですが、昭和になると「東の大観、西の栖鳳(せいほう)」ともいわれ、京都画壇の重鎮、竹内栖鳳(1864~1942年)とともに、画壇を代表する画家となります。
今回の展覧会の目玉作品となっているのが40・7メートルに及び、日本の著名な近代の画巻では最長とされる「生々流転」。大正時代の円熟味を増した50代半ばの作品。水滴が大河をつくり海に注ぎ、竜巻となって天に戻るまでの様子が描かれています。全巻をひと続きで見られるのは9年ぶりだそうです。自然や人間の営みを水の姿の移り変わりにたとえ、確かな水墨技法で光や空気を感じさせる深みのある作品。この作品が東京で初めて一般公開された日に関東大震災が起こりますが、建物は倒壊せず損傷を免れたエピソードが会場内で動画で紹介されています。
また、大観の昭和を代表する作品となったのが「或る日の太平洋」です。画面前面には勢いのある巨大な波が描かれ、稲妻が光り荒れ狂う波の中には龍の姿も。その背後には雪をかぶった晴れやかで神々しい富士山が堂々とそびえています。
戦時下の昭和15年には連作「海に因む十題・山に因む十題」を制作。展覧会に出品し、売上金を陸海軍に寄付したことは有名ですが、この作品はそうしたエピソードとは別に、大観の成熟の技が随所に見られる代表作といえる作品群です。
展示作品のすべてが横山大観の作ですが、多様な作風の作品で構成されているので、見飽きることはありません。また展示室1は、明治~大正~昭和と時代ごとに作品が展示されていて、大観の作風がどんな風に変わっていったのかがよくわかる構成となっています。
約100年ぶりに発見された「白衣観音」。
きらびやかで幻想的な大作「夜桜」「紅葉」など代表作がそろい、時代を超えて愛され続ける大観の芸術を神髄を見ることができる展覧会です。
「生誕150年 横山大観展」
開館時間 10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで
休館日 月曜日
観覧料 一般:1500円(1300円) 大学生:1100円(900円) 高校生:600円(400円) ※( )は20名以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方と その付添者(1名)無料
場所 東京国立近代美術館 東京都千代田区北の丸公園3-1
展覧会公式サイト