まず「ハイライト」。選りすぐりの名品が展示されています。

松林桂月 春宵花影図 1939 絹本墨画淡彩
太平洋戦争開戦前の1939年、ニューヨーク万博に出品された作品で、叙情的かつ写実的な花影は日米で絶賛されたそうです。水墨技法では特別の才能を見せた桂月は、この絵でも花びらにわずかに胡粉(ごふん)を刷いただけで、あとは墨の微妙な濃淡とぼかし技法によって描ききっています。近代日本画の夜桜を描いた作品のなかでも代表作のひとつ。
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「春宵花影」について桂月自身が語った言葉。

「私の画室は桜新町と称する処に在りて、町の両側は桜の並木で埋もれ、陽春四月の候に入ると、万朶の花影が爛満として咲き乱れ、両々交叉して一条の花の隧道をなして居る。夜に入って花下を逍遥すると、東坡の「花有清香月有陰」の詩句を想起し、春宵一刻真に千金の値あるを覚ゆるのである。


更に、王安石の詩に「春色悩人眠不得、月移花影上欄干」と云ふのがあるが、私も古人と同じく、月下の花影を見ては、恍惚として夢の世界にあるが如く、自ら詩意を催ほし、画意をそゝるのである。


一夜、朧ろ月夜の光景に打たれて、眼裏に深く印せるその花影の一端を追って、遂に此の図を試作したのであった。」

桂月が見た桜新町の花影が、どれほど美しかったか。「春宵花影」を見ていると、その光景が目に浮かぶようです。
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 安田靫彦 黄瀬川陣 1940/41 紙本彩色
源頼朝と源義経の20年ぶりの再会を描いた安田靫彦《黄瀬川陣》 
安田靫彦展ではポスターになっていた作品。今回は撮影もOKです。
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4室では、関東大震災後、急速に近代都市へと変貌を遂げていく東京を描いた版画を紹介
川瀬巴水 「東京十二題」より 駒形河岸 1919
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川瀬巴水 「東京十二題」より 大根がし 1920
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川瀬巴水 「東京十二題」より 雪に暮るる寺島村 1920
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伊東深水 夜の池之端 1921
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日本美術には、花や鳥、虫、動物などを視覚芸術に表す長い伝統があります。10室では「熊谷守一 生きるよろこび」展(12月1日―2018年3月21日)に合わせ、日本画、彫刻、版画などから、生き物をモチーフにした作品が展示。

西内利夫 梅花遊禽 1976
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菱田春草 雀に鴉 1910
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小林古径 双鳩 1937 
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小杉放菴(未醒) 青鸞 1938 紙本彩色 
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 秋野不矩 桃に小禽 1942 絹本彩色
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上村松篁 双鳩 1942 絹本彩色
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花鳥画を得意とした上村松篁の取り組みは独特でした。アトリエの庭に動物園も顔負けの鳥舎をつくり、飼育と写生に明け暮れました。松篁の信条は「鳥の生活を理解しなければ、鳥は描けない」だったといいます。

今年も桜の季節にあわせて「美術館の春まつり」を開催。川合玉堂《行く春》(重要文化財 3月20日ー5月27日展示)をはじめとした名作が展示される予定です。
公式サイト